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お化け屋敷のファウスタ  作者: 柚屋志宇
第6章 大占い師と予言の詩

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558話 仮面占いパーティーについて

(かしこ)き御霊よ、『仮面占いパーティー』とは、マグスクラブの占いパーティーのことでしょうか」


 オクタヴィアがそう問いかけると、トトメスはオクタヴィアが掲げているペンデュラムを「はい」の方向に大きく弾いた。


「おお……!」


 バジリスクスは星に祈りを捧げる乙女のようなポーズで感嘆を漏らした。


 トトメスは更に、タニス作の振り子盤(ペンデュラム・ボード)の上の応答板を動かして一つ一つ文字を示す。


 ――大占い師が来る。


 トトメスが示した文字を繋げて出来上がったその言葉に、オクタヴィアは目を輝かせた。

 オクタヴィアはわくわく顔で振り子盤を見つめながら問いかけた。


「仮面占いパーティーに、大占い師がいらっしゃるのですか?!」


 オクタヴィアのその問いに、トトメスは応答版をぐるりと盤の上を一周させて、再び「はい」の文字の上に置いた。


「……!」


 オクタヴィアが『はい』の文字の上で止まった応答板を見て喜色を浮かべた。


「おお……」


 バジリスクスが喜び溢れる笑顔で小さく感嘆を漏らす。


 トトメスの幽霊は、バジリスクスにちらりと目を向けて面白そうに笑うと、今度はファウスタとオクタヴィアを交互に見た。


「大占い師とは、一体どなたのことでしょうか?!」


 オクタヴィアが質問をした。

 だがトトメスは、応答板を動かしたが、文字ではなく、振り子盤の下のほうに書かれている『さようなら』という単語の上で止めた。


(……!)


 トトメスはファウスタに笑顔を向け、手をひらひらさせて「バイバイ」のジェスチャーをした。


(トトメスさん、帰るの?)


 ファウスタがそう思ったのとほぼ同時に、トトメスは踊りのステップを踏むような軽快な足取りで、ひらりとテーブルから離れた。

 彼はそのまますうっと滑るように部屋の扉のほうへと向かい、扉をすり抜けて消えていった。


(トトメスさん、帰ってしまったのだわ)


 今までのトトメスに比べると、今回の彼は悪ふざけのようなことをせずに大人しくしていてすっと帰ったので、ファウスタはほっとするのと同時に少し拍子抜けもした。


「……『仮面占いパーティー』に、『大占い師が来る』……?!」


 オクタヴィアはうっとりとしているような表情で、振り子盤に書かれた『さようなら』の文字の上にある応答板を見つめながら、トトメスが残した言葉を独り言のように復唱した。

 そしてオクタヴィアは急に気付いたように、はっとした顔をすると即座に幽霊にお礼を述べた。


「畏き御霊よ、お答えいただき感謝申し上げます」


 感動の表情のバジリスクスを除いて、魔物たちは皆、平然としていた。

 オクタヴィアの付き添いの侍女ヘンリエタは、人間で、この怪奇現象が信じられないのか、驚愕の表情のまま固まっている。


(『大占い師』って……トトメスさんがマグスクラブの仮面占いパーティーに来るってことかしら。もしトトメスさんが来るなら、シャールラータンさんに教えてあげたほうが良いよね。シャールラータンさんはお師匠様のトトメスさんに会いたがっていたもの)


 ファウスタはトトメスが残した謎の言葉について考えた。


(でもトトメスさんは幽霊なのに、どうしてマグスクラブのパーティーの予定を知っているの? バジリーさんたちは魔道士だから幽霊にもお知らせができるのかしら? あれ? でも幽霊に声を届けられるのは私だけって、トンプソン警部補のときは……? あれ?)






「仮面占いパーティーだなんて、なんて素敵な企画でしょう」


 オクタヴィアの振り子占いペンデュラム・ダウジングの実験は、幽霊が応答板を動かすという騒霊現象(ポルターガイスト)も起こり、大成功に終わった。


 オクタヴィアは従僕(フットマン)ラウルにテーブルの上の振り子盤たちを片付けるよう指示を出すと、人間バート・マグスに化けている魔道士バジリスクスにお礼を言い、そしてマグスクラブの企画についての質問をした。


「私もそのパーティーに参加させていただけないでしょうか」


 オクタヴィアがそう言うと、バジリスクスは喜びを表現する大げさな身振りで答えた。


「ぜひともご参加ください。すでに招待状はマークウッド辺境伯に送らせていただいております」

「あら、そうなの?」

「はい。招待状とともに、入場券となります招待カードを五人分、同封させていただいております」

「マグスクラブからの招待状が来ているなんて、お父様からは何も聞かされていないわ……」


 外出先であるためか、オクタヴィアはいつも屋敷でしているようなあからさまな憤慨は見せなかったが、不満を堪えているかのように眉を少し歪めて言った。


「もしやお父様は、私を差し置いて、ご自分のお友達に招待カードを譲ってしまったのかしら……」


 オクタヴィアは父親への疑惑を零すと、少し引きつってはいるが笑顔を取り繕ってバジリスクスに言った。


「マグス氏、厚かましいお願いで申し訳ないのですが、私にも招待状をいただけないかしら。父が頼りなく、私には招待カードが届かないかもしれませんの」

「すぐにお嬢様に招待状をご用意いたします。おお、そうだ、招待カードを今すぐ持って来させます。ぜひお受け取りください。正式な招待状は後日送らせていただきますゆえ……」

「まあ! 今日いただけるの?!」

「はい。すぐにクラブハウスの事務員に伝え、招待カードを持って来させましょう」

「ご好意に感謝いたします」

「ぜひお友達もお誘いください」


 バジリスクスはオクタヴィアにそう言うと、ファウスタにちらりと、はにかんだ乙女のような笑顔を向けた。

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― 新着の感想 ―
はにかんだ乙女のようなバジリスクスさんの笑顔。 想像するだにキモい(笑)
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