五爵について調べてみよう
さて、前回の『爵位』のお勉強の続きです。
張り切っていってみよー! \( ̄▽ ̄*)
まず、中世ヨーロッパは、『封建社会』なんですよね。
『封建社会』とは『封建制』を基盤としてる社会です。
◇ ◇ ◇
・封建制
君主が直轄領以外の土地を諸侯に分け与え、領有・統治する制度。
* * *
日本だと鎌倉~明治維新までがコレになります。
「その土地を自由にしていいから、何かあったら王家をちゃんと守ってくれよ」
という『契約』ですね。(あくまで私の大雑把な理解だが……)
土地の領有権を認める代わりに上納や軍事奉仕を義務付けています。(で、この上納はあったりなかったりするんだろうな、と推測)
それを踏まえて、『五爵』を見ていきますか。
◇ ◇ ◇
①公爵(prince)(Duke)
・爵位の第1位。古代ローマで使用された「Dux(指導者)」が由来。
・古代中国の書物においては『侯』と共に百里四方の領地をもつ者、と記載されている。
・日本の華族においては『皇族より臣位に列せられた者』『旧摂関家』『徳川宗家』など限られている。
・イギリスでは3番目にできた爵位。『王族公爵』と『臣民公爵』があり、『王族公爵』は別格。
・侯爵から男爵までは「卿(Lord)」と尊称されるのに対し、公爵のみ「閣下(Your Grace)」と尊称される。
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王家との関係が深く、他の爵位とは一線を画する、という感じですね。
創作物などでは『王家に次ぐ家柄』『王位継承権がある』というような位置づけになるんでしょうか。
私のイメージだと……王家とは一蓮托生と言いますか、王家の威光が弱まれば自身の影響力も弱まることから、王家と人民なら完全に王家寄りなんだろうな、という感じです。
ちょっと話はズレますが、『パタリロ!』で魔王アスタロトが閣下と呼ばれていたような……と思い、調べてみたら、魔王アスタロトは公爵(二代目)でした。
なっとくのなー。( ̄▽ ̄*)
◇ ◇ ◇
②侯爵(Marquess)
・爵位の第2位。語源は「Markgraf」というゲルマン民族の言葉。
・古代中国の書物においては『公』と共に百里四方の領地をもつもの、と記載されている。
・日本の華族においては『臣籍降下した皇族』『旧清華家』(※摂関家の次に位置する)『旧御三家』『旧琉球藩王家』など。
・イギリスでは男爵・伯爵・公爵の次にできた爵位。
・ドイツでは『辺境伯』を意味する。語源の「Markgraf」は「Marka(=境界線)」と「Graf(=伯爵)」が合わさったもの。
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いっ!? ここで『辺境伯』!? ( ̄皿 ̄;)
◇ ◇ ◇
★辺境伯(Margrave)
国境付近に防衛の必要上置いた軍事地区の長官。異民族と接しているため、他の地方長官よりも広大な領域と大きな権限が与えられており、一般の地方長官である『伯』よりも高い地位にある役職とみなされていた。ドイツでは辺境地方において勢力が拡大し、有力な君主となったため、他のヨーロッパ諸国とは区別されている。(※wikiより抜粋)
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ほー……。( ̄o ̄;)
そうですね、国境に領土を持つ『辺境伯』は外国の脅威に晒されている訳です。言うなれば、前線で国を守っている、と言いますか。
封建制で考えると、情報なども握っていますし国家安定のためには疎かにはできない、ということになりますね。ここに寝返られると軍事力激減、情報もストップで国が滅ぶ確率が飛躍的に上がりますから。
王族と血統的には近くないかもしれませんが、本当の意味で国を守ってくれる人なので、軍事力は重要。となるとそれなりの身分を与え、権力を認めてあげないと……という感じでしょうか。
封建制自体が王家と諸侯の「契約」なのですが、より契約の意味が現実的なのが『辺境伯』なのかも。(※なお、実際には国境に領土が無い辺境伯もいた模様)
創作物だとどうなんだろう……。型破りな野性味あるキャラとかに設定されてるんだろうか。
中央貴族とは違って民との距離も近そうですし、情勢に敏感で頭が回る、一筋縄ではいかない、みたいなイメージが出てきます。
この言葉の与える印象って、そんな感じですよね。
で、『侯爵』に話を戻しますと、公爵・伯爵より後に出来ているということから
「伯爵より上だけど公爵よりは下だよね」
というニュアンスなのかなあ、と思ったりしています。
これまた私の勝手なイメージでは、血統が良く「臣下」である『伯爵』とは完全に区別化しないといけないんだけど『公爵』ほど近くはない、王家絶対ではない、という感じですかね。
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③伯爵(Earl/Count)
・爵位の第3位。イギリス貴族では「Earl」、他のヨーロッパ諸国では「Count」。
・古代中国の書物においては七十里四方の領地をもつもの、と記載されている。
・日本の華族においては『臣籍降下した皇族』(※時期によって侯爵だったり伯爵だったりする)『公家で大納言に上った先例がある家』『旧御三卿』『五万石以上の大名家』など。
・イギリスでは一番初めにできた爵位。貴族社会は少数の「Earl(伯爵)」と大多数の「Baron(男爵)」で構成されていたが、「Baron(男爵)」は最初は貴族身分ではなかった。
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うーんと、王族が認めた特別な臣下、という感じですかね。
創作物だと一番耳にするのがコレのような気がします。
公爵と侯爵は音が同じだし使いづらいのかな。あと、これらは臣下というより王族寄りで動かしにくいのかなあ、とも思ったり。
