03
「怯えてる?」
スライムが少しずつ後ずさっていく。若干震えているようにも見える。モンスターはすべからく、襲いかかってくるのかと思ったら、そうではないらしい。私としてもそっちの方が、逃げなくていいから面倒は無いけど。平和万歳。
「私はあなたを攻撃する気ないよ、私人間じゃないの、なんて言うんだろ、同類というか……仲間みたいなものだから……あっこの事は秘密ね」
私は人差し指を口の前に持ってきて、ウィンクをする。スライムは若干、驚いたようにしている、と思う。伝わっただろうか。私はそんな事を思いつつ、その場を離れる。
襲いかかってこなくてよかった。今のスライムはよかったけど、もし凶暴なタイプが居たら、襲われるかもしれないな。おとなしくやられるのは論外として、身の危険がある場合以外、戦わない様にしないと。あるいは逃げるか。とにかく、同じ過ちは犯さない。闘いの日々に戻らない為に、今度は上手くやろう。
「あぁ、街だ」
あてもなく、ウロウロと歩いていただけなのに。
「ファンタジーって感じの街だなぁ」
それほど大きい街ではない、と思う。壁に囲まれているのは、やっぱりモンスターが普通に認知されている証拠だろうな。日本の妖怪は基本的に姿を隠して、存在していた。なぜかわからないけど、そういう物だった。世界が違えばモンスター事情も変わってくるらしい。
「とりあえず、興味があるし、行ってみようかな」
私はウキウキしながら街に向かう。どんな文化があるだろう。人間はいつだって驚きの進歩を見せてくれる。長く存在していると、それが良くわかるから、なにげに楽しい。というか人間がそもそも存在しているだろうか。モンスターが人間の様に、街を作って、生活している可能性も当然ある。まだ私は人間の姿を見ていない。どっちにしても楽しみだ。
街にたどり着くと、そこには人間が溢れていた。露店が並んで賑わっている。時間帯的にお昼時だろうか。食事を楽しんでいる人たちがそこかしこにいる。
「美味しそうだ」
私に空腹の感覚はない。そもそも、何かを食べなくても存在を維持できる。それでも、美味しいを食べたいという欲求はある。ほとんど娯楽として、私は食事をとるのだ。
「なんか縁日を思い出すなぁ」
こうやって、お店が並んで、楽しそうだった。毎度、妖怪が現れて、人間に迷惑をかけないように、その場から離れるしかなく、しっかり楽しめた事がないが。
「あれ?」
突然、私の中に違和感が湧いてきた。