表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

95/105

八十九話

昨日は酷い目に遭った。

あれって霧島マナだよな?


弥生の為にサインをもらってくれば良かったな。


いや、仕事中にそんな恥知らずな事は出来ないけど、下着姿の彼女なら未だに思い出せてしまうのだから俺ってばどうしようもなく注意力散漫だったのだろう。


俺が煩悩にまみれたキャラだからってことは決してない。と信じたい。



‥‥‥俺が現実逃避をしているのは、起きた俺に可愛い女の子が馬乗りになっていたからだ。


「凛花?なにしてんの?」

凛花はちょうどマクラを持って振り上げている。


「あれ?起こす前に起きた?」

振り上げだマクラを俺の顔に向けて振り下ろす直前に止めた彼女は笑顔を浮かべる。



「な、なんの用だ?」

俺は動揺して吃ってしまう。


幼馴染が毎朝起こしてくれるなんて、ラノベか漫画しかない都市伝説だろうし、マクラを振り上げていた凛花の形相は恐ろしかったし。


「しぃ君。おはよっ。」

それはかつて凛花が俺を呼ぶときに使っていた愛称だ。



「あれ?もしかして、覚えてた?それとも思い出したのか?」


もちろん、俺は驚きの声をあげる。

しかし、だったらなぜあの時に答えてはくれなかったのだろうか?


「思い出したんだよ。ふふふっ、、ウソ。本当は覚えてたよ。あの時はなんだか懐かしくなっちゃってぱっと言葉が出てこなかったんだ。それに、その後に聞かれたことを答えるのは恥ずかしかったというかなんというか。ね?」


凛花は苦笑いを浮かべる。

その後に聞かれた質問??


あっ、、、。


『それじゃ、俺がボッチの凛花を誘った時、凛花が何を言ったか覚えてるか?』ってやつか?


答えは『孤高の戦士は群れないものよ』だもんな。そう言えばこの年になると口にするのも憚られるセリフだよな。


「ほら、、乙女の黒歴‥‥秘密を掘り起こすなんて、良くないよ」

凛花は何故だか可愛くウィンクした。


というかそれを言いにわざわざ来たのか?


前回聞いた時に変な空気を感じ取ったのか、わざわざ朝早くから誤解を解きに来てくれたのか?


昔の空気が読めなかった以前の彼女とは段違いに成長しているよな。ぱっと見や、立ち振る舞いも以前とは比べ物にならないとは思っていたが。


それにしても、可愛いよな。

こんな娘が彼女だったら‥‥いや、、凛花は昔とは違い誰にでも打ち解けるし、誰にでも優しいからな。



「ん?どうしたの?」

凛花は無防備に俺を覗き込む。


それで俺はドキドキして目の奥を覗き込む。


「いや、、何でもない。」

しかし、彼女の瞳に何の熱も感じないのは俺の気のせいなのだろうか?


経験値の低い俺にはなにもわからなかった。






無言で玄関のドアを開けると一目散に2階の奥の部屋に向かう。


ドアには『のっくぷりぃず』と可愛くデコレーションされた文字が貼り付けされていた。


「ただいま。言われた通りに仲直りしてきたよ。これでいいんでしょ。」


私はあの娘の部屋をノックしてからドア越しに話しかける。


沈黙の精霊がその場を支配している。そう言われても信じられるほどの静寂が流れた後、ボソリとつぶやき声が微かに聞こえた。


「ん?お帰り。めろめろにしてきた?」

寝起きなのか?

声色が乾いている。

ちなみに今は夕方なのだけど。



「そうだね。上目遣いを使ったから、きっと今もドキドキしているはずだよ。ところでさぁ、今日は一緒にご飯を「ありがと、お疲れ様。おやすみなさい。」


彼女は私の話を打ち切る。

これからが本題だったのに。

一体、私は何のためにあんな男にベタベタしたのだろうか。


失敗だったなぁ。


天の岩戸はまだまだ開きそうにない。

目尻に溜まりそうな感情をグッと堪えて空を見る。


夕暮れのそらは泣きたくなるくらい綺麗だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