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お化け屋敷のファウスタ  作者: 柚屋志宇
第3章 心霊探偵

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216話 裁判の結果

「まさか伝説のランタン男ジャック・オー・ランタンが現れるとは。夢でも見たような気分だ」


 王立裁判所の門前。

 物売りから買った芋の揚げ物をつまみながらロット卿がそう呟くと、傍らでやはり芋の揚げ物を齧りながらダフが言った。


「夢じゃありやせん。あっしも確かに見やした。おっかねえ唸り声も確かにこの耳で聞きやした」


 銃撃と怪奇現象とで混沌としていた王立裁判所前の騒乱は一段落していた。

 ロット卿やダフのように事件現場に居合わせた者たちはまだ興奮してはいるものの一応の落ち着きを取り戻していた。


 もちろん日常が戻ったわけではない。

 白昼堂々、殺人未遂事件が起こったのだ。

 応援の警官も駆けつけており現場の調査が行われている。

 小銃(ライフル)の射手がいた建物にも刑事や警官が向かった。


 そして野次馬たちはあちこちで輪を作り、銃撃と怪奇現象について語り合っていた。


「夢ではないとすると、伝説のランタン男が暗殺犯を捕らえたわけだ。大勢の目撃者がおり、警官たちも見ていた。この驚くべき怪奇現象は、事実として記録されるのだろうか」


「射手は窓から転落したと報道されるのではないかね」


 今日初めてダフから情報を買った紳士が、ロット卿とダフに予想を述べた。


「警視庁の火事騒ぎも幻覚と報道されていた。私も今日、ランタン男をこの目で見るまでは警視庁の火事騒ぎは幻覚だと思っていたさ。あのランタン男を見てしまった今なら、火事騒ぎの炎も存在していたのだろうと信じられるがね。しかし科学的に証明できないのだ。これも集団幻覚と言われる気がするよ」


「警視庁の火事もランタン男と同じ青い炎だった。あの青い炎は、霊的なものなのだろうか……」


 王立裁判所前のあちこちで、ロット卿たちと同じく立ち話をしている者たちが大勢この場に留まっていた。


「新聞記者が写真を撮っていたが、ランタン男は写っているだろうか」

「もしランタン男の写真が撮れていたら凄い事になるぞ!」


 驚くべき事件を誰かと語り合い、自分の正気を確かめたいという理由もあるだろうが、それでも皆が皆、事件後もこの場に留まっている理由。

 それはロット卿たちと同じ理由だろう。


 裁判の結果を待っているのだ。


 とんでもない騒動があったが裁判は中止にはならず、開始時刻は遅れることとなったが行われていた。


 裁判が終わり、傍聴を希望した者たちが出て来て結果を告げてくれるのを皆は待っているのだ。


 物売りから軽食を買ったり雑談したりしながら、ロット卿たちが時間をつぶしていると、やがて裁判所の玄関口が急に騒がしくなった。


 ロット卿たちは一瞬顔を見合わせ、待ってましたとばかりに裁判所の玄関口に向かった。


「懲役七年!」

「首謀者はドスト男爵!」


 裁判所の玄関口ではあちこちで、結果を知らせる声があがっていた。


「カニングは命令されていたんだ。命令していたのがドストって奴らしい」

「保安局が証拠を押さえたんだ!」

「ドスト男爵だと?! これは大変な事になるぞ!」

「聞いたことない貴族ですがヤバイ奴なんで?」


 社交界に縁のない庶民たちにとって、ドスト男爵はほとんど耳にしたことのない名であった。


 現在のタレイアン公爵エグバート王子の婚約者が決定した当時には、妃に決まったフラウド伯爵令嬢マルシャの実父として新聞に何度か出た名である。

 だがエグバート王子とマルシャ妃が結婚して二十年が経過した今となっては、マルシャ妃の出自について報道されることは無くなっていたので、実父のドスト男爵の名を知る者も記憶している者も庶民には少ない。


 だが貴族であれば大抵の者が、とくに高位貴族は、タレイアン公爵夫人マルシャ妃の出自を把握していた。


「タレイアン公爵夫人の父親はフラウド伯爵では?」

「それは養父だ。マルシャ妃はフラウド伯爵家の養女。実父はドスト男爵なのだ」

「王太子妃の実父が首謀者だったということか?!」

「犯罪者の娘が王妃になれるのかね」

「タレイアン公爵夫人はラシニア孤児院の理事長ではないか。実父が横領の首謀者だとするとタレイアン公爵夫人も無関係とは思えん」

「だから暗殺者が来たのか! 王太子妃の地位を守るために、死人に口無し、罪を擦り付けて切り捨てようとしたのか!」

「いや待て。警視庁での一連の容疑者急死事件は無関係なのか?! 鬼火は留置所で毒殺された者たちの怨念だろう!」


 裁判結果が報じられると、先程の銃撃や怪奇現象の騒ぎとは別の様相ではあったが大騒ぎが始まった。


「よし、裁判結果は解った。ダフ氏、霊能(サイキック)クラブに行くぞ!」


 あらかた情報を集め終わるとロット卿は意気揚々と言った。


「伝説の火炎魔人の出現も皆に伝えねばならん! クラブハウスへ行こう!」


 ロット卿の真っ直ぐな眼差しを受け、ダフは愛想の良い笑みを浮かべた。


「あのう、お代は……?」

「もちろん支払う。クラブの経費からも落とせるかもしれない。伝説の魔人の目撃証言なのだからな! 最低でも三百ドログは約束する!」


 提示された金額を聞くなり、ダフはぱあっと笑顔を輝かせた。


「まいどありいいいいー!」

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