七十一話
一応、ラブコメパート始まり始まりです。
昨日の実習は散々だったけど、正直、課題はハッキリと見えた。
坊主はフィジカルにモノを言わせて配達をこなす脳筋タイプ。美奈さまと柚月は身軽さと器用さを合わせた万能タイプ。
そう、それぞれに強みを活かして配達に挑んでいるんだよな。
じゃあ、俺は、、脳筋をベースに、もう少し身軽さを身につけるのと、道具を使いこなせるようにならなきゃならない、、のか?
だったら、空いてる時間に体幹を鍛えつつ、道具を借りて練習するしかないだろう。
まぁ、その前にしないといけないことがある。
それは、、、
「なぁ、お世話になった人にお礼を買いたいんだけど、何を選んだらいいかわからないんだ。だから買い物に付き合ってくれないか」
ぽかぽかを越えて、汗ばみそうな陽気の昼休みの屋上。俺、橋本シンヤはまたも屋上の主に話しかけていた。
「ん?なんでウチに?こういう時、藤宮さんにお願いしはるんちゃうん?」
相変わらずのネイティブな関西弁だけど、その涼やかな声は耳に心地よかった。
「凛花はダメだ。同い年くらいの女の子にプレゼントするなんて言ったら、凛花が般若に変わってしまうからな。」
そう、彼女は俺が他の女の子とコミュニケーションを取るのを嫌がる。
「ん?女の子にプレゼントするのん?えっと、、ハッシーって藤宮さん以外にも女の子いたの?」
「いるわけ無いだろ。というか、凛花も彼女じゃないし。ちょっと紹介制の学校に、、、いや、、例えて言えば、一見さんお断りの料亭を紹介してもらった御礼みたいな」
例えが余計にややこしかったかもしれない。
というか例える意味が特になかったような気もする。
「うん、、、、そっか。ウチをたよってくれたんやぁ‥‥‥わかった。今週の日曜日とかどうかな?」
しかし、俺の心配は余所に、あっさりと週末の予定が決まってしまった。
そして、日曜日
俺は待ち合わせの噴水広場の前に着いたところで、重大なことに気づいてしまった。
もちろん、気付いたのは待ち合わせの10時より1時間も前に来たことではない。
女の子と二人きりでお買い物。これっていわゆるデートと呼んでもいいんじゃないか?
いや、浮かれるなよ。
よくよく考えてみると俺は彼女の顔を知らない。なんなら相手も俺の顔を知らないのだ。
お互いどうやって待ち合わせ相手に気付けばいいのか?
ちなみに、連絡先は交換していない上に現時点でこの場で待ち合わせしている人が数人いた。
もしかして、この中に犯人がいる?
なんて訳ではないだろう。だってまだ1時間前なのだから。
とりあえず10時になったら声をあげよう。
それに反応した人が眞姫那ってことだからな。
‥‥とりあえず10時5分前になった。
ということはこの中に眞姫那がいる可能性が高いんだろう。ちなみに今、ここに居る待ち合わせ待ちの人は、4人。
1人目、若い女の人だ。恐らく20歳くらいで、ギャル系のニットのミニのワンピースを着ている。
この服装って身体のラインが強調されて、なんだかドキドキする。
とはいえ、あんまりガン見していると、また弥生の時みたいにバレて気まずい思いをしてしまうよな。まぁ、どちらにしても年齢的に眞姫那じゃないもんな。
2人目、この娘も眞姫那ではないだろう。
だって、どう見ても小学生の女の子だから。
3人目、中学生位の男の子だ。仮にA君としよう。
手にした紙袋の中身をチラッとみたり、今度はまわりを見渡したり身なりを整えたりと、とにかく落ち着きがなかった。なんとなくだが、デートの相手を待っているのかもしれない。
少し相手の女の子のことが気になりだした頃、眞姫那らしき人が現れた。
想像通り、イボガエルのような見た目の女の子で、胸と腹を揺らしながらこちらに駆け寄ってくる。
俺は手を挙げて声を上げ
「あー、こ‥」っち、こっち。と言いかけたところで、彼女は無情にも俺の横を通り過ぎて中学生位の男の子A君の前に立ち止まった。
‥‥‥?
俺の手は一瞬虚空を彷徨ったあげく、後頭部をさすった。
「‥‥後頭部がかゆいなぁ。」
俺の渾身の言い訳に、隣にいた1人目の人。ギャル系美人がクスリと笑いを漏らす。
全然ごまかしきれてない‥
あれ?大人っぽく見えるけど、この娘が眞姫那だったのか?よかったぁ〜っ、4人目の人じゃなくて。
よく考えると、女の子ってのは服装やメイクで大人びて見えたりすることは多いのかもしれない。
ちなみに、俺の背後側に居る4人目は一言で言うとゾンビっぽい。
さっきからずっと気になっていたのだが、右目なんて半分飛び出しかかってるし、人って呼んでもいいかどうかも怪しいレベルなのだ。
しかし、世の中ってのはままならないどころかつくづく残酷に作られているらしい。
誰かが背後から俺の肩に手を置いたのだ。
振り返ると右目が半分飛び出したヤツがいた。
「ハッシー、お待たせ。っていうか、お互い一時間前から待ってたのになんで声かけてくれへんかったん?」
そして、その涼やかな声は、紛れもなく眞姫那の声だったのだ。