ポジション的に一番自由が利くのが『伯爵』なのかな……。
私の勝手なイメージだと『伯爵』には王族由来と過去に功績を遺した臣下由来があり、何て言うんですかね、中央貴族の中だと成り上がり系ナンバー1みたいな?(合ってんのかな、このイメージは)
あと、著名人が多いらしいです。紅茶のアールグレイの由来となっている「グレイ伯爵」、サンドイッチの由来となっている「サンドウィッチ伯爵」。
ダイアナ妃もスペンサー伯爵家の令嬢です。
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④子爵(Viscount)
・爵位の第4位。「Vis(=副)」「Count(=伯爵)」が由来。
・古代中国の書物においては五十里四方の領地をもつもの、と記載されている。
・日本の華族においては『明治維新前に家を興した旧堂上家(※公卿になれる家柄の総称)』『旧御三卿』『五万石未満の大名家』など。
・イギリスでは一番最後にできた爵位。伯爵の子供や伯爵以上の貴族が従属爵位として持つこともある。
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これは名称としてもあまり聞いたことがない……と思っていたのですが、ブクマ作品を見返したらそうでもなかった。( ̄▽ ̄;)
なお、日本の華族での説明にある『明治維新前に家を興した旧堂上家』ですが、『伯爵』の条件が『大納言に進んだことがある』なので、『明治維新前に家を興しているが大納言に進んだことは無い』という家がこの『子爵』ということになるようです。
創作物だと伯爵より下で男爵より上ということで、伯爵家や男爵家の人が主人公だった場合にワキを固めるキャラとして配置されてるのかな、と思ったりします。
ジャイアン(=伯爵)にすり寄るスネ夫(=子爵)……? これは言い過ぎか。
でもこの言葉から受けるイメージというのは……何と言いますか、中間管理職みたいで立ち振る舞いが難しそう、という感じです。
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⑤男爵(Baron)
・爵位の第5位。語源は「自由民」という意味をもつ「Baro」。
・古代中国の書物においては五十里四方の領地をもつもの、と記載されている。
・日本の華族においては『明治維新後に家を興した者』『明治維新後に大名家から分家した者』『各地の神職のうち特に古い家柄の者』など。
・イギリスでは伯爵の次にできた爵位。ただし、最初は貴族称号ではなく、王から封土を受けた臣下、という意味だった。その後「大バロン」と「小バロン」に分かれ、貴族の爵位としての男爵は「大バロン」に与えられ、「小バロン」は騎士層を表し爵位ではなかった。
・『一代貴族』といって、『家』ではなく『人物』が保有する場合もある。
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『男爵』と言えば『男爵いも』ですよねー。( ̄▽ ̄*)
これは日本の川田男爵が栽培を普及したため名付けられたそう。
創作物だと、貴族社会では一番下ということで下克上ヒロインとして男爵令嬢が当てられたりするのかなー。
この層は血統的には王家とは関係なく、明らかに庶民上がり、という感じですよね。
んー、こうして見ていくと、この五爵の身分差というのは、
公爵>侯爵>>伯爵>子爵>>>男爵
こんな感じかな。あくまで、私の勝手なイメージですけども。
成り立ちからいくと、『男爵』とその上の4つの爵位の間にはどうしても越えられない壁がある、という感じです。
『子爵』って
「いや、『男爵』よりは絶対上だよね。だけど『伯爵』には及ばないよね」
という感じじゃないかと勝手に想像。( ̄▽ ̄;)
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★準男爵(Baronet)
・貴族ではなく一般市民に与えられる称号。爵位ではない。
・Baron(=男爵)より下で、Knight(=士爵)より上。
・「士爵」が世襲制を認められていないのに対し、「準男爵」は世襲制が認められている。
・創設されたきっかけは国の資金稼ぎ。兵士を養う費用を献納した家に「準男爵」の世襲称号を与える、として募集を募った。
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えっ、売り物!? Σ( ̄Д ̄;)
そういや創作物でも『爵位を買って……』みたいな表現は見たことがある気がするけども。
いや、でも、称号は可能でも爵位、つまり五爵でそれは不可能……。
あ、領土を買い取って国王に認められればいいのか。「男爵」ならそれで可能っぽいですね、調べてみた感じだと。
創作物の場合、作者権限でその辺をもうちょっと緩くすればいいことか。自分で国を創ってる訳ですから、国の制度も創ればいい訳で。
~ここからは本当に雑談~
ちなみに、「シーランド公国」という世界最小の国家(自称)が爵位を売りに出しているらしいです。
wikiで該当ページを読んだんですが、クーデターとかいろいろあったみたいだけど、何かよく分からず……。(-_-;)
とりあえず「シーランド公国ホームページ」に行ってみました。
全部英語でビビりつつも「ONLINESHOP」をクリックすると、商品一覧(笑)が出ます。
£(GBP)となってたから、イギリスポンド、かな?
Baron(男爵):£29.99(約4,300円)
Count(伯爵):£199.99(約29,000円)
Duke(公爵):£499.99(約72,000円)
……いやいや、スーパーじゃないんだから「2000円じゃなくて1980円!」みたいな料金設定はどうなんだろう。(-_-;)
しかも成り立ちから考えると『公爵』は売っちゃ駄目なんじゃないかな……。