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六十七話


「ふぅ〜っ、気持ちよかったぁ。」


トイレを我慢した後の放尿はどんな女の子とのエッチより快感だった。いや、女の子とエッチしたこととか一回もないけど。



まぁ、とにかく間に合ったんだから気持ち的にはもう満足して家に帰りたくすらあったけど‥‥


まぁ、そういう訳にはいかないよな?


で、会計を済ませてそのまま目的地に向かっていたんだけど、思い返すと美奈さまはさっき抱き合ってたことをどう思っているんだろう?


気になって、彼女の瞳を見つめると、たまたま美奈さまもこちらを見ていたようでバッチリ目が合った。


しかし、美奈さまは顔を真っ赤にして目をそらしてしまった。



もしかして?


いや、まさか、信じられない。

そんなこと?



だって、ギャルの美奈さまにとってはアレくらいよくあるようなことだろ?



なのに‥‥‥‥‥‥そんなに怒ることか?



いや、待て、いくらギャルだとは言え、アメリカ人じゃあるまいし、そんな毎回抱き合ったりしないものなのか。


そもそも、ハグと抱き合うって何が違うんだ?

そう言えば『手を繋ぐ』もよくわからない。


俺の中では手を繋ぐ=恋人もしくは夫婦関係。若しくは親子なのだか、男友達、女友達とも平気で手を繋いだりする奴らは結構いるらしい。


少し頭がおかしいんじゃないかと思うが、あっち側の人間にとっては俺の方がアタオカなのだろう。そう言った意味では美奈さまはこちら側の人間だったってことなのだろう。


そして、偶然だとは言え、押し倒して抱き合う形となったのだから、やっぱり謝るべきだろうか?



しかし、俺が謝る勇気をだせなかったのは、先を急ぐ美奈さまが、今でもまだ耳まで真っ赤だったからだ。



それで、肝を冷やしたという訳でもないが、俺も冷静になって考えてみた。




俺が美奈さまにパルクールを習える所を紹介して貰えるようにお願いする。

美奈さまは快諾してくれた上に10000円の飯まで奢ってくれた。(神)

俺が彼女を押し倒した挙句、抱きつく。



‥‥これ、、恩を仇で返すってレベルじゃなくね?


いまからでも殺られる前に卍解すべき?


なにか甘いものでも奢るとか‥‥いや、ダメだ。今、手持ちに300円しかない。


考えた挙句、俺は口を閉ざすことにした。

メチャクチャ消極的作戦だけど、下手に動けば動くほどダメな気がする。


いや、俺に勇気がないだけなのかもしれなかった。






‥‥‥‥どれくらいの時間が経っただろう?


沈黙が気まずくて、既に軽く5回は無意味にゴホンゴホンと咳をしてみたり、無意味に深呼吸してみたりしたが、その間、10回くらいは心が折れていた。



相変わらず、すれ違う男どもが必ずって言っていいほど振り返って美奈さまを見てから俺を見て舌打ちする。


そんなに俺たちが一緒に歩いているのがおかしいってのか?



そんなことを考えていると、美奈さまが足を止めた。恐らく20階以上の高層ビルだ。


思わず見上げてしまうのは俺が根っからの田舎者だからなのだろう。



「着いたけど。余計なことは口にしないでよ」


美奈さまは顔を顰めると、見上げる俺を置いてさっさとビルに入って行くので慌ててついていった。





5分後、俺と美奈さまはスーツを着込んだ小学生女子と対面していた。


「はじめまして、私は学園長の平野梨花です。アカデミーへようこそ。」


平野梨花と名乗った幼女は右手を差し出した。

まるで、アメリカ人みたいだ。


「よろしくお願いします。」

俺はガッチリと手を握りかえした。

感触は妙にこじんまりとして、柔らかい。


それは間違いなく幼女の手なのに瞳には理性的な光が宿っていて、まるで、『見た目は子供、中身は大人』だ。まさか、名探偵ではないだろうが。



「普通、正式な入学試験が必要なのですが、あなたの場合、ファイブスターという実績。それに、No. 1の紹介ですからね。」


ん?

なぜファイブスターって知ってるんだ?

No.1???何の事?



学園長の言葉に俺は隣に居る美奈さまに視線を送ると、目線を逸らされた。



「まぁまぁ、No.1の美奈ちゃんが紹介したい人がいるなんていうからどんな男の子かと思ったけど、、なかなか素敵な男の子じゃない。」


学園長と名乗る幼女は精一杯背伸びをして、美奈さまの肩に手を置いた。


しかし、言葉だけ聞いていたら、家に彼氏を連れてきたときのお母さんの台詞だな。



「その言い方、やめてくれない?こいつに勘違いされそうだし。」


子供っぽく頰を膨らませる美奈さまは控えめにいっても可愛かった。



「こらぁ、いくら親戚だからって学園長にタメ口って‥‥ダメでしょう?」


幼女は手の平を上に向け肩を竦める。

そして、今にもため息をつきそうな呆れた表情を浮かべた。



「‥わかりました。梨花ちゃんってば、見た目はどう見ても小学生ですから、つい砕けた言い方になってしまうんですよね。」


美奈さまは作り笑いを浮かべているが、完全に毒を吐いていて、とても彼女らしくて、思わず吹き出してしまい、


「なに?」

不機嫌そうな表情で睨まれてしまった。





そして、更に五分後、俺はなぜか自己紹介をしていた。


「転校生の橋本シンヤです。よろしくお願いします。」

俺は名乗ったあと、深々と礼をした。


目の前には机が12あり、年齢は俺と同い年から20代半ばの男女が、教壇前に立っている俺を見ている。



「学園長?こんな時期に転校生とは珍しいですね。まぁ、このクラスに来るくらいだから実力はあるんでしょ?」


ポニーテールのいかにも活発な女の子が、手を挙げて、教師に当てられてもないのに勝手に話し始めた。


話はじめこそ丁寧語で喋っていたが途中からは完全にタメ語だ。まったく礼儀がなってない。


それにしても、ここに居る人達の服装はバラバラだな。


高校の制服をている人もいれば、私服姿、ポニーテールさんみたいにジャージ姿の女の子もいるからな。


「えっと、じゃあみんなも1人ずつ自己紹介をお願いするわ。序列順でね。」


「それじゃ、私から、ファイブスターの第4位。学内ではNo.1の美奈よ。17歳の高校2年生。タイプは万能型‥‥これくらいでいいかしら?」


美奈さまは案外無難に自己紹介をまとめてくれたんだろうけど、知らない単語が頭に入ってくれない。


第4位と学内ではNo.1ってなんなんだ?

その前に、美奈さまも配達員で、しかもファイブスターだったのか?



「大丈夫ですよぉ。それじゃあ、サクサク行きましょう。」


気を良くした学園長が次を促したけど、次に声を上げた人物が、よくよく見てみると知っている人間で驚いてしまった。


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