六十九話
「ん?で、作戦タイムって?」
「2人の役割を決めるのじゃが。」
ん?役割って、、配達員するだけだよな?
「いや、お互い頑張って配達すればいいんじゃないか?」
それ以外に思いつかないのだけど。
「うぅむ、それも、あるいは一理あるじゃろう。ただ、対戦相手をそのまなこで見てみるがよい。」
ちょっとギャル入っている美少女が視界に映る。スパッツ?レギンスで足長効果でも狙っているのかやたらと足が長く見える。
というか、よりにもよって美奈さまだった。
確かさっき序列一位とか言ってたけど。
まさか、彼女も配達員だったとは予想外だったよな。
「伊集院真臣という、この人もスゴイのか?」
視界右下に対戦相手の名前が出てきていたのに今更ながら気づいた。
「あぁ、まぁ、底知れぬ者なのじゃが、、、あるいは、馬鹿なのかもしれん、あの坊主は」
そう言って視線を右にズラす。
釣られて、そちらに視線を走らせると。。
「坊主って、、、ぁぁあ、坊主じゃないか?」
あの坊主が目の前に立っていた。
相変わらず、頭はワックスでもかけたかのようにピカピカで彼の頭の上を歩いたら滑って転けそうな雰囲気が漂っていた。
もちろん、彼の頭の上を歩くシチュエーションなんてある訳はないんだけどな。
ただ、問題はそこではなかった。
そう、坊主がまさかの伊集院真臣だったってことだよな?完全に名前負けしているじゃないか。
「おいっ、鬼畜野郎。お前だけには死んでも負けない。」
ビシッと俺を指差して叫ぶ坊主はまるで主人公みたいな存在感だったが、美奈さまに膝カックンされて、情けない醜態を晒していた。
「雑魚君、ヒーロー気取りで自爆するのはぜんっぜん構わないんだけどぉ。ワタシを巻き込むのはやめてよね。」
腕を組み、坊主を見下す姿はちょっとした女王様だった。まぁ、腕を組むと胸が強調させれるので視線のやり場に困るのだが。
「すまないでござる。拙者が悪かった。だから、蹴るのはやめてくれでござる」
よく見ると美奈さまは坊主のスネをゲシゲシと蹴っていた。ただ、ちょっとだけきになるのはその時の坊主がとてもいい笑顔をしていたことだ。
もしかして、ドMなのだろうか?
いや、坊主のことなんて、ぜんっぜん興味ないんだからねっ。
‥話はそれたが、女王様と奴隷vs忍者と普通の人間(俺)で、どちらが先にお届けできるか競うようだな。
まぁ、VRなので普通とは違う動きが出来るんだろう。オラワクワクしてきたぞ。
俺はさっそく足を十分に屈めて一気に地面を蹴った。しかし、視界はいつも見慣れた高さだった。つまり、ジャンプの高さはいつもと全然変わらないようだ。
「言っておくけど、ここがVR空間だからって何も特殊なことは出来ないわよ。」
俺のジャンプを見ていた美奈さまにが酷く冷めた目でこちらを見ていた。
もちろん、ワクワク顔を見られていたのだろう。今すぐVRから出て、このビルの最上階から飛び降りてしまいたいくらいには恥ずかしいのだが、うなじに冷たいものを当てられて、冷静に返った。
振り返ると両手に保冷剤を持った柚月が笑顔で立っていた。
「忍術とはひとえに人心を惑わす。その奥義が【五情・五欲の理】なのじゃ。傲慢姫はまさしく、その素養はあるのだろう。人を動揺させる表情、仕草、まるで柚木達と生業を同じくしているようじゃ。」
言いながら、柚木はウィンクする。
「ぐはぁっ、拙者はドキドキなんてしておらんぞ。名も知らぬ可憐な姫君。これは浮気ではござ‥らんよな?いやだぁ、拙者は不忠義者ではござらんのじゃ〜」
それを受けた坊主が何やら叫びながら床をゴロゴロ転がっていて、それに気づいた美奈さまはまた坊主にケリを入れている。
一見和やかな、清々しいほど馬鹿らしい雰囲気が出来上がっていたので、俺は顔を綻ばせる。
しかし、それから数分で俺は彼女達の実力に圧倒されることになるのだった。




