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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

同じ世界観

処分予定の神官は、隠し飼っていた狐に最後の六日間をささげる。

作者: カゼ ルビネ

私のそばにいてくれるのは、もうこの子しかいない。

けれど、私のそばにいたらこの子も危ない。

私は膝に乗って、丸まって寝ている白い狐を撫でる。

なぜ危ないのか、それは、私が一週間後に呪いによって化け物となり、人々に危害を与えるからだ。

人として死なせてくれることになった私は六日後に、殺される。

私はこの国にあまり多くはないが数のある神職に携わる人間、神官の一人だ。

神官は神殿の管理及びに信者の対応や接待などを行う。


ある日、この国の王族の赤ん坊に呪いがかかった。

敵対する国からの呪術師による呪いだった。

呪いを解く条件は真実の愛を誓い合う事。

赤ん坊にできるわけがない。

その呪いは解くことはできないが代わりに肩代わりすることがわかった。


そのことにより、王族に血が近く、比較的に身分の低い私が選ばれて呪いを移された。

これでやっと血以外になにもない私は教会に育ての恩を返せる。

化け物になる前の六日間、教会から監視付きで最期の休暇をもらった。

私はこの六日間をこの子、シロのために捧げよう。


シロはとても賢くて人懐こい。

出会ったのは1年前の休暇で、神殿近くの森を散歩していた時だった。

怪我をしていた。

かわいそうで、思わず助けてしまった。

治癒魔法を軽くかけて、流れている血を止め、空間操作で、シロの大きさを小さくして、教会の自分の住んでいる部屋に持ち込んだ。

そして、怪我が治ったら、森に返そうと思い、できるだけ距離をとっていた。

しかし、いざ返そうと、休みのたび、森に向かおうとするがなかなかタイミングが合わない。

森に向かおうとすると、小さくしたシロが脱走し、逃げ込んだ場所が偶然面白く、森に行く事と時間を忘れるほど楽しんでしまう。なぜか気がついたら、カフェに入り、美味しいご飯を食べていたり、観劇の席について面白い劇を見ていたりする。

