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七十話

いきなり目の前に文字が現れた。



試合の内容を説明します。

今回も二対二の対戦です。

料理は2人で運ぶ想定なので、2人とも到着した時点で、ゴールとなります。


道具は準備ターンの内にカーソルの中から選んで下さい。途中で必要な道具が出てきても取りに行ったりはできません。


ただし、欲張って持っていくことはオススメしません。なぜなら、実際に道具を持って行くのと同じで、その分、身体にきっちり重量がかかるからです。


もちろんですが、自身の身体の筋力、体力以上の動きは出来ません。これはVRカプセルがあなたの身体能力をスキャンして再現しているからです。


何か質問はございますか?



‥‥どうやら文字はこれで終わりらしい。

質問か?本当によくわからないって時は質問すら出てこないものだな。


俺の目の前にあるYES、NOの文字の内、NOの文字を掴むと、何処からか声が聞こえた。



それでは、オンユアマーク、、、スタート!



電子的な音声が終わると視界が開けてくる。

さっきの場面とは違い、とある料理店の前に立っていた。メンバーも先程と同じく4人。あっ、俺を含めてだが。


とにかく俺たちは料理を受け取ってスマホでお届け先を確認する。


うーん、最短距離は行き止まりになってしまうようだが、迂回するとかなり遠回りになる上に、途中で階段もあり、自転車も辛い状況だ。


「そなたも迷っておられるのか?どうしたもんじゃのう?」


柚木は俺の顔を覗き込むが、そういうのはドキッとするからやめて欲しい。



まぁ、それはともかく最短距離で進むしかないだろうな。





数分後、俺たちは家の屋根伝いに目的地にむかっていた。俺と柚月の意見がバッチリ合ったお陰だ。


『やっぱり俺たちって気があう。』なんて喜んだのも束の間。相手の2人のルートもやはり屋根伝いの最短ルート狙いだったらしく、俺たちと並走していた。



中でも一番身体の小さな柚月の身のこなしは、さすが忍者(自称)なだけはあったが、他の2人も相当なもので、正直言ってついて行くのが精一杯だ。


それでも、ずいぶん慣れて、風を切って走るのに慣れてきた頃、前に居た3人が立ち止まった。


「柚月、どうしたんだ?」


「見るがよい。あの建物、なぜだか柵がないのじゃ。建物も、取っ手が小さい故、あそこに引っ掛けるのも無理筋ではあるまいか。」


古風な話し方とは裏腹に首を傾げた彼女は隙がありそうで、放って置けない庇護欲をそそる可愛さが溢れていた。


とはいえ‥目の前の建物に飛び移るのはかなり厳しそうだし、道具も引っ掛ける場所がない。

どうする?


「ジャンプ、、、は高さがたりないし、、、あっ、、あの壁に張り付くやつ」


「そなたも奇妙なことをのたまうものじゃの。壁に張り付く、、といえばあの絡繰道具よの。もちろん、アレはジャンプしてそのまま取り付くほど強力な能力など具有しておらぬ。つまり、、、真っ逆さまじゃな。」


柚月はニヤリと笑って地上を指差す。まぁ、流石に死にはしないだろうが、今回のお届けは完全にアウトとなるだろう。



「‥なら、どうしたら。。。」

2人で顔を見合わせて考えていると、、、いや、そんなに見つめられるとドキドキして惚れてしまいそうで困る。


しかし、仕事というのは一瞬の油断が命取りとなるのだ。


近くで声が聞こえた。



「坊主、そっち向いたままそこに立っててよ。


声に振り返ると坊主が向こうの建物側ギリギリに向こうに向かって立たされていた。


そして、美奈様はそのまま、坊主に向かって走り出した。ハッキリ言って訳がわからない。



「きりぃ〜つ。礼。」


そして、学級委員長のような掛け声をした美奈様に合わせて、坊主はお手本のような斜め45度の礼をした。


‥とおもったら、美奈さまがその背中を駆け上がって坊主の後頭部を踏み切るとそのまま跳躍する。坊主がいわゆる発射台の役割を果たしたのだろう。


跳躍した美奈さまは、走り幅跳びの選手のように綺麗に胸をそらして、放物線を描くように宙を駆けるとそのまま隣のビルに不時着した。


思わず見惚れる程素晴らしい跳躍だった。


そしてそのまま、ワイヤーのようなもので坊主も向こうの建物へ回収していく。回収される坊主はこちらに振り返り、ドヤ顔を浮かべたが前を向いた坊主の後頭部にはクツの跡がクッキリと残っていた。


「わははっ、柚月、あいつ、後頭部に靴の跡が、、」


俺が柚月に笑いかけると、柚月はニコリともせずに、、いや、俺と目を合わせることもなく腕からワイヤーを射出する。よく見るとワイヤーの先端が輪っか状になっていて、西部劇の投げ縄みたいだ。


そして、射出されたワイヤーは軽く弧を描き、坊主の首にかかった。


柚月は涼しい顔をしてワイヤーを引くと、坊主の首が締まるが、隣のビルから落ちることもなく耐えきった。


さっき、踏み台にされていた時も感じだが、坊主の体幹の強さは異常だ。


ただ、それを自分で利用するのではなく、周りに利用されているのが坊主の残念なところなんだけどな。



「そなさたま。お手を拝借する。」

そして、柚月に手を掴まれるとあっさり向こうのビルに渡れた。



‥‥結局、勝負は引き分けで、、、俺は良いとこ無し無しで終わった。

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