九十一話
レイヤードパートです。
今回は我らがアイドル結衣ちゃんの登場です。
個人的には一番描きやすいのですがいかがでしょうか?
「えっと、、、これってどういうことなんでしょうか?もしかしてバカにしてます?」
ワタシこと超絶カワイイ結衣ちゃんはバグりそうな頭を抱えて本音をポツリと漏らす。
目の前にはワタシより年上で、ワタシよりスタイルが良くて人気がある、霧島マナさんが笑顔を浮かべている。
「えっと、、バカにしてるって?私、真剣に頼んだよね」
「いや、真剣だというならもうちょっと頼み方とかあるんじゃないですか?」
私は目を細める。
まぁ、単なる嫌がらせなのだけど。
だって、この人が美咲先輩を奪い去っていったせいでレイヤードは今大変なことになっているんだから。
いや、別に〜、美咲先輩が居なくなってファンが減ったとかぁ、苺ちゃんがその穴を埋めようと空回りしっぱなしだとか色々あるけど。。。
センターの美咲先輩が居なくなっただけでみんなモチベーションが宙に浮いてしまった。
まぁ、本当はわかっているんだよね。
道標なんて、人に用意してもらうものじゃなくて自分自身で見つけて定めるものだって。
だから、これからは美咲先輩じゃなくて私が輝くんだ。
‥‥なんて思っていた時期が私にもありました。
結局、私は輝けないし、ただただ自分が凡人だと思い知らされただけだった。
「だから、ほんっとうにお願い。美咲ちゃんとうまく絡み方を教えて欲しいの。」
マナさんが深々と頭を下げる。
いやいやいや、トップアイドルが下っ端になんでそんなに簡単に頭を下げられるのよ。
う〜ん、実を言うとあまり気乗りしなかった。
だから生意気な態度で怒らせて有耶無耶にしようと思っていたのに。
美奈先輩を引き抜かれたこととは関係なしに問題があった。人と人と。アイドルとアイドルいうのは相性があるんだよね。
例えば私、完全無欠な小学生アイドルだけど、だからこそ自分の立ち位置というのはしっかり分かってやっている。
ただ可愛い小学生ならワタシじゃなくてもいい。
でも、可愛くて子生意気で、先輩たちを物怖じせずにイジリ倒した挙句に美味しいとこを全部かっさらっていける小学生は多分ワタシだけだ。
つまりはワタシが輝くためにはイジられても気にしない、根に持たない先輩が必要なんだよね。
だから、ワタシと美咲先輩はかなり相性がよかった。まぁ、あくまでワタシから見た場合だけど。
で、、マナ先輩だけど、美咲先輩との相性は良くない。
2人ともトップだというのは理由の一つ。
それよりも問題なのは美咲先輩だ。
マイペースモンスターである美咲先輩は会話のキャッチボールが下手すぎるんだよね。
で、、マナ先輩は美咲先輩を扱えるほどのアドリブ力は無いから。まぁ、簡単に言うと詰んでる。
「う〜ん、無理ですね。先輩じゃあアドリブの天才、結衣ちゃんの真似なんてできないですよね。」
ワタシは煽り耐性が低そうなマナ先輩を煽る。
「うん、能力的にもキャラ的にも難しいね。」
しかし、先輩は少し首を傾げた後、特に感情をこめずにそう答えた。
仮にもトップアイドルの発言とは思えないくらいあっさりとした白旗宣言で私は肩透かしを喰らう。後は‥
「じゃあ、諦めて下さい。」
ピシャリと言ったら諦めると思っていたのだけど、マナ先輩は悪代官のような悪そうな笑みを浮かべた。
それはトップアイドルが浮かべていい表情じゃない。
「じゃあ、もし解決してくれたらぁ、ラジオ出演とかどう?もちろん、準レギュラー枠で。それから生き残れるかは君次第だけど」
マナ先輩はなんと煽り返してきた。挑発的な笑みはきっとワザとなのだろう。
それに釣られて私の口角は自然と上がっていた。
「で、どうするつもり?」
マナ先輩はまるで物心ついたときから仲のよかった幼馴染のように近い距離感でワタシを見つめる。
これが素だからスタッフさん達にも好かれるのは納得かな。なんで、こんなに皆んなに愛されている人を助けなくいゃいけないんだろ?
とはいえ、引き受けたからには本気を出すしかない。ワタシは目を瞑り心の中で呟く『結衣ちゃん可愛い。結衣ちゃん天才。結衣ちゃん最強。』
ワタシはパチンと手を叩くと演技を始めた。
「えー、今回の曲はどんな曲なのかな?」
ワタシは少しスローテーンポで年配の男性風の声を紡ぎ出した。そして休む暇もなく二の句を続ける。
「うん‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。」
コミュ症な愛すべき美咲先輩を意識する。
そしてために溜めて、
「キュルッと奥深く、レレンなピュー‥‥かな‥‥です。」
意味不明なコメントを口にする。
「いやいやいや、見てたの?」
驚き100%の声が割って入った。
もちろんマナ先輩だ。
【見てたの?】というのは前回のミュージックスタック(音楽番組)の事だろう。美咲先輩とマナ先輩が出ていたらしいけどトークはハッキリ言ってグダグダだったらしい。
「いえ、人伝てに聞いただけですよ。」
「嘘でしょ?完コピじゃない?」
「まぁ、大体、美咲先輩が何をやらかすかなんて大体想像がつきますから」
まるで青汁を飲み干したかのような苦々しい気持ちが沸いてくる。本当に美咲さんと葵さんは無秩序で無軌道で、トークパートの舵を取る私達は毎回振り回されないように、でも暴れ馬を抑え込むカウボーイのように勇敢に立ち向かっている。お陰で終わった後はヘトヘト。
その割には評価されないんだよね。
たぶん、ワタシなんてアイドルには向いていなくて、ラジオとかバラエティ番組向きなんだろうなぁ。
「で、マナ先輩は美咲先輩を下手にフォローしちゃって失敗。したんでしたっけ?」
「しょうがないでしょ。あんな女の子初めてなんだから。」
いや、まぁ、美咲先輩はマイペースモンスターだからある意味初見殺し的なものがあるけど。
「まぁ、開き直るのは構いませんけどオンエアーを見たファンの感想は知ってるんですよね?」
そう、『2人のぎこちなさが限界突破』だとか『実は仲が悪い?』だとか『解散まであと5日』だとか散々ツブヤイターで呟かれていた。
まぁ、好意的な呟きもあって『今の彼女と付き合いたての時のオレ、こんなんだったわ』って意見もあった。だけど、
リプライ欄に『お前、生まれてこのかた彼女いたことないじゃん』とか書かれていたから完全にネタ扱いされてたけど、、
「知ってる。だから相談してるんじゃない?」
両手を空に向けて降参のポーズをとる。
トップアイドルのくせに実は親しみやすいとか、、反則でしょ?
「わかりました。とっておきを教えましょう。まぁ、前のグループではマナ先輩もやってたことなんですけどね。」
ワタシは内緒話をするかのように先輩の耳に口を寄せて解決策を口にする。
もちろん、見返りのラジオ出演では主役を喰ってやるつもつもりだ。だから不敵な笑みを抑えることはしなかった。




