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七話


翌朝


「お兄ちゃん。もう、朝だよ。起きてぇ〜っ。

起きないと〜っ、ホッペにチューしちゃうんだからね。」

俺は目覚まし時計の音で目を覚ました。



ベットから出ると、俺の部屋のドアの隙間から弥生が顔をのぞかせている。相変わらず天使のように可愛い。



「お兄。いい加減、その目覚まし時計使うのやめてくれない?何故だか私が恥ずかしいんだけど。」

しかし、弥生はいつもどおり不機嫌そうだ。


「そう、天使な弥生は俺に対しては優しくない。だから、優しく起こしてくれる彼女(目覚まし時計)に毎朝優しく起こしてもらっている。」



「お兄、、何キモイこと言ってるの?」

弥生は呆れた声色を隠そうともしない。




俺の本音が声に出ていたらしい。

いや、ワザとだ。

俺には優しくない弥生への当てつけだからな。



弥生がもの凄く蔑んだ目で見ているが、残念ながら俺はまだそれが快感になってしまうほど上級者ではないのだ。



「あのさ、昨日は『お兄、すごい。』『ハジメテ。』『興奮した』とか言うから、とうとうお兄ちゃんにデレたのかと思ったのに」

そう、昨日は弥生は俺をべた褒めだったのに。



「お兄‥‥言葉のチョイス、、ワザとでしょ?本当にお兄ってバカ。凛花ちゃんに捨てられないようにしっかりしてよね。」

言いながらバナナを投げてよこしてくる。



俺の頭脳は猿かゴリラ並みだとでも言いたいのか?

まぁ、貴重な朝飯なんで、キャッチして後でスタッフ‥‥じゃなくて俺が美味しくいただくことにしよう。



「まぁ、博愛主義者の凛花様なら、別に愛想を尽かしたりしないんじゃないか?」

そう。たまに俺にだけ冷たいが、それでもお人好しの凛花に嫌われる方が難しいんじゃないかと思っている。



「‥‥お兄ってホントにダメダメだよね。」

しかし弥生は深いため息を吐いた。


あれ、もしかして知らないうちに凛花にすら嫌われる言動をしてしまったのだろうか?



「弥生にそう言われるのは悲しいな。お兄ちゃん家族の為にバイトも頑張ってるだろ?」


俺は誰も褒めてくれないから自画自賛することにした。悲しくなんかないぞ。

ただ、ちょっと涙が止まらないだけ。



「‥‥ほっぺにキスマークをつけてくるのがお兄が言う仕事なの?」

しかし、弥生の疑うような、蔑むような眼差しがますます目にしみる。



「いや、あれは誤解だ。俺は仕事は本当に真面目にしているって。」


『俺にはお前だけなんだ』

なんて浮気男のキラーワードが頭に浮かんだが、今使うと間違いなく詰むだろう。



「そんなこと言って、昨日のチケットも女の人にもらったんでしょ?信じらんないっ。」


イヤイヤイヤイヤイヤ‥‥昨日はそのチケットで、散々楽しんだ奴が言うセリフではない。



正直、信じられないのはこっちのほうだ。



「まぁ、確かに女のお客様に貰ったんだけど。たぶん仕事で行けなくなって処分に困ってたんだろ?それより、早く生地をかき混ぜてくれ。早くしないと凛花が来ちゃうだろ?」


そう。凛花とのおやつ用に先にホットケーキを、作っておくのだ。



まぁ、勉強を見てくれる見返りには安すぎるかもしれないが、凛花は毎回喜んで食べてくれる。


ウチの懐具合を考慮して愛想笑いしてくれているのかもしれないけど、それひっくるめて、彼女の優しさを俺も弥生も信じているのだ。



「お兄と違って手を動かしながら喋ってるよ。ホントになんでそんなに女の子にだらしがないの?」

呆れたような顔で今にもため息をつきそうだ。



「いや、俺は女の子とイケナイことなんてした事ないからな。だらしなくなんてないだろうが。」


そう、俺はモテないから、浮気なんてしたくてもその前に恋人1人作れないからな。



「視線」

しかし、弥生にそう凄まれて俺が無意識にどこを見ていたか気づいた。



弥生の履いているショートパンツから伸びるスラッとした生足を見ていたのだ。



「いや、誤解だ。」

いや、最早誤解でもなんでもないのだが。

無意識だったのでしょうがない‥‥のだろうか?


「ホントに気づいてないの?凛花ちゃんの場合、お兄って胸ばっかりみてること。」


な、な、何だと?

ウソだろ?



「いや、、だって、、、」



「いや、、、だって?って何よ?」


天使な妹の顔が10センチくらいまで間近に近づいてくる。そんな状況で動揺した俺を誰が責められよう?



俺は思わず口走ってしまった。



「だって、、弥生の胸をみても寂しい気持ちに「もぅ〜っ、おにいなんて死んじゃえ。」


弥生は逆上したのか鈍器のようなものを振り上げて俺の頭に容赦なく振り下ろした。



しかし、心配する事はない。


弥生は後日、こう供述するだろう。

『殺意はなかった』と



何しろ俺は無傷だったのだ。



ただ、俺の頭に当たった瞬間、鈍器のようなものは『ピコッ』と可愛い音を奏でた。



「ちょっと弥生、俺が悪かったから一旦落ち着け。」



ピンポーン‥と、インターフォンの音が鳴り響いた。ナイスタイミングだ。


どうやら凛花が来たようだ。


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