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ギルドには歩いて移動したせいで、それなりに時間がかかった。もう昼時はとうに過ぎている。今日も一日ドタバタで終わる気配しかない。私はため息をつきながら、ギルドの中に入った。
「こういう場合どうするの?」
前の時はリーヴェが全部やってくれた。そのせいでどうしたらいいのか全く分かっていない。
「一緒に行くから大丈夫よ」
私はリーヴェの言葉に安心して、後ろについていく。初めてここに来た時に寄った受付だ。結局全部ここに来れば良いらしい。
「朝出てたモンスターが集まっているって依頼、解決したわ」
「はい、同じ報告が複数入ってますので、状況終了となります、お疲れさまでした」
受付の人が笑顔でそう言うと、ペコリと頭を下げた。
「それで、サワがそのモンスター集団のリーダーを倒したのよ、サワ、モンスターコア出して」
リーヴェに言われるがまま、私はホブゴブリンのモンスターコアを受付に差し出す。受付の人が一瞬驚くと、すぐ元の笑顔に戻って言った。
「かしこまりました、ところでどんなモンスターの集団でしたか?」
「ゴブリンの群れとホブゴブリンのリーダーだった」
受付の人の問いに私は答える。少し緊張してしまった。状況を見たら、それで間違いないと思える物なんだから、疑われる事もないのだけど。
「なるほど、どんな目的だったのか……まぁ、わからないですよね」
苦笑しながら受付の人が言った。私は首を傾げつつ「そうだねぇ」ととぼける。実際は分かっている。ホブゴブリンの目的は私への報復。でもそんな事、正直に言えない。それに状況は意外と複雑だ。もうすべて、分からないで通すのが一番。
「それでは、これで終わりですが、他のモンスターコアはありますか?」
「私の分もついでにいいかしら?」
リーヴェがモンスターコアを取り出しながら言った。受付の人は「いいですよ」と笑って、リーヴェからモンスターコアを受け取る。
「ではしばらくお待ちください、換金いたします」
受付の人はそう言い残して、奥の方に引っ込んでいった。
「ふぅー」
私は深めに息を吐く。
「緊張してたのかしら?」
「……まぁね」
リーヴェがクスクスと笑う。
「堂々としていればバレようがないのだから、緊張なんて体力の無駄使いよ」
「そうなんだけど」
ギルドがしっかり調査とかしてたら、このウソがバレる。そうなると面倒この上ない。飛躍しすぎた心配かもしれないが、下手したら、私が討伐依頼の対象になりかねないと思う。そうなれば、命を常に狙われる、日本にいた時と変わらない日常だ。今の段階ですでに計画がぐちゃぐちゃなのに、これ以上邪魔されたくない。
「……スローライフ、遠くなっていく」
「だから、無理よ」
リーヴェが意地悪な笑顔を浮かべた。
「これで、実質、サワが穏健派のリーダーになったわけだから」
「なってないよ」
私は即座にリーヴェの言葉を否定する。否定しつつも、その事実を私は実感していた。どうして、こんな事になったのか。私は肩を落としてため息をついた。




