七十六話
昨晩23時過ぎのこと。
「お嬢様。あっ、、やっと目を‥‥本当にごめんなさい。まさか気絶してしまうなんて。」
真っ赤に目を腫らした水面が思いっきり抱きついてくる。
ん?
あれ?
何があったんだっけ?
ウチは記憶の糸を丁寧に手繰り寄せる。
え〜っと、、、
今日はハッシーと一緒にお出かけしたんよ。
で〜っ、、買い物して、、おばけ屋敷行って。
‥‥あっ??
「水面〜っ、、メイク‥‥なんてことしてくれはるんよぉ?」
私は思わず大声を出してしまった。
そう、ウチはゾンビ姿の自分を見て気絶してしまったんよぉ。というか、あの姿でハッシーとデートしてたってこと‥‥やんなぁ。
「ごめんなさい、お嬢様。まさかこんな事になるなんて。」
水面が抱きついた腕を緩めた。
「うん。でも、なんでこんな事するん、水面ってもしかしてウチのこと嫌いなん?」
もしかして、普段水面に嫌な思いをさせてたんかなぁ?それで恨まれてた?
「ち、違いますよ。ほら、言ってたじゃないですか?見た目だけで判断されるのはイヤって。お嬢様の外見だけを見るんじやなくて中身を見て欲しかったんです。」
また、水面が抱きしめる腕に力を込めた。
正直言ってちょっと苦しい。
「だからって、なんでゾンビ‥正直言って意味がわからへんねんけど。」
一番わからないのはハッシーなんよ。
だって、待ち合わせ場所にいきなりゾンビが現れて、それが待ち合わせ相手のウチなんて普通思わはれへんよ。
ウチがハッシーの立場ならどうしたんかなぁ?
でも、そんな外見でも、彼は‥‥「友達」って認めてくれはったんよなぁ。
あれ?
そう言えば、ウチ、自分がゾンビなんて知らへんから変なこといっぱい言ってた‥‥
「あれ?褒めてくれへんの?」
「あっ、そうなんやぁ。実は今日は水面にメイクしてもらったからいつもとはちょっと違うかもしれへんよぉ。ほら、目が大きく見えるようにアイラインに工夫してるでしょ?」
「ふふふっ、もしかして照れてはるん?可愛いわぁ」
「あ〜っ、、まぁ、、、いつものことだから。もう、あんまり気にした事ないわぁ。」
これは確か人に見られる事の話だったような。
どおりで、ハッシーが少し悲しそうな顔をするわけだ。
「フフフッ、最近のお化け屋敷はお化けが悲鳴をあげるんやなぁ。」
まぁ、お化け屋敷に客としてゾンビは来ないよね。店員さん脅かしてごめんなさい。
「だったら死んだフリするわぁ。」
‥‥ゾンビなのに何言ってんの‥‥
というかそれでも普通に接してくれるって、ハッシーってめっちゃ良い人やったんやなぁ。
やっぱりウチの人を見る目は確かやった。
でも、これはハッシーを騙してたってことになるんよね。彼は友達って言ってくれたのに。
だったら、早く正直に話さなきゃ。
私は決意を込めて学校に向かった。
そして、昼休み、私はスッピンでハッシーの目の前に立っていた。
「お〜い、眞姫那ぁ〜っ。制服姿、見せてくれるっていってなかった?早く降りてこいよ。」
しかし、ハッシーはなぜか階段塔の上に向かって声をかけている。目の前に居るのに全然目線が合わへんねんよ。
「えっ?」
あれ?
ウチのことまだ気付いてないのん?
「フフフッ、ほんまに気づいてはらへんのん?ウチやよ。ウチ。」
言いながらハッシーの顔を覗き込む。
ちょっとあざとかったかもしれへんけど。
「眞姫那‥‥なの、、か?」
そこで、ようやくハッシーが私が私だと気付いた。
「そうやよ。っていうか、なんで遠ざかるんよ?昨日のゾンビ姿の方が好みやったん?」
言いながら瞬きした一瞬でハッシーの姿が消えていた。まるで魔法みたい。
「あれ?脱がせるためのファスナーがない。」
そして、背後からハッシーの声が聞こえたので振り返る。
えっ?
ウチを脱がせるん?
まぁ、制服は被りセーラーでファスナーも横だから実際脱がせたりはできひん。
あっ、スカートももちろん背後にファスナーなんてないから安全なんやけど。
「なんで、脱がせるんよ?ウチら友達やんなぁ?それとも、友達ってそういう事するのが普通なの?」
『裸のつきあい』なんて言葉もあるくらいだしもしかして、ウチが知らないだけなのかも?
「いや、ほら、友達ならちゃんと見て話をしたいだろ。そうじゃないと相手が何考えてるかわかりにくいし。」
‥‥?
え〜と、裸を見たほうが相手の考えてることわかるの?友達ってそういうもの?
やっぱり裸の付き合い??‥‥なの?
でも、、ウチとちがってハッシーはお友だちおるんよなぁ。ということはウチが間違ってる?
「‥ちょっとびっくりしたけど、わかったわぁ。じゃあ脱ぐね。」
脇のファスナーを上にあげて、胸元のボタンを外す。そして、一気にセーラ服を捲り上げて首から抜いた。
「いやいやいやいや、ちょっと待て。誰が服を脱げと‥‥いや、言ったか?あれ?着ぐるみじゃないのか?氷結姫様、、なぜあなたから眞姫那の声なんてするんですか?というか制服を着てください。」
ハッシーは耳まで真っ赤で、何か間違えたらしきことだけは分かるんやけど、制服の下はキャミソールだし、そこまで恥ずかしがることはな‥‥。
「あっ?」
キャミまで一気に脱いでいた私は上半身はブラのみだということに今更気付いてしゃがみこむ。
すると、私の視界が暗くなった。
視界を暗くしたのは黒い布‥‥頭からかけられたハッシーの学ランだった
「あっ、ありがと。」
なんだかますます照れ臭くなってきて頰が沸騰してきたけど、照れる必要は全くなかったみたい。
だって、ハッシーは階段塔の扉を開けて出て行かはったんよ。別に半裸を見せたからって、お金を取ったりせぇへんのに。
結局、3分後に戻ってきたハッシーはいきなり土下座を始めたから、彼を立たせるのにそこから5分も時間を費やすことになった。
「で、なんで、ウチを脱がせようとしたん?」
「いや、眞姫那が氷結姫の中の人かと思って‥まぁ、自分でも何言ってるかよく分からんけど」
ハッシーは混乱している。
『ハッシーはじゅもんを となえようとした! しまった! どわすれしていて となえられない。』
なんてことにはならないけど、どうしよう?
えっと、まずは謝って‥‥説明すればわかってもらえるんかなぁ。あっ、、そうだ。
さっきまでのハッシーと同じように土下座をする。
と、同時に階段塔の扉がギィと音を立てて開いた。
「もう、休憩時間終わるぞ、早く教室に‥‥ってなに女子に土下座させてるんだ?そこの君、学年は?名前は?もしかして、イジメか?」
そして、入ってきた体育教師にハッシーは連れていかれてしまった。
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