一,俺のカノジョ「たち」
四月、桜前線は狙いすましたかの様に始業式の日に満開を迎え、クラス分けに悲喜こもごもする生徒達に合わせるかの様に揺れていた。ただ、桜の開花時期と始業式の時期が重なったのはたまたまだとか。たまたまにしてはドラマチックではあるが。
「やったぁ!また同じクラスだよ!」という声は人混みのなかでもよく通る。そんなに大きな声を出さなくても相手は聞こえるというのに。はたまた普通の声量がそれなのだろうか。だったらおもいっきり叫んだら鼓膜が破れそうになるな、などと思っているのは新高校2年、神崎颯だった。颯もまた、クラス分けに悲喜こもごもする生徒達の1人である。もっとも彼の場合は悲が7割ほどだったが。
「な〜んでまた全員同じになるかなぁ…どこぞの恋愛小説じゃあるまいし」文句を言いながらもすごすごと2年6組に向かう…
「は〜やてく〜ん?」…途中に捕まった。いや、捕まってしまった。
「和斗か、おはよう…」俺の少ない男友達、柏木和斗である
「どしたぁ〜、元気ないねぇ〜、なんかあったぁ〜?」
とりあえずその気持ち悪い喋り方をやめろ。
「……落ち着いて聞け、和斗。」もっとも、落ち着いていないのはこっちの方だが。
「とりあえず、またお前と同じクラスになれたことを喜ぼう、イェイ」
「世界一感情のこもってないイェイだね…」
「…そりゃそうだろぉぉ!!」イントネーションの割には小さい声で俺は言った…はず…。
「あのね、こっちは放課後のでもうお腹いっぱいなの!なんなら十二分に足りてるの!なのに教室でもあの4人と一緒ってなったら…」
「そんなことだろうと思ってたけど…ストップ。」俺の言葉を遮って和斗が言った。
「惚気かもしくは嫌味にしか聞こえん」…正論も正論、ド正論だった。
「とりあえず教室いこう、?颯。まだ4人がきてなかったらまだ心の準備が出来るだろ」
たしかに、と思いながら和斗と一緒に教室につくと…なんとも地獄の空気
女子の空気はいい。楽しそ〜に話してる。女子同士って出会って5分で友達になれるのかってくらい楽しそう。問題は男子……。俺が教室に入ってきた瞬間、話すのをやめて俺のことを睨んでくる。親の仇ってくらい睨んでくる。胃に穴が開きそうになるのにも負けずに教室を見渡していると…いた
「あっ、キタキタ、颯〜おはよ〜」
「おはよう!颯くん!」
「おはようございます、颯くん」
「……おはよう」
四者四様のあいさつを聞いたところで…和斗とミニミニ密談開始。
「普通にいるじゃねぇかよ!なぁにが心の準備だ!」
「いやまあいるのは知ってたけどね」どういうことだってばよ
「え、だって靴箱に靴あったし、颯と鉢合わせたかったから教室来るようにしむけただけ」
「くっ、策士め、まさかこんな罠にハマるとは、フフッ…私も落ちたものだ…じゃなくてさぁ!」
こんな魔王幹部のセリフはいらないんよ
「まあとにかく、両手に花?4人だから両手足に花か、の颯くんの世界には野郎はいらないのでね。ばいちゃ」両手足に花は気持ち悪いだろ、というツッコミもさせてくれないまま、男子の会話の輪に入っていった。
「颯〜また一緒のクラスじゃ〜ん」
「……ソウダネ…」
この4人、全員可愛いし性格もいいのだが……男子の俺に対する目線も納得
全員俺の彼女なのである
※誤字脱字等ありましたら遠慮なく言っていただけると幸いです。