前章 ある少年の断末摩(オワリ)と断末魔(ハジマリ)
それは1人の少年の終わりの話。少年は奴隷だった。否、それは彼の晩年の話である。彼は何の変哲もないただの少年であったのだ。どこにでもいる普通の、普遍的な欲にまみれた人間であった。訂正しよう、彼の名誉のために。欲と言っても人間なら至極真っ当な欲である。怠惰を貪り(勉強もせず遊興にあけくれる)、安眠に墜ち(授業中の居眠り)、友人を求む(ボッチ)と、どこにでもいる普通の少年であった。しかし、一つ大きく違うと言えば彼を取り巻く環境…失礼、環境とは言い難い何か、ここでは「世界」とでも言っておくべきか。
そう、ここは本来紡がれるはずだった歴史とは違う結末をたどった世界。いいえ、どちらかと言えば、全て、そう、全てが破綻した世界なのだ。だから彼は今日…その短い一生を…いや、これは過去から見れば長いほうだったかもしれない。この世に生を受けることなく消え去った赤子、産まれてすぐ食べられた童、売られた子供、これらを見れば彼はまだ幸福だった、片時だけであれ幸せだったのだから。そして、彼も今日消え去る。己の欲故か?否、決して否なのだ。決して…。薄暗い牢獄の中でうごめく、「誰か…助け、て 。終わりたくないっこんな終わりかたは認められないっ!」そう喘ぐ薄汚れた黒いモノは息さえままならない。そして、最後の言の葉と共にその灯火は掻き消された。 「…ッ■■■ー……」…………………………………………………………………………そう、彼は終わりを受け入れなかった。
しかし、「彼」は、…「彼」はそれを受け入れてしまったのである。「受け入れてしまった」、これは語弊が生じるであろうから言い直そう、
つまるところ、彼はその事象を受け入れる必要があったのだ。何故に?決まっている。それは、終わらせないためだった。何を?………それは今から語られることなのだ、よって終わりによって始まりを初めようではないか。
彼の断末魔によって…。
続くつまりカミングスーン