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八十八話

ノックの後に入ってきた女の子は整った容姿に特徴的な金髪銀眼。


いや、あれはカラーコンタクトかな?


どちらにしても、街中では中々見かけない美少女だよね。

やっぱり業界の人かな?


「あの、、、、、お受け取りお願いします」


美少女は視線を私とミサミサちゃんの間を交互に行ったり来たりさせた挙句、バックから取り出した何かを私に手渡した。


手渡された何かは、、、樹脂製の容器に入っていたので、中を確認するとパンケーキだった。


もしかして、


「ミサミサちゃん、もしかして配達を頼んだの?」

しかし、向けた視線は宙を捉える。


あれ?

ミサミサちゃんは??


あっ、部屋の隅に体を丸めて座り込んでいる。

えっと、、、何してるの?


「あのミサキ様でよろしかったですよね?」

配達員の美少女は縋るような目で私を見つめる。

まぁ、気持ちは分かるよね。


あんな状態のミサミサちゃんに受け取りのサインを貰うのは相当に骨が折れそう。


「では、受け取りのサインをお願いします。」

ミサミサちゃんの返事を待たずに美少女は私にペンを渡したけど、、私じゃないんだよね、頼んだの。


「ごめん、コッチが、受け取り人だから。」

私がやや引き攣った笑みを浮かべる。


「あぁ〜、そうですか?」

言いながら私の前を通り過ぎ、彼女はしゃがみこんでミサミサちゃんと目線を合わせた。


その一連の動作は本当に自然で、彼女の体幹がかなり鍛えられている事がうかがえる。私とダンスバトルしてもいい勝負になるんじゃないかな?


「それじゃ、ここにサインを宜しくお願いします。」


この状態で満面の営業スマイルを浮かべられる根性はなかなかのものだとは思うけど、たぶんミサミサちゃんは一筋縄では行かないと思う。


やはり、ミサミサちゃんは微動だにしなかった。

まぁ、予想通り過ぎてつまらない位だよ。

だって、この娘人見知り激しいらしいし。


しかし、美少女がヒソヒソと耳打ちをした途端、ミサミサちゃんはサインを始めた。


えっ??

なんで?

なにしたの?


そして、気づいた時には美少女は去っていった。


パンケーキ??

もちろん、すっごく美味しくいただいたよ。


しかし、美少女がミサミサに何を耳打ちしたかは結局、ミサミサちゃん本人にも教えては貰えなかった。





そして、またある日、、ミサミサちゃんとの歌のレッスンの後。


またパンケーキをデリバリーする事になった。

ただ、ノックの後に入って来たのはまた別の女の子だったよ。


見た目は前の娘に負けず劣らずだけど、今回の娘は前の娘と違いなんだか大人しい感じを受ける。


違うのはそれだけではなかった。


ミサミサの態度が前とは全然違う。


「橋本君。待ってたよお。」

野生動物のようなしなやかな身のこなしで刹那の間に女の子と距離をゼロにする。


女の子同士とはいえ、近過ぎないかな?

もしかして百合?


「あの、、美咲さま。ご贔屓にしていただけるのは本当にありがたいのですが人との距離って、100かゼロかじゃないんですよ。」


じゃないみたいで、女の子はあくまでもビジネスライク‥‥というか、友人の心配をする様な親身な表情を浮かべた。


「あの?ミサミサちゃんとお知り合いでしょうか?」


私が疑問を口にすると。

女の子は唇に人差し指を当てて、ドキリとする様な艶めかしい笑みを浮かべる。


あぁっ、、詮索するなってこと?


そこにさっきの大人しげな娘はいない。

小悪魔みたいな女の子。


その恐ろしいほどの二面性のギャップ萌えで普段は男の子を手玉に取っているに違いない。



「それでは今宵のデザート。満足行くまでにごゆるりと堪能くださいませ。」


そして、女の子は瞬く間にスイーツをテーブルに広げるのだった。





「ふぅ〜、なんだか暑くなってきちゃったなぁ。」

パンケーキを食べている途中、私は着ていたTシャツを脱ぐ。


もちろん、スポーツブラは着けていたのに、女の子はサッと横を向く。よく見てみると、耳まで真っ赤になっていた。


どれだけウブなのよ?


隣に居るミサミサはさすがアイドルグールプの一員だったこともあってわたしの様子を気にした素振りも見せないのに。


「いや、、別にいやらしくないでしょ?健康的じゃないかな?」


私が微笑みかけると、女の子は


「あの?痴女さんですか?生まれて初めて会いました」

なんて事を言う。



「いやいや、これくらいの露出普通でしょ?さすがにファンの前ではそんな格好しないけど女の子の前なら‥‥あれ?」


なぜだか『女の子』と言う単語の直後に彼女はビクッと肩を震わせる。


「‥‥勘違いなさっている様ですが、私はオトコです。」

目を瞑ってこちらを振り返った彼女の唇は震えていた。それにしても、耳だけじゃなく顔も真っ赤だな。


なんだか可愛い。


あれ??

今、何か言った?


‥‥‥おとこ??


え〜〜〜〜〜〜っ???


嘘でしょ?


「うん、そうだね。」

しかし、パンケーキを食べ終わったミサミサちゃんががあっさり首肯する。


「あれ?あ〜っ、、いわゆる男の娘ってこと?」 

そう言えばそういうジャンルがあるって聞いた事がある。


「いえ、、、潜入‥の為に仕方なく。ほら、ここセキュリティが厳しいので。特に男にとっては」


それにしても、耳まで真っ赤にして目をギュッと瞑って、おまけにプルプル震える男の娘はなんだか嗜虐心をそそられてしまう。


「ねぇ、、私がここで大きな声を上げたらどうなるかしらね。」


今度は私が目の前に近づいて上目遣いで見上げる。



「えっ?嘘ですよね?」

男の娘は青い顔をして思わず目を開ける。

そして、今度は真っ赤な顔をする。


青くなったり、赤くなったり、信号みたいに大忙しで面白いね。


「あはっ、、、ヤバイ」

思わずテンションが上がって声を出すと、男の娘はビクッとする。


「ご、ごめんなさい。これは仕事なんです。やましい気持ちなんてこれっぽっちも御座いません」


言いながら、土下座しようとしたので肩を掴むとビクッとした後、プルプルと震える。


なに?

この可愛い生き物?


可愛さに釣られてからかい続けていると、ミサミサが間に割って入った。


「なになに、嫉妬?う〜ん、ミサミサ可愛いんだから。」


結局、マネージャーが呼びに来るまで、私は2人をからかい続げてしまうのだった。


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