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七十九話

はぁ〜っ、、まさかこんなことになるなんて。


金曜日の夜、、、俺は頭を抱えていた。


土曜日の午前中に楓さまへの配達が一件。

昼前から昼過ぎまで、刹那さんとデート??みたいなもの。


そして、そのあとにお嬢様とお茶会をすることになっている。しかも、その後にスクールへ行く事になっているのだから驚きだ。


普段なら予定は大抵、配達のみなのだが、今週に限って凄いことになっている。


それに、どうせなら美奈さまへの配達後にお茶会なら女装する手間が省けたのに。いや、、まぁ、本当は仕事以外で女装なんてしたくないんだが。


いや、まぁ、お嬢様には凛花のストーカー疑惑の時の恩があるからな。恩は返さざるを得ない。


とにかく、タイムスケジュールを作っておこう。

なんだか仕事みたいだが、まぁ、仕方がない。


特に注意したいのが刹那さんとのデートだ。

ウキウキするのはこれくらいだが、その後のお茶会に遅れるわけにもいかない。


という事は、『デートの最中に自然とお茶会が開かれる場所近くまでたどり着いておく』必要がある。


なんだかスタンプラリーをより効率よく回るのに似ているのかもしれない。


俺はタイムスケジュールを作ってそのまま眠りについた。





楓さまが住んでいる屋敷を囲う外溝がいつもより高く聳え立っていた。


いや、、そんなのは間違いなく錯覚なのだけれども、そんな幻覚が目に映るほど俺の気持ちは萎えていたのだった。


「例の抜け道が使えないなんてな。」

それに正直に言うと焦っていた。


今日のスケジュール的に無駄な労力はつかいたくなかったし‥‥服装が‥‥


そう。今日の服装ではハンググライダーは使えないんだよな。


仕方がない‥‥色仕掛けしかないのか。。。


ぶつぶつ呟きながら歩いている俺は控えめに言っても不審者だろう。


相変わらずだだっ広い敷地の周りをぐる〜っと回って、正門にたどり着く。そして、その屋敷に似つかわしい煌びやかな装飾が施された木造の門。


その横にある、妙に現代的なインターフォンをそっと撫でるように押してみる。


電子音が聞こえた後に、野太い声が聞こえた。

残念ながらハズレだ。

どうみても楓さまではない。


「楓さんですか?分かりました。今、参ります。」


野太い声に似合わない、慎重そうな、丁寧そうな口調がなんとなく底知れなさを感じさせる。


もしかして、この屋敷の主だろうか?

ゴクリと唾を飲み込むがその唾の量さえも足りていない。そうか、俺、緊張しているんだな。



このまま戦略的撤退をした後、やはりハンググライダーで乗り込むのが正解かもしれない。


よしっ、多少恥ずかしさは残るが、背に腹はかえられない。


しかし、俺の決断はほんの少しだけ遅かったようで、目の前の大きな門が開いていく。


そして、相手の顔が見えて俺は安堵した。

何しろ門の前に居たのは楓さまだったのだ。



しかし、俺は忘れていたのだ。


「橋本さん‥‥すっごく可愛いです。」


自分が女装していたことを。





「橋本さん‥‥すっごく可愛いです。」

瞳に星マークを浮かべて頬を上気させる楓さまは初めて見たが、いつもの可憐さはなりを顰めて、なんだか楓さまらしくなく、普通の女の子みたいだ。


「いえいえ、、、ところで楓さま。今日はパンケーキとマリトッツォのセットをお届けに参りました。ここで召し上がりますか?それともお部屋に行かれますか?」



楓さまはボォーッとしていたかと思うとクルリと表情を変えて微笑む。



部屋の中に入るといつものように最短で準備に取り掛かったが、その俺を楓さまは食い入るように見つめている。そこにかつての控えめな楓さまは居なかった。


「あの?この服装のことなら気になさらないでください。AIが今回の任務に必要だと判断したから仕方なく」


俺が言い訳を重ねると、楓さまはニッコリと笑って恐ろしい事を口にした。


「あっ、そうですよ。服装は私がリクエストしたんです。やっぱり聞いた通り可愛いですよね。」


「?????どういうこと?????」

「み〜ちゃんが、教えてくれたんです。」


少し頬を染めて答える楓さまは、なんだか、み〜ちゃんに惚れているみたいだった。



「いやいやいや、み〜ちゃんって誰よ?」

というか俺のヤバめの個人情報‥‥どこで流出してるんだよ?


「はいっ、私の‥‥大切な、、お友達です。」


彼女の満面の笑みで、俺は何も言えなくなってしまった。


それでも諦めず、「最後にみぃちゃんって誰よ?ですか?」と聞いてみると、楓さまから可愛い答えが返ってきた。


「ひ、、み、、つ」


そう言った後の彼女の柔らかい笑みにまどわされて、結局俺の個人情報流出事件は迷宮入りに終わった。

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