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D.O.O.R 異界調査報告書  作者: 朝倉神社
天使光臨編
34/43

幕間6 メイの大冒険

読了ありがとうございます。


第三話完。

次回から最終話になります。


良かったらブクマ登録宜しくお願いします。

コメントなど返事しますのでお気軽にお願いします。

 きりんさん、きりんさん♪

 くびのながーい、きりんさん♪

 おそらにとどくよ、きりんさん♪

 とりさんなかよし、きりんさん♪

 きりんさん、きりんさん♪


 楽しそうに鼻歌を歌いながら、メイは落書き帳に動物園で見てきたキリンを描く。見たのは黄色に茶色のぶちだったのに、キャンバスの上ではいろんな色のキリンが踊っている。隣の部屋では”先輩”が遠くにいる”睦月君”とお仕事している。


 メイはお絵かきをしながらも、彼らの声に耳を傾けている。

 突然、睦月の音声が途絶え、慌てたように浅葱が彼の名を何度も何度も口にする。メイには何が起こったのか瞬時に分かった。


 蜘蛛と戦っているときに、転んで通信デバイスが故障したのだと。

 それでも、睦月が無事なのはバイタルデータで分かっていた。でも、危険なのは変わりない。メイははっきり覚えてる。前に大怪我をしたとき、メイが守るというと、睦月は答えた。


”次は頼むな”


 と。

 だから、助けに行かなきゃとメイは決心する。前回は通信が完全に途絶えて、睦月の居場所が分からなかったけど、今回は音声が駄目なだけで、通信は生きていた。だから、どこにいるのか分かっている。


 部屋を飛び出し、睦月に必死に呼びかけている浅葱と目が合う。メイの行動を読んだのか、入り口の前で立ちはだかるように両手を広げた。横を通り抜けるのは無理そうだったので部屋の反対に向かって進むと、窓を開け、そのまま飛び出した。


「メイ!!!!!!」


 浅葱が慌てて駆け寄り、手を伸ばすがメイは届く距離にはすでにいない。大きく開かれた翼は風を受け、メイの体の浮力を底上げする。空を飛んでいくということは出来ないようだが、自由落下の速度を落とすことは可能らしい。とりあえず、死ぬことはないとわかったのか、浅葱の顔にホッとしたような表情が一瞬浮かぶと、一転して焦ったように窓から顔を引っ込める。


 階段を使って追いかけるのだろう。

 しかし、メイはすでに着地している。

 家の中にいたので裸足だった足裏に、冷たいアスファルトが襲い掛かる。でも、メイに気にしている様子は全くなかった。睦月のいる方を感じ取り、羽を広げたまますぐに駆け出した。


 その速度は、大人ほどではないものの幼女とは思えぬほどに速い。

 風を切って走る薄着の少女というだけでも目立つというのに、彼女はブロンドでかわいらしく、その上羽が生えていた。通行人はギョッとしながらも、スマホのカメラで少女を撮影する。彼らは別に少女を本物の”天使”だとは思っていない。そもそも、服の下から生えているそれの根元が見えるわけでもないので、当然のことながら羽は作り物だと思っているのだ。


 睦月の事務所から、華の屋敷まではほとんどが住宅街である。ゆえに、目撃者の数はそれほど多くなかった。だが、ネットというのは侮れない。かわいらしい天使が羽を広げて、住宅街を駆け抜けていくシーンは注目を集めた。


 曰く、東京に天使が舞い降りた


 と。そんなこととは露知らず、メイは最短距離で華の屋敷にたどり着くと、表のゲートの隙間を抜けて玄関に到達する。家に半ば閉じ込められている彼女には、インターフォンを鳴らすという知識はなかった。だから、玄関も勝手に開ける。


 DOORの中にいるはずの睦月の存在がメイにははっきりと感じられているようで、始めて訪れた屋敷でありながら迷うことなく睦月のいる部屋を目指す。しかし、そこで、華に見つかった。


「お嬢ちゃん?どこから入ってきたの?」


 不思議そうに小首をかしげる華。たまに来客があるとはいえ、睦月を迎えたあとは玄関の鍵は閉めていたはずである。自分が資産家ということは理解しているので、防犯にはぬかりはない。そのため、当然ピッキングできるような鍵ではなく、コピーの不可能な電子ロックを息子達に進められるままにつけていた。

 閉め忘れたのかしらと、自分は耄碌してしまったのかと華は思う。


「むつきくん」


 メイは彼が華の向こう側にいることが分かっていたので、助けに行きたい一心でその名を呼んだ。それに華が反応する。


「如月さんのお知り合い?」


 さすがに金髪碧眼では、親子とは思わなかったのだろう。それに、呼称は”むつきくん”である。自分の親をそう呼ぶ子供は稀だろう。


「たすけにいかなきゃいけないの!」


 少女の懸命な様子に気圧されて、華は道を開ける。その横をメイは駆け抜ける。扉を開けDOORを確認すると、躊躇うことなくその向こうへと飛び込んだ。華はどうしたものかと思うが、睦月に何があっても中に入ってはいけないと言及されていた。


 しかし、この状況は彼の言う”何があっても”に該当するのかしらと頭を抱えた。中は危険だという。そこに、不思議な羽を生やした少女が飛び込んだのだ。


 メイはDOORを抜けた先に、大自然が広がっていることを不思議と思わないのか、テントを潜り一直線に睦月のいる方へと向かう。このとき、すでに睦月は黒王蜘蛛ブラックキングスパイダーに捕らえられ、戦闘音が聞こえているわけでもなかったのに、まるで、その目に見えているようである。


”むつきくん”


 心の中で庇護者の名を呼びながら懸命にメイは走る。

 そも、ライトを持たないメイに、この夜の世界がどう映っているのか、草原と言っても石ころは転がっているのでトップスピードで駆け抜けるというのはそれなりにリスクがあるのだ。それでも、メイはただ真っ直ぐに睦月の元を目指す。


 事務所を出てから10分弱。

 黒王蜘蛛ブラックキングスパイダーが様子見の攻撃でなく一気に仕掛けていれば、もっと早くに決着がついていたかもしれない。”待ち”を狩りの主軸に置く性質だったのは不幸中の幸いだった。

 全力疾走で駆け抜け、息をほとんど切らせることなくメイは森に足を踏み入れ、とうとう睦月を発見した。大きな蜘蛛に体を押さえつけられ身動きの取れない彼に向かって、メイは叫ぶ。


「パパー!」

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