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元騎士、元聖女と出会う  作者: エビス
序章 「元騎士、元聖女と出会う」

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出会い

 母の葬儀も終わり落ちついた頃、俺は旅支度を整え一人で両親の墓を訪れていた。


「父さん、母さん。俺、騎士団を辞めてきた」


 持ってきた花を墓前へと添えながら俺は二人へ報告する。


「やりがいがない訳じゃない。むしろ、とても意味がある仕事だと思うよ。だけど、何て言うかな・・・机の上で書類と戦ったり、貴族様のご機嫌伺いをする人生よりは、(コレ)を振るってる方がお似合いだと思う」


 そう言う俺の左右の腰には、剣が鞘に納めて下げられている。


 右手側の剣が炎剣ルグニカ、左手側の剣が水剣パルシアスという。


 どちらも『ミミクリー・スコーピオン』を求める旅路の途中で狩った魔獣の素材を元にドワーフに作ってもらった魔剣であり、あの『黒い龍』の首を切り落とした俺の愛剣だ。


「王も団長も、俺の退団を引き止めはしなかったよ。ああ、悪い意味じゃないんだ、二人とも何だか妙に納得してて・・・団長なんかは『お前は、もっと大きな事を成すだろう』なんて言ってくれてさ・・・」


 本当に、王と団長には感謝している。

 こんな俺に目をかけてくれて。


 放浪者となる俺に何が出来るかは分からないが、出来る限りの恩は返したい所だ。


「・・・それじゃあ、行ってくる。次はいつになるか分からないけど、出来るだけ良い報告が出来るように頑張るよ」


 俺は二人の墓前にそう告げると背を向けて歩きだした。



 ◆◆◆


 

 それから俺はアヴァンス王国内を西へと進み、隣国のガザリ帝国へと足を踏み入れた。


 ガザリはアヴァンスの約2倍の国土を誇る、世界ではバクラオン聖国に次ぐ大国だ。


 さらにこの国の今代の皇帝は、大変有能な人物で、若くして帝位につくと、汚職まみれだった貴族政治の改革を断行、官民問わず有能な者を積極的に登用する政策が見事にはまり、急速に発展していた。


 その成長っぷりは、俺が今歩いている道を見ても明らかで、帝都からかなり離れた辺境にも関わらず、キチンとした道が整備されている。


 俺は感心しながらその道を更に西へと進む。そのままバクラオンを避けるように各国を回るつもりだった。


 何故、バクラオンを避けるかというと、あの国は最近国境の出入りが厳しくなっていて、簡単には通れなくなっている事が理由だった。


 国内で何かあったのかも知れないが、『聖女』だのを含めてバクラオンは色々と秘密の多い国家だ。


(まぁ、関わるつもりはないし、無理に国内に入る気もないから大丈夫だろう)


 この時の俺はそんな風に考えていた。


 だがこれが甘い考えだったのを思い知るのは直ぐの事だった。


「ん?」


 森の中に作られた道を進んでいる時、前方の道に何か倒れているのを見つけた。


 最初は倒木の類いかと思ったが、近づいてみるとそれは馬車のようで、周囲には数人の男女も一緒になって倒れている。


「っ・・・!オイっ!大丈夫か!?」


 俺は直ぐに彼らに駆け寄り助け起こしたが、殆どの人は既に絶命しており、かろうじて息のあった男も腹を貫かれて致命傷を受けていた。


 だが彼は助け起こされたと分かると、血に濡れた手で俺の肩を掴み、息も絶え絶えに言葉を発した。


「た、のむ・・・!まもってくれ・・・!われらのきぼうを・・・せい・・・」


「希望・・・?」


 聞き返したが、それに答えるよりも早く俺の肩を掴んでいた彼の手から力が抜けてズルりと垂れ下がっていく。


 その後何度か呼びかけてみたが彼の意識が戻る事はなかった。


(いったい何があった・・・?)


 俺は改めて状況を確認してみる。


 周囲の地面には抉れた痕跡がありここで戦闘があったのは明らかだ。


 ただ、倒れているどの遺体も一般的な帝国民の服装をしていて戦えるような人達には見えない。


 或いは、そう見えるように振る舞う必要があったのだろうか?


(例えば、大事な荷物を運んでいてバレたくなかったとか・・・)


 そう考えた俺は横転した馬車の方も調べてみる。


 内部は倒れた衝撃で散らばったのか、食糧や備品が散乱していて酷い有り様だ。


 取り敢えず、何か手がかりになりそうなものがないか調べてみたが、これといって不審な物はない。


 ただ散らばっている食糧や備品が、ガザリ帝国で手に入るものよりも、バクラオン聖国で手に入るものが多い気がした。


 とはいえたったそれだけでは、ただの行商人の集団かもしれないから、なんとも言えない。


 俺はモヤモヤしたものを抱えながら馬車から出る。



 その瞬間、森の方から声がした。



「クソ女が!暴れやがって!」


「あんまり手荒に扱わないでくれよぉ・・・せっかく見違える程元気なんだしぃ・・・出来るだけ活きのいい状態で連れ帰った方が長く楽しめ・・・ん?」


 森から姿を現した声の主は、返り血のついた、見慣れない黒い修道服に身を包んだ二人組の男だった。


 そして片方の男の手には、白髪の女性が首を締められながら引き摺られていた。

ここまで読んでいただき本当にありがとうございます。


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