これは完全に欲に負けた私が悪いことだ。

そのうち、シロは完全に私に懐いて、気がつけば、膝に乗って寝ていたり、じゃれついてくるようになった。

それでも、森に行こうとするたび、脱走はやめないが。


そんなシロを自分が死んだ後、どうなるのか考えるだけで、1日が消えた。

1日目で想像がついたことは、シロをそばに置かない。

そばにおいたら間違いなく化け物になった私の餌食になるだろう。

仮に、森に逃したとしてもシロの綺麗な毛並みから、毛皮にされてしまうかもしれない。

そうして思いついたことは、自分の髪の色とシロの毛色を入れ替えて仕舞えばいいということだ。


呪いにより今の私には首輪のように首を一周する黒い線が走っている。

そこから、更に髪の色が白くなったとしても呪いのせいだと思われて疑われないだろう。

私は自分の長く伸びた髪を見る。

明るい茶色のきつね色、シロと入れ替えるにはちょうどいい。

ただ監視の眼を掻い潜って、材料を集め、入れ替えなければいけないという厳しい条件がある。

幸い、監視は私の部屋に入ってくることは今のところない。



二日目、監視を連れて街に出かけた。

髪の色を入れ替える魔法に必要な材料を揃えるためだ。

監視は神殿の警備をする神殿警備隊から選ばれている。

交代制かと思ったら昨日と同じ人だ。

白い神殿警備隊の硬そうな雰囲気を醸し出す制服を着ていて、さらにその制服の上からもわかる筋肉隆々の方だ。

顔は、帽子を深く被っているせいでわからない。

しかし、雰囲気からして、自分よりは年上だろう。

一週間の間は化け物にならないようなので、街に出かけてもいいということになっている。

しかし、制服姿の護衛は街では目立つ、私服に着替えてくれと頼んだ。

私もカジュアルな服、紺のジーパン、白のシャツ、クリーム色の上着を着て、シロを隠しポケットに入れた。

しばらく、待つと全身黒い服を着た強面の男が来た。

「準備ができました。」

バスの効いた低い声だ。


街についた時、シロがまた隠しポケットから脱走した。

森の方に向かって歩いてないのに、なぜだ。


脱走した子ネズミくらいの大きさのシロを追いかける。

その後を護衛も追いかける。

シロは、商店街に逃げていき、そこにある店の一つに入った。

「いらっしゃいませ、エムスビン服屋。

お客様はどんな服を探しているのでしょうか?」

シロを追いかけて入るとそこは品の良さそうな初老の男性が店長兼店員を務める服屋に入った。

店長はわたしを憐れむような目で見た後、護衛に対して厳しい目を向けた。


その後、護衛が店長に捕まって、何やら話し込まれて、何着か服を買わされている。

さらに黒い服から、カジュアルな服装に着替えされていた。

カーキーの上着に黒のシャツ、ベージュのズボンを着ていた。

そのやりとりがある間にシロは隠しポケットにに戻っていた。

服屋から出た後、護衛がシロについて問い詰めてきた。

「そのきつねは?」

護衛に聞かれて黙る。

そのまま黙っていると別の話題を振られた。


その後、シロの脱走もなく、魔法陣を描くのに必要な紙を買うことができた。

明日は魔法陣を描くのに必要な生き血が手に入ればいい。


三日目

朝起きて部屋にシロがいなかったので慌てて探すと部屋の外から、シロの甘え声が聞こえてきた。

部屋の外では、護衛が足元をシロにじゃらつかれていて、どうすればいいか分からず慌てていた。

シロ懐いているし、死んだ後の譲渡先を護衛にしたらいいかもしれない。

この教会では、使い魔及び動物を飼うことは禁止されてない。

私はシロを森に返す気だったから、最初は申請する気がなかった。

しかし、シロが私に懐きすぎていることを受け入れて申請しようとした矢先にこの呪いだ。

私が魔法を解けば、少し大きな狐が現れるだろうけど、護衛と一緒に並べばどちらも似合いで絵になるだろう。

今日は街に行くのをやめて、シロの譲渡先にならないか護衛を説得してみよう。


護衛を部屋に招き入れる。

シロの縮小魔法を解除する。

護衛固まる。


大型犬くらいの大きさになり、私のそばにお座りする。

頭を撫でると嬉しそうな顔になる。

「これがこの子の本当の大きさなの。

この大きさでも大丈夫なら、この子の飼い主になってくださいませんか?」

困惑した顔で私たちを見る。

けれども、その目には拒絶が入っていない。

押せばいける。

「この子こんな綺麗で大きいんです。

人に懐いてしまっているんです。

森に返したらすぐに毛皮にされてしまうかもしれないんです」

毛皮というところで、困惑した様子は消えて、何かを決意した顔になっていた。

「引き取ろう。小さすぎて潰してしまうと心配していたが、これだけ大きければ大丈夫だろう。」

しゃがみ込んで、シロに目を合わせて、手の甲をゆっくりと近づける。

シロはその手に顔を近づけ、頭を擦り付ける。

シロの毛感触の虜になったのか、両手を伸ばしてシロを撫で回す。

シロも嫌ではない様子で護衛の体に体当たりしてじゃれついている。

うまくいきそうでよかった。

今日は紙を買いに行かず、森の方にいき、そこでシロと護衛を遊ばせた。

シロと遊ぶのが楽しかったのか、護衛は嬉しそうな笑顔になっていた。



四日目

街に行き、シロの食べ物や好物について説明した。

説明するたび、これはあなたの好きなものか、シロの好きなものか聞かれる。

私はあまり物にこだわらない為、シロの好きなものは私の好きな物だと答えておいた。

そんなこんなで、道中、鶏を買ったから、明日は魔法陣を描いて、シロと私の毛色を入れ替えよう。


五日目

護衛にシロと私の毛色を入れ替えることを説明した。

鶏を捌こうとすると、手伝うと言ってきた。

おかげで私は魔法陣の下書きに専念できた。

護衛が皿に貯めておいた生き血を使い、魔法陣を描く。

そしてそこに、私とシロが魔法陣の真ん中に立つ。

呪文を唱えて、魔法陣が光ると私とシロの毛の色は入れ替わった。

それを見た護衛はどこか悲しそうな顔をしていた。

もしかして、白い色が好きだったのかと心配したが、魔法陣から出て、寄ってきたシロを昨日と変わらない様子で撫で回していたので気のせいだろう。


六日目

今夜、私は、殺される。

護衛が自害用の毒を持ってきた

花束と一緒に。

自害用の薬を横に置き、私に跪いて、花束を差し出す。

「ずっと前からあなたのことが好きでした。だから、俺と愛を誓ってください」

「私はあなたとの愛を誓」

えないと返事をしようとしたら、シロが巨大化した。

そして、わたしを咥えた。

森の方に走っていく。

いままで行ったことがないくらい森の奥に入る

そして、知らない泉の前に着くと私を放り込んだ。

満月が映り、なにやら神秘的な雰囲気がある場所だった。

泉は冷たかったが、凍えるような冷たさではなく、心地が良くて、水の中なのに苦しくなかった。


目が覚めると護衛の腕の中にいた。

「よかった。」

護衛は泣きながら私を抱きしめる。

護衛の後ろには白い毛のシロがいた。

わたしは化け物になっていなかった。


護衛の話によれば、あの日シロは私を加えて教会から脱走した。

後を追おうとした護衛は、他の神官に声をかけられた。

あの大きな狐はなんだ。

私が魔法で化け物になった姿かと問い詰められて私たちシロを見失う。

諦めずに目撃証言を頼りになる森に辿り着く。

一晩と1日森に入って無我夢中で私を探し回る。

私が魔法を受けて一週間がたち、もう化け物になっているかもしれないのに、探し回っていたのだ。

疲れ果て森の中を彷徨っていた時、白い毛に戻ったシロがわたしを加えて現れる。

体にかかった呪いは消えていたそうだ。


そしてどうやら、護衛は私と愛を誓い合ったと思っている。



?年後

その後、わたしも護衛のことをよく知り、自分に対しての愛を理解し、愛し合う頃には結婚をしていました。


これが本当の話。


巷で有名な私達の話は狐が長年の私たちの愛を試すために、私たちを引き離すシーンなっているけど、真実はこれだから。

本当は呪いが解けた後に誓い合ったの。

だからね、子供たち自分が聞いたもの、見たものが全てではないのよ。


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