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01

 蒸し暑い夜。肌がべたつく様な、湿気を帯びた風が吹く。全く持って、心地よくない風だ。私は大きくため息をつく。いつまでこんな事が続くのだろうか。私は、沢山の妖怪たちが倒れている真ん中で、そんな事を考える。

 この倒れている妖怪たちは、私に襲いかかっていた妖怪だ。私は身を守る為に、この妖怪たちを倒した。それは正しい判断では、なかったかもしれない。こうして倒せば、妖怪の王である私の評判は上がり、その座を狙う妖怪が増える。悪循環だった。でもだからといって、黙って殺されるなんて結末を選びたくなかった。

「爽姫、妖怪の王よ、これで終わりと思うな……我らは一党の一部でしかない」

 私はもう一度ため息をつく。かまいたちを起こして、喋っていた妖怪に止めを刺した。私が見まわすと、周りに倒れていた妖怪たちが、徐々に光の粒になって消えていくのが見える。とりあえず終わった。毎日毎日、日夜を問わず、襲いかかってくる妖怪たちを滅しているのに、一向に数が減らない。きっと全滅させる事なんて、できないんだろう。いつまでこんな事。もう。

「もう、うんざりよぉぉ!」

 私は走り出す。もう嫌だ。どこに住処を移しても、居場所を突き止めて、襲ってくる。粘着質のストーカーかよ。やっぱりもう日本には私の安住の地は無い。これまで必死で研究してきた、世界を渡る妖術を実行するしかない。ここに居場所がないなら、別の世界に行ってやる。

 私は住処にしていた場所にたどり着くと、自分の妖力で作り出した家を消し去る。家が無くなり、ただの野原となったそこに私は立つと、目を閉じて集中する。別の世界を感じ取る。難しい術だけど、絶対に成功させてやる。

「もう嫌なの! 応えて、他の世界!」

 私の頭に、映像が流れ込んでくる。どこかの世界と波長が合った。すぐさま、その世界に届かせるように、妖力を糸の様に伸ばす。

「繋がった!」

 私が確かな感触を感じて目を開くと、目の前の空間に裂け目が出来ている。ひどく不安定で今にも閉じてしまいそうだ。

 私は一瞬迷う。万が一、上手く繋がっていなかったら、訳の分からない亜空間を漂い続ける可能性もある。そうなれば、より地獄だ。

「私を信じろ、私は凄い」

 自分を鼓舞する様に声をあげると、私は空間の裂け目に飛び込んだ。中は上も下も無い様な空間で、私は振り回されるように、ぐるぐると転がっていく。小さい穴をぶつかりながら、転がっていくような感覚とも、渦が出来た水の中で、かき混ぜられてる感覚とも言える、訳の分からない状態。さすが、亜空間と言ったところだった。

「ぎゃふん」

 そろそろ気絶しそうになっていたところで、地面らしき硬い場所に落ちた。

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