91-95
91夜風
夜風が木々に当たり
枝葉が一斉になびく音がすると
何かに襲いかかられている気になる
間違いなく
夜は襲いかかってきている
不安や心細さに囚われる
じっとしていれば
いずれ朝日が昇り
明日が遅刻してやってくるが
それまでの間は
暇なので
ポップスを
イヤホンで聴いたりしている
92十字架
十字架が充満している
死者が足りてない
みんなが生きている
死んでいるようで
生きている
生きていれば
いずれ死ぬが
とりあえず
生きている
とりあえず
それでいい
ひとは生きている
元気なふりをしてまで
どうしてそんなに
元気なふりをしてまで
93桃と生姜
風は優しくない
優しいのはそこではない
気がしている
気がしてるだけだが
そこではない
あたるこころにやさしさがある
優しい気持ちは
優しい気分とは
全くの別物で
桃の味がするのが気分で
生姜の味がするのが気持ち
だったりする
94砂糖
砂糖の追憶
塩の現場
胡椒の未来
味見する猫舌
コーヒーはアイスだと
ブラックが好きで
ホットだと
ミルク入りが好きで
どちらにしても
砂糖は入れない
全く関係のない話をしている
ようにみえて
全く関係がない
95不思議
不思議な色彩の空に
不思議な図形の雲に
不思議な抽象性の太陽に
不自然にいるじぶんに
大地は平らだと
数学の先生が教える
丸いのは嘘で
本当は真っ平ら
というのも嘘で
突起物なのが
本当だ
不思議な突起物の大地に
不自然にいる自分の足が
ついたり
離れたり
浮かんだり
沈んだり
硬かったり
柔らかかったり
そんな
不思議な突起物に
自然と座る