07
私達の前にモンスターが飛び出してきた。見た事がない小さいモンスターだ。頭が犬のような感じで、体は人の様に二足歩行している。服もちゃんと着ていて、それなりの知能があるのだろうか。
「何あれ?」
「コボルドね」
リーヴェが剣を構えたまま、そう呟いた。コボルドという種類のモンスターらしい。どうしようか。私は少し後ろにさがる。襲いかかってくるようなら、リーヴェにやってもらおうか。卑怯な感じになるが、私は関係ない振りをすれば、私は恨まれない。
コボルドと睨み合い、リーヴェは距離を詰めていく。コボルドの方は逆に後ずさっていく。おや、あまり敵意を感じない。そのままコボルドは尻もちをついた。
「ちょっと待って」
私はリーヴェを止める。このコボルドもしかして、穏健派じゃないだろうか。魔王軍らしい好戦的な態度には見えない。
「なにかしら?」
リーヴェはコボルドから目を離さずに声をあげた。少し荒げた声だ。興奮しているかもしれない。私はリーヴェの手を掴むと「ちょっと待って」と止める。
「どうしてよ」
不満そうな表情をしたリーヴェが私を見つめた。なんて言っていいかわからず、私は「とにかくちょっとだけ待って」とだけ言って、コボルドと向き合った。
「もしかして、あなたは穏健派?」
私の声に反応したコボルドが頭を縦に何度も振る。そして「穏健派、穏健派だよ!」と訴えるような声が、頭の中に聞こえてくる。
「大丈夫、私も穏健派だから、あなたを攻撃しない」
「でも、その後ろの人」
「私が何もさせない」
思わず穏健派だと言ってしまった。私は少し後悔しつつ、言葉を続ける。
「立てる?」
「腰が抜けてしまって」
「まぁしょうがない」
苦笑しながら私は「ちょっと待ってて」とコボルドに伝えると、リーヴェに向き直った。
「お待たせ」
「どういう事なのよ? 状況が良くわからないのだけど」
「とりあえず、剣をしまって、必要ないから」
渋々という感じではあるが、リーヴェが剣を鞘に納める。
「……穏健派とか聞こえたけど」
リーヴェにはモンスターの声は聞こえない。私とコボルドの会話も、私だけが一方的に話してた様に見えているだろう。会話の内容が分かったからと言って、何かわかる物でもなかったけど。
「説明するよ」
どっちにしても私は、リーヴェに自分の事を話そうと思っていた。どう話そうか迷っていた所にコボルドが現れたのだ。ちょうどいいきっかけになったと思う。事情を知る人間ができるのは、穏健派にとっても、共存の第一歩になるかもしれない。私は穏健派の立場になってしまっている自分に気付いて、少し頭を振る。私の目的はスローライフ、そう念じながら、リーヴェに言った。
「とりあえず場所を移そうか」




