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八十話

「はぁ、はぁ、、はぁ」

俺は身体が上げる悲鳴を全力でシカトしながら全力で駆けていく。



気付かなかったが、楓さまの家に長居していたようでかなり時間が押していたのだ。それに、このまま待ち合わせ場所に向かう訳にはいかない。


だって、まだ女装したままだから‥


駅前のコインロッカーに泣く泣くコインを入れて着替えを取り出すとトイレに向かう。


そして、男子トイレに入ると、サラリーマン風の男性がギョッとした目で俺を見た。


あっ、もしかして、女だと思われているのか?


だからと言って女子トイレに侵入するわけにもいかないんだけど。


しょうがなく、男性の耳元で一オクターブ下げて男男しい声を出すと、なぜか警察を呼ばれてしまった‥‥




「待て〜っ、逮捕するぅ〜。」


なんの罪で逮捕するつもりなのかは本当に気になるところだけど、今日のスケジュール的にも捕まったら間違いなく刹那とのデートがなくなってしまう。


それに、『本当に警官なのか?』と思うほど警棒を振り回しながら迫ってくる警官は控えめに言ってもバーサーカーにしか見えない。



やめて、くれ、、俺は、まだ、、死、、に、た、、く、、は、、。


いや、思考停止している場合じゃない。

この状況から生還するためには冷徹な頭脳が必要だ。


まずは俺とバーサーカーの能力を冷静に分析して、、、よしっ、方針は決まった。



俺は雑居ビルの階段を全力で駆け上った。

エレベーターがないところまで計算通りだ。


そして屋上まで登り、追い詰められた。。。


階段塔からノソリと姿を現したバーサーカーはドロリと濁らせた目をこちらに向ける。


バーサーカーのコーッ、コーッと気味の悪い呼吸音と、ブンブンっと警棒を振り回す音が俺の心を掻き乱す。



しかし、もちろんこれは戦術のうちだ。



俺はそのまま隣のビルへジャンプする。その更に隣のビルとの隙間は手足を伸ばせば届くくらい近いから、リズミカルに手足を動かせばそのまま降りられるだろう。


もちろん、手足をそのまま滑らせれば、手が擦りむけてすごい事になるだろう。


そして、足だけで無理矢理滑り降りようとしたらバランスを崩して真っ逆さまに落ちてしまうかもしれない。


一方で、バーサーカーの超人的な肉体は明らかに重そうで、こちらの倍の体重はありそうで、キレイに降りるのは無理だろう。


そう結論づけて、俺は慌てず騒がずに手足を動かした。それは最善の行動だった筈だ。


しかし、数瞬後には俺の考えが甘かったことに気付かされてしまう。



不意に全身に寒気が走った。



寒気の原因は真下にいたのだった。

サラリーマン風の若いお兄さんが下から覗いている。


そう、恐ろしい事に俺のスカートの中をだ。



俺は3部丈のスパッツをはいているので、中身を見られる必要がないのだが、、、正直言って吐き気がする程気持ちが悪い。


世の中の女子って普段からこんな気持ちで過ごしているのだろうか?


しかも、よく見ると、何故か新聞を開いて読んでるフリをしながらだ。いやいや、こんな路地裏で新聞を読むってどんな状況よ。


どうしよう、あんな奴の前に降り立つのは嫌だ。


目前にはバーサーカー、眼下には新聞覗き野郎。

究極の選択を迫られている。


ゴクリ。


自身が唾を飲む声がやけに大きく聞こえた。


いやいやいや、考えるまでもないな。


俺はリズミカルに降下し、、、


「グギャァ」


新聞野郎の顔面に着地した。

そう、新聞野郎の前に降り立つのが嫌なら、奴の顔面に着地すれば良いのだ。


いわばコロンブスの卵的な発想。


自分の機転に鳥肌が立ちそうなほど感動するが、俺の考えが甘かったとしか思えない展開が続いていく。



「パシャ」

カメラの音がして反射的にそちらの方を向くと、またも別の新聞野郎が居た。


やはり、新聞を読むふりはデフォなのか?

それにしても、新聞が逆さまなのだが。


いや、害がないなら放っておくしかない。

俺は0.3秒で、切り替えて逃走‥をはかるには遅すぎた。


目の前にバーサーカーが立っている。


よく見ると手の皮がひどく擦りむけていた。

無理矢理滑り降りてきたのか?


いや、冷静に観察している余裕はないな。


「あっ」

俺は彼の背後に知り合いでも来たかのように視線を向けて、表情を作る。もちろん、この裏路地に居るのは女装した俺とバーサーカーと新聞野郎達だけだ。


おいおい、よく考えて見ると凄いメンツだが、まぁ、この際そのことは置いておいて、バーサーカーは俺の視線に惑わされて大通り側へ振り返った。


今だ。


俺は素早くジャンプして降りてきたビルの隙間を逆に登っていく。


もちろん、すぐにバーサーカーが気付いて警棒を振り回すがもう遅い。


それに彼の立派過ぎる筋肉では降りることは出来ても登ることは出来なかったようで、俺はそのままビルの屋上まで登りきり、逃げおおせることが出来た。


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