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ごめんなさい。
―――このラブストーリーの主人公は、きっと俺ではない。
「好きだ。俺、石川さんのこと。」
知ってる。
そんな顔をしてそれから困ったように眉をひそめた。
俺はこの顔を何度も見たことがある。なぜだろう、この展開を俺は知っている。
そう、この困った顔のあと、彼女は言うのだ。
『「ごめんなさい。」』
と。
途端に、高校生のちっぽけな世界がゆがみ始める。
壁には黒い穴がぽつぽつと、段々と大きくなって飲み込んでいく。
それだけではない。真っ青の空が異様な音をたてて暗黒に渦巻いている。
俺は、どうして動揺しないのだろう。
どうしてこうも冷静に実況なんてできたものだろうか。
それも、もう決まり事のようにすらすらと。
「ああ。また、またやり直しだね」
彼女がつぶやいた。
俺ははっとして彼女を見た。
そのころにはもう、俺の視界は歪み、おかしく狂った彼女の顔がぼんやりと映るだけ。
飲み込まれていく。