月の名は 【6】~【10】
【6】かおりさん
灰色熊は、このままではいけないと運転手さんにニコッと笑い、話しかけました。
【7-1】山之上 舞花さん
「ねえ、そこのあなた。あなたはラッキーだわ」
運転手は灰色熊の言葉に、疑いの目を向けました。
「どういうことだ?」
「言葉の通りよ」
尚更怪訝な顔で運転手は、灰色熊のことを見つめました。
【7-2】つこさん。さん
「ねえあなた、6月の満月の名前を知っている?」
灰色熊はバーカウンターでカクテルグラスをくゆらせながら訊ねます。
「知らないよ、なんていうんだい」
運転手は麻酔銃を愛しげに撫でながら言いました。
「ストロベリームーン……とてもきれいなピンクなの。
あたしのリボンみたいにね」
「そうか……君は今年のストロベリームーンをみたいかい?」
運転手はそっと麻酔銃を構えます。
「ええ、みたいわ。
……あなたと一緒に」
【8】マックロウXKさん
パン!
乾いた音が響き、灰色熊のハニーが地に倒れ伏せます。
素早くひきがねを引いた、運転手は一言。
「みね撃ちだ」
しかし、撃たれたはずの灰色熊のハニーの姿がふっと消え失せます。
「残像よ」
いつの間にか運転手の背後に現れたハニーが、首筋に鋭い爪を突きつけていました。
【9】黒イ卵さん
「……フラワー・ムーンは見たのかい?」
運転手は両手を挙げて尋ねます。
「知っていたのね。ええ、夕べ見たわ。ひとりで。いつもひとり」
灰色熊の爪が、キリキリと音を立て、運転手の喉をやさしく撫でました。
とさり。
【10】秋の桜子さん
黒いアスファルトに倒れた運転手。
それを見下ろす灰色熊、動かぬ姿を優しく見下ろしていた。
そして身をかがめ運転手に聞く
私の事を愛している?
運転手に口づけをすると……六月の満月の魔法が動き出した。
フラワームーン、ヒルダとヨルダはハラヒラ舞う花弁を集める。
倒れた運転手にその花弁を捧げた。