フロル・イエティ戦①
「ブオォォー!!!」
イエティは、咆哮を上げると強靭な足で雪の上を駆け抜けて俺とバルドに迫ってくる。
その様子に迎え撃つしかないと判断した俺達は、それぞれ武器を構えてイエティへ攻撃する。
「食らえ!」
「『ショット』」
バルドの魔導銃から炎の弾丸が打ち出され、俺のルグニカから炎の飛刃が放たれる。
これで殺せるとは思わないが、当たればイエティの突進を止めるだけの威力はある筈だった。
だが奴は、その巨体からは考えられない程の敏捷性で飛んできた弾丸と刃を跳び跳ねてかわし、勢いそのまま突っ込んできた。
俺達の背丈以上に大きい、イエティの鋭い爪が襲いかかってくる。
(魔力の温存、なんて言ってる場合じゃないな・・・!)
俺はルグニカを持った手とは逆の手でパルシアスを引き抜き、イエティの爪を受け流す。
逸れたイエティの爪が雪の積もった地面を抉り取り、大量の雪が舞い上がった。
その雪が舞い散るよりも早く、イエティの側面に回り込んだバルドが魔導銃から弾丸を撃ち込む。
俺に気を取られていたイエティは、今度はその攻撃を避ける事が出来なかった。
バルドが撃った弾が奴の脇腹に命中し、当たった箇所から炎が燃え上がる。
「ゴオォ!!!」
イエティが炎に怯み、叫ぶ。
その隙に俺は、奴の身体にルグニカを振り下ろす。
赤い一閃がイエティの左肩から胴体まで刻まれ、爆炎がその身体を包み込んだ。
「やったか!?」
燃え上がるイエティを見てバルドが言う。
だが次の瞬間、奴を包んでいた炎が凍りつき一気に砕け、さらに砕けた氷の中からイエティが現れた。
脇腹と左肩には俺達がつけた銃創と切り傷が残っていたが奴はギロリと俺達を睨み、それから俺達の後方へ僅かに視線を向けるとバックステップで後退し、一度距離を取った。
それと入れ替わるように回り込んでいたバルドが俺の隣に戻ってくる。
俺は彼へと言った。
「すまない。仕留めきれなかった」
「いや、手傷は負わせたんだ。次で・・・」
バルドが言い掛けたその時、山頂の方から甲高い、悲鳴にも似た音が聞こえてきた。
「これは・・・」
「『歌』・・・?」
耳を揺さぶる酷く不快なその音だったが、同時にしっかりと旋律を刻み、歌っていた。
その歌を受けたイエティの身体が黒く光り、俺達がつけた傷口からボコボコと肉が盛り上がって、あっという間に元通りになってしまった。
「なっ・・・!?」
バルドがイエティの驚異的な再生力に驚く。
さらに間髪入れず今度は奴の全身が青白く輝き、その輝きが口元に収束していく。
そして、イエティが口を開けると圧縮された氷のブレスが放たれた。
「まずい!かわ・・・っ!」
俺とバルドはそのブレスを避けようとしたが、気づいてしまった。
いつの間にか俺達の立ち位置は洞窟の出口を背負うような形となっており、氷のブレスを避けると洞窟で待機しているルキア達に当たってしまう。
「クソっ!バルド頼む!」
俺は叫ぶとパルシアスとルグニカを構え、ブレスを防ぐ為に剣に魔力を込める。
二本の刀身がそれに応えるようにそれぞれ赤く、青く輝き、炎と水の防壁が発生する。
そして氷のブレスと激突した。
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