六.五話
「ミサミサちゃん。今日はまた一段と圧巻のパフォーマンスだったね。」
控え室に帰ると早速ユッキーさんが声をかけてくれた。
本当にユッキーさんは私達の細かな変化も気にかけてくれて、本当にお姉さん通り越してお母さんって感じがする。
本人に言ったら「私まだそんなトシじゃないからね?」なんて怒られてしまったけど‥‥
私達レイヤードのメンバーは本当にユッキーさんには感謝してもしきれないほどお世話になっていて、頭が上がりません。
だから、いつもならお礼の言葉を返すのだけど、今日の私はそんな余裕すら全てサッパリなくなっていた。
だって、プライベートの橋本君と会うの初めてで、、さっきから心臓が自分勝手にドクンドクンと跳ねて落ち着かない。
ちゃんと警備の人にも話を通してあるから、今日は正面からちゃんと入れるし、問題無いはず。
何話したらいいのかな?
あっ、そういえば‥私、、、汗くさいかも。
シャワー‥なら間に合うよね。、
「ミサミサちゃんもヤッパリ今日のライブ手応えあったんだ?そんな笑顔久々にみるね。」
ユッキーさんが私の笑顔の意味を取り違えてしまったけど‥‥‥正直に話せない。
一応、親戚が来るって言ってしまったし。
今更、全然違う男の子が来るなんて言いづらい。
「そうかも。後、控え室戻るね。ごめんなさい、暫く控え室を貸して下さい」
結局、私は逃げるようにその場を去って、控え室に戻ることにしました。
うーん、まだかなぁ?
いつもなら椅子に座って待つ私は、今日に限って落ち着かず歩き回ってしまう。
橋本くん、私に気づいてたよね?
ライブ中、目が合ってビックリしてたし。
プライベートは髪の毛は下ろしてるんだ。
普段のキリッとした感じと違って、なんだか可愛いらしかった。
でも、、、可愛い女の子と一緒だった?
しかも、2人も。
もしかして、、、あの2人とそのまま帰ってしまった?
【ライブが終わったら例の控え室まで来て下さい。ちゃんと警備の人には話をしておくから、今回は関係者入り口から堂々と入っていいよ】
そうチケットの裏に書いたけど、来てくれるかな?
来てくれるといいな。
でも、来てくれたら‥私って何したいんだろ?
お話ししたいのかな?
褒めてもらいたいのかな?
だ、抱か‥
変なことを思い浮かべて顔が燃えるように熱くなってしまった。
自分でも訳が分からないような不思議な気持ちが私の中で渦巻いていている。正直に言って自分で自分が全然分からなくなってきた。
こんな気持ちは初めて。
そんな気持ちを確かめたくて、今日、橋本くんを控え室に呼び出したけど。
もしかして、早まっちゃった?
あっ、レイヤードのグッズとかお土産に用意しておいた方が良かった?
会ったら何話そうかな?
普段、会話の苦手な私だけど、橋本くんとなら何話しても弾むんだよね。
あっ、一緒に来ていた女の子達って誰なんだろう?
纏まらない考えが私の心の有り様を表しているようで、ますます自分が分からなくなる。
ハッとして時計を見て驚いた。
もう、午後3時になっていた。
来てもらえなかったみたい。
よく考えたら、そんなにレイヤードのファンって感じじゃなかったかも。
なんで来てくれるなんて思ったんだろう?
彼は仕事で私と話してくれてるだけなのに‥‥
その日の夜の部のライブはまたみんなに褒められてしまった。
ただ、持て余す気持ちを解放しただけ、一種の八つ当たりみたいなものだったのに‥‥
結局、ライブが終わって数日経っても私の心が冷えることはなく、またアプリを立ち上げてしまうのでした。




