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元騎士、元聖女と出会う  作者: エビス
序章 「元騎士、元聖女と出会う」
7/24

 静かな風が吹く草原の岩陰で、私は横になりながら空に浮かぶ星空を見つめる。


 身体も心も疲れている筈なのに眠れない。


 眠るのが怖い。


 眠ればきっとまた夢に出てくる。

 あのありとあらゆる"痛み"を与えられた牢獄の中の出来事が。

 

 時々思う。


 私はまだあの牢獄にいて今この瞬間、ここにいる私こそが夢なのではないか、と。


 ・・・分かっている。


 私はちゃんと助け出されてここにいる。

 現に手枷も足枷もつけられてないし、傷つけられた身体は、出来うる限り元に戻っている。


 ただどうしても、悪夢が拭えない。


「はぁ・・・」


 不安が身体にこびりつく。

 覚悟という名の後悔が私の身体を動かしているが、こんな自分に本当にやり遂げられるのだろうか?


『神秘』の力が戻ったとしても私は一度"邪神"の封印に失敗してる。


 そのせいで教皇を仕留められず、邪神の眷属である『邪龍(イビルドラゴン)』も逃して捕まったのだ。


 今日だってローゼン達が身を挺して私を守ってくれて、そしてたまたま旅の剣士が通り掛かったから生き残れただけだ。


 そんなローゼン達はもういない。

 私なんかを守って死んでしまった。


 父も私を逃がす為にバクラオンに残って行方不明だ。


「・・・」


 そんな中出会った旅の剣士。


 彼はグリスと名乗り、今は私がいる岩の上で見張りをしてくれている。


 身なりこそ貧相だが、身体も剣技も抜群に鍛え上げられていて、教団の戦闘員を一蹴する実力がある。


(一体、何者なのでしょうか・・・?)


 どうせ眠れないし、起きてても不安しかないから彼の事を考えてみる。


(私が捕まってる間に名を上げた冒険者でしょうか?)


 一番考えられるのはこれだ。

 ただ、それならやっぱり格好が貧相過ぎる気がする。


 浮浪者よりは幾分かマシだが、それでも名のある冒険者には見えない。


(うーん・・・)


 やっぱり分からない。


 分からないし、どうして私は彼に全てを伝えてしまったんだろう?


 "邪神"の事、教団の事、目的の事。

 考えれば幾らでも誤魔化せた筈なのに。


 どうして?何故?

 グリス、貴方は何者?



 私・・・は・・・



 チュンチュン。


 小鳥の囀りによって目を覚ます。

 いつの間にか眠っていたらしい。


 日が出てからまだかなり早い時間なのか、草原全体に薄く霧が掛かっている。


(悪夢、見ませんでしたね・・・)


 ぼんやりとした頭でそんな事を考えながら辺りを見回す。

 するとすぐ近くでは、グリスが火を起こして焚き火にあたっていた。


「あっ・・・」


「ん?ああ、起きたか。おはよう、ルキア殿」


「お、おはようございます、グリス様」


 互いに朝の挨拶を交わすとグリスは焚き火で水を温めて、干し葡萄やビスケットといった食べ物を取り出した。


「少し早いが朝食にしよう」


「はい」


 お湯を入れた容器を受けとると少し冷まして口をつける。


 紅茶などとは違い本当にただのお湯だ。

 だけどそれは確かに私の身体を温めてくれた。


「足の具合はどうだ?」


 食事をしながらグリスが私に尋ねる。

 私は捻った足首を触って確かめてから答えた。


「良いと思います。少なくとも歩くのに支障はありません」


「そうか、それは良かった。だが無理はしないでくれ」


「はい・・・あの、その、グリス様・・・」


 私はグリスに何者なのか聞こうとした。

 だけどそれよりも早くグリスが言った。


「ああ、そうだ。昨日の夜、見張りをしながら考えてたんだが・・・貴女の旅に俺もついていきたい」


「えっ」


「勿論、迷惑でなければなのだが・・・」


「め、迷惑だなんてそんな・・・!でも良いんですか・・・?私が嘘を言ってるかもしれないのに・・・」


 せめて『神秘術』の一つでも使えれば良いのだが、今の私ではそれさえ出来ない。


 私が『聖女』であった事を証明する手段はない。


 それでもグリスは軽く笑った。


「俺には貴女が嘘を言ってるようには見えなかった。全て事実なら放ってはおけない」


 そう言ってグリスは改めて名乗った。


「俺はグリス・アノール。アヴァンス王国の騎士団で働いていた、元『騎士』だ。今は騎士団は退団して旅をしている」

 

「元・・・『騎士』様・・・ですか」


 グリスが頷く。

 そんな彼に私も改めて名乗った。


「私はルキア・ローカスセインです。バクラオンの元『聖女』です」


 グリスが手を差し出す。

 私よりもゴツゴツとして大きなその手を握った。


「よろしく、ルキア殿」


「よろしくお願いします、グリス様」




 こうして、元『騎士』と元『聖女』は出会った。

ここまで読んでいただき本当にありがとうございます。


よければ『ブックマーク』と、広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけますと嬉しいです。


次は金曜日か、土日になるかも。

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