03
「呑気な事言ってる場合じゃないわよ!」
私の言葉に反応して、リーヴェが慌ててそんな事を言う。うん、分かってた。トラブルだよね。
「何が起こったの?」
現実逃避が激しすぎて、私は耳を塞ぎながら、そう返事をした。
「何してるのよ?」
「聞きたくなくて」
そんな事しても、少し、こもった声が聞こえている。完全に聞こえなくなることは無い。ただ虚しいだけの意味のない行為だ。私は仕方なく耳を塞ぐことをやめる。
「なにがあったの?」
「さっきギルドに寄ったら、討伐依頼が出てたのよ、集結したモンスターの!」
リーヴェが周りを見回した。眉間にしわを寄せて「これが原因ね」と呟く。怯えたように体を強張らせるモンスターたち。
「たぶん、どっかの冒険者が、多数のモンスターが、ここの辺りを目指して移動してるのを見て、ギルドに報告したのね、そういうたぐいの報告が重なったかも」
ここに集まったモンスターたちは、姿を隠さずに堂々と、移動していた様だ。それをいろいろなところで目撃されて、分析すれば集まろうとしている場所が分かる。
「何でもっと忍ばないの?!」
モンスターたちがたじろぐ。日本の妖怪を見習ってほしい物だ。警戒心バリバリで姿を隠す。暗隠術が必須の妖術と言われているくらいに、姿を隠す事に必死になっている。それに比べて、この世界のモンスターは大らかなのか、大雑把なのか。
「とりあえず、この場所と特定されていないのが救いよ、森の辺りを皆、捜索してるわ」
この場所から少し近い場所に森がある。隣接しているというほどではないけど。そこを探し終えるのは時間の問題だ。森への注目が無くなったら、こんな開けた場所にいるモンスター、すぐに見つかる。
「どうしたらいいでしょう」
スーがそう声をあげる。スーの声を皮切りにモンスターたちが口々に「サワ様」と私に縋るように声をあげる。転移術で移動するのはダメだ。私の知らない所に、こんな大勢で移動したら、必ず何体か粉々だ。暗隠術も使えない。私に触れている者にしか効果は出せない。頑張っても五体ぐらいが限界だ。
私は頭を抱える。どうすればいい。そう思っていると、ふと頭を良くない考えが過る。見捨ててしまえば、ここでの事の一部をリセットできるのでは。私は人間にしか見えない。冒険者たちの捜索を容易にスルー出来るし、紛れてしまう事もできる。でもそんな事をして、穏やかな気持ちでいられるのか。穏やかな気持ちがなかったら、のんびりスローライフなんてそもそも。私はモンスターたちを見る。私を慕って集まってきた子たち。襲いかかってきてるわけじゃない。時間がない。決断しないといけない。




