06
「え? ダメかしら」
リーヴェも一緒に入ろうとして、止められたらしい。
「私は、気にしないけど」
私は一応リーヴェの援護射撃をする。何をするのか知らないけど、見られて困る事はないだろう。
「まぁ、当人がそういうのであれば」
受付の人が渋々、リーヴェを通した。リーヴェは私に「サワ、ありがとね」と小声で言うと、ウィンクをする。
部屋の中に入ると、そこには大きな水晶があった。成人男性くらいの高さ。色は無く暗い。光がすべて吸収されているような暗さだった。
「これは魔力検知機です、サワさんの魔力量を測ります」
「……魔力」
聞きなれない言葉だった。妖力ではなく魔力。同一のものと考えていいのか。だとしたら、私には絶大な物が備わっている。自慢じゃないが、千年も妖怪をやってるのだ。
「力まず、気軽に、水晶に触ってください」
私は促されるまま、水晶に触れてみる。私が触れた水晶は、これといって変化がなかった。あっ、いや違うな。私は目を凝らしてみてみる。仄かに光っている気がする。受付の人も、水晶に顔を近づけて確認していた。
「あっ、はい、大丈夫です」
そう言いながら、受付の人の目が泳ぐのが見える。何その微妙な反応。気になる。
「どういう結果なの?」
「あぁ……えぇっと」
受付の人は明らかに言い淀んでいた。どういう事なんだろう。私はリーヴェに視線を送る。
「最弱の魔力という感じかしら」
「あっ、リーヴェさん! そんなはっきりと」
「まぁ本当の事よ、しょうがないわ」
最弱という事は、魔力と妖力は別の物という事だ。妖力はおそらく検知されていない。別の力という事なんだろうか。それに最弱といっても、私には魔力が備わっているらしい。それも興味深い。
「そっ、そんなに気を落とさないで」
受付の人が、慌てながら、私を気遣う。はっ、と気付き、私は首を振って「気にしてないよ」と否定する。考え込んでいたのが、落ち込んでいる様に見えたらしい。
「そ、そうですか? ……それでは最初の受付の方へお願いします」
少し疑いながら、受付の人が案内する。私は一応、気にしてない風に笑顔で「ありがとう」と伝えると、部屋を出た。
「魔力はすぐ上がるわ、日々の取り組み次第よ」
リーヴェが微笑む。この子も私が落ち込んでいると思っているらしい。そもそも魔力なんてなくても、私には妖力がある。ここにいる人間全員が束になってかかってきても、瞬殺できる。そんな事しないが。
「終わったよ」
私は最初に訪れた受付に声をかけた。