第十二節 奇跡の魔法使い
今日はこの前の歴史の授業の続きを受けていた。グモラルドの歴史を変えたのは一人の魔法使いだった。魔術士ラナロス・キアナは天才魔法使いである。まだ王政の時代、彼女はゾグロス学園(この学園)に入学し、まだ魔法がなく、人々が魔剣しか使えなかった時代に革命を起こした。彼女は魔剣をメモリー代わりに使う事によって、魔力を魔剣を通じて変換し、魔法を使えるように変えた。これにより文明レベルが格段に上がった事で、学園が力をもつきっかけを造ったらしい。
「ここ次の小テストに出るからな。」
カリカリと教員が黒板に文字を書きながら生徒たちに促した。
「天才魔法使いねぇ。」
そう呟いたオレの横で
「……。」
ティナは無言で青ざめいた。そういえば以前の歴史の授業の時にも少し気分が優れなさそうだった。
「ティナ?大丈夫か?」
「う、うん。」
そうして授業が終わると
「僕、お手洗いに行ってくるね……。」
「フラフラじゃねぇか?!本当にだっ」
「大丈夫だからっ!!」
オレの言葉を叫んで遮りティナは走っていった。どうしたんだ?心配するオレにはまだ、その理由はわからなかった。そんなオレをザトラスが昼飯に誘ってくれた。
一方白い少女はトイレにて、蛇口の水が流れ続けるなか彼女の名を呼ぶ。
「キアナ……。」
彼女はその名を聴いて思い出した。“その者”から何をされたのか、記憶が鮮明に蘇る。
もちろん忘れていた訳ではない、しかし“彼”との日々があまりにも幸福だったからほんの一時、“その事”が頭から抜けでていた。少女は流し台で頭を抱える。
「キョウ君、助けて…。」
悲痛な彼女の声は、その声は、彼にはまだ届かない。蛇口からの水は止めどなく流れ続けていた。
まるで彼女の痛みを象徴するかのように……。
「この弁当うまいな。これザトラスが作ったんだよな?!」
中庭にて弁当を片手に二人は食事を楽しんでいた。中庭には色とりどりの草花が植えられ、噴水の周りにベンチが並んでいる。風が木々を揺らして木漏れ日が漏れ、穏やかな日々を優しく照らし出していた。
お弁当の中身はまるで愛妻弁当のように凝った造りになっていて特に卵焼きが旨い。ザトラスの料理の腕が良くわかった。
「ああ、三人で食べようと思ってな。」
「ティナ、遅いな。大丈夫かな……。」
「私たちは特例者様の様子を見に行けないから待つしかないな…。」
ボッチだった頃誰かと弁当を食べるなんて想像もしていなかっただろう。ここでの生活は現実(極めていたボッチ道)を忘れさせてくれる。
「キョウ、頬に米粒がついている。」
(キラキラー[と、イケメンオーラを出しながらいい香りのザトラス君])
そういってキラキラしたイケメンに、ついた頬の米粒を取ってもらう。指先がオレの頬に触れ、微かに指先の温もりが伝わる。そして二人の間にはえもいわれぬ気恥ずかしさが芽生え、何故か鼓動が速まって……、微かにザトラスの黒髪が揺れ、少しずつその距離が近づき……………あれ?ヒロインどこだっけ?!ティナさーん??!!
「キョウは何が好きなんだ?」
「うん、普通に女子かな。」
(真顔)
「?次の弁当のおかずの参考に、好きな食べ物を聞いたんだが…?」
「女子かな」ニコリ(キラッ[ザトラスに対抗して出してみたキラキラの音])
「………私はキョウを気に入っているが……」
「………は?!それってどういう」
突然の意表を突いた言葉に頭が回らなくなっていく。こないだの消しゴムから“彼”の胸にはキョウへの特別な思いが芽生え出していた。ゆっくりと手が触れあ…………わない。
避けた。全力で避けた。何でだよ?!!ヒロイン間違ってるだろ?!!
「キョウ」
少し照れながら名前を呼んでみるザトラス君。中庭の噴水が二人の後で勢い良く吹き出し続けている。
「お、おう……ハ、ハンバーグかな?」
ははっと苦笑いするオレに対して
「では、今度はハンバーグを造ってこよう。」
(キラッ)ニコリとするザトラスは相変わらずキラキラしながらそのメガネを人差し指と中指でクイッとあげる。オレが女子なら惚れてるわ。
「ところで今日の授業のラナロ…ラナロスだっけ?」
「キアナ様について知りたいのか?」
「キアナ様?」
この世界では名前は上から読む人も下から読む人もいるらしい。
ザトラスによればラナロス・キアナは天才魔法使いで、まだ魔法がなかったこの世界に魔法を生み出し、その功績から王宮に召し上げられ、王子の家庭教師となったが
後に学園と組んで王政を廃止、王族の廃止により第三の神の加護が失われたとされている。偉大な魔法使いなので崇拝している人も多く、ザトラスが様付きで話したのはその為であるが、ザトラスは崇拝している訳ではないらしい。
「もっと詳しく知りたければ図書館に行ってみるといい。案内する。」
「図書館か…。」
続くつまりカミングスーン
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