第三十八節 騎士とボッチと
それは晴れた午後のこと、授業が終わりティナと寮に帰ろうとした時のことだった。
取り巻きに囲まれた騎士がこちらに向かってくる。
そう、ゴリラ令嬢は確かに周囲の人間から距離を置かれている。
だが、反対に令嬢に近づき、優遇してもらおうとゴリラの機嫌をとる連中もいる。
「あら、アド様あちらに見えますのはたしか……。」
「ああ、レリクスやゼムセプトの討伐で活躍された方ですわね!」
「私はこの者に用があるので今日はこれで失礼する。」
「あら、残念ですわ。今日のお茶会には参加されないのですね。」
「では、ごきげんよう」
挨拶し終えると皆、一様に帰っていった。
「ああ……。」
返事をするゴリさんは相変わらず無愛想だった。
「用ってなんだよ?」
「貴様、研究の方は進んでいるのか?」
「あーー、アレねぇーー……。」
この学園では共通授業の他に選択授業があり、自分の研究をもって、それの役に立つ選択授業を選ばなければならない。
自分の研究…………。
「なんかいきなり研究とか言われてもわかんねーんだよなー……。」
「キョウ君まだ研究範囲決まってないみたい。」
「そうですか。ティナ様は?」
「僕は決まってるよ。」
「決まってるなら、ティナと同じので」
「人の真似では後で後悔するぞ。不敬。」
「て、言っても全然浮かばないし……、そう言うゴリ……アドリレファは何を研究してるんだ?」
「私は魔法理論研究だ。」
「魔法理論、研究?」
良く解らないフレーズに戸惑うオレにゴリラ令嬢は説明する。
「魔法が発動する仕組みについての……」
「うん、無理!!」
「まだ、何も話してないぞ?!不敬?!!」
するとティナは唐突に用を思い出したらしく、
「あ、僕今日、研究について先生に呼ばれてるからちょっと行ってくるね!キョウ君は先に帰ってて!」
と、去って行ってしまった。
騎士と二人その場に残される。
「用ってそれか?」
「ああ、そうだ、」
「もうちょっと考えておく方向性で……(汗)」
正直、この先自らの研究テーマが決まりそうにない!
「……そうか。それは残念だ!
まあ、定期試験までには考えて置くことだな!!」
「?……お、おう?」
定期試験に何かあるのだろうか?
「ふむ、その顔では定期試験には何かあるのか?とでも考えているのだろう?!」
「何故解った?!」
はぁ、とため息を吐きながら騎士は続ける。
「いいか?!
定期試験には研究での成果も含まれているっ!!
つまり、点数が悪くても、研究成果を出していれば問題ないっ!!
わかったら勉強するか研究しろっ!!」
このお節介騎士さんはわざわざそんな事を言いにきたのか……。
「何でそんなにオレのテストの点数気にするんだよっ!?」
一瞬最悪のシナリオが頭を過る。
「貴様の小テストの点数が芳しくないからだろう?!」
デスヨネーー……。でもそんなに
怒鳴らないでいいと思うんデスガネーー。騎士の返答で一抹の不安は払拭された。
「とりあえず、研究テーマは何とか決めとくから……」
「“から”、なんだ?」
「から、稽古つけてくれないか?」
それを聞いた騎士はフッと笑みを浮かべる。
「ほう、いいだろうっ!!私についてくるがいいっ!!!!」
その後オレ達は校舎裏で限界を迎えるまで竹刀を振り続けた。
「だーーーっ!!もう無理だってっ!!」
オレは声と共に地面に突っ伏した。騎士はこちらに竹刀を向ける。
「なんだ、はぁ、この程度か……はぁ……。」
「いや、お前も息切らしてるじゃねーかっ!!」
それを聞きムッとした表情でこちらを睨んでくる総督令嬢様はオレの首筋に竹刀を向け直す。
「なかなか、やるようになったがまだまだだなっ!!さぁ、立てっ!!!まだ続けるぞっ!!!!」
このゴリラさんは限界を知らないらしい。負けず嫌いなんだろう。
「いや、そろそろ帰ろう!」
「……。」
「稽古つけてくれたお礼したいしさ!」
予想外の少年の言葉に騎士はたじろいだ。
「お、お礼だと?!そんなものっ!不敬ごときにされる義理がないっ!!不要だっ!!」
「いや、いいからなんか奢らせてくれよ!この前のチョコの返しだと思ってさっ!」
ボッチ曰く、他人に借りは作らないのがベストだ。貸し借り無しなら誰かとそんなに親しくなる事もない。気を使う必要もない。
「貴様がそこまで言うなら仕方ないな、付き合ってやらなくもない……。」
何処か腑に落ちない様子だが、なんとなく合意してくれたらしい。
「じゃあ…………。」
続くつまりカミングスーン
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