表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/105

六話


そう、下着ドロこと、ヒゲ面親父だった。



あれ?

おかしいな、なんでシャバにいるんだ?


‥‥というのは冗談だが、彼がレイヤードのメンバーだとは知らなかった。


聞いていた話では女の子五人組だったような。



しかも、バッチリ目があった

‥‥っと思ったのは俺だけだったようだ。


ふぅ〜っ、なんとかバレなかったのか。

よく考えたら、バレたら警察に突き出されるかもしれないな。


仕方なく俯き加減で、まるで死刑宣告を待つ囚人のような気持ちで事の成り行きを見守っていると、、、



「お〜っ、いっぱい集まったな。お前たち、起きてるかぁ?」

いきなりヒゲ親父が大声で叫び出した。

とうとう気が狂ったか?


いや、この世の中と一緒で、ヒゲ親父はもともと狂っていたのかもしれない。



「「「「「起きてるぅ〜」」」」」

しかし、観客がまるでどこかの軍隊の精鋭のように一糸乱れることなく叫び返した。



正直‥‥ドン引きだ‥‥



「俺、秋山プロデューサーは好きか?」

しかし、俺のテンションを置き去りにして、秋山プロデューサーは叫び続けた。



「「「「「ふつう〜〜」」」」」

観客も負けてはいない。



「そうか、お前らは相変わらずツンデレだな。じゃあ、レイヤードは好きか?」

秋山Pはまるで自分を下着ドロ扱いした世間への鬱屈した気持ちを吐き出すかのように更に大声で叫ぶ。



「「「「「大好き〜〜」」」」」

更に観客はヒートアップしていく。



「じゃあ、メンバー紹介いくぞっ。見た目は綺麗な」

それに呼応するように、更に秋山Pが更にボリュームを上げた。



「「「「「お姉さん」」」」」


「でも、実は結構」



「「「「「天然さん」」」」」


「その名はなんと」



「「「「「葵ちゃ〜ん」」」」」


凛花も弥生も観客に溶け込んで大声を出していて、俺は疎外感を感じてしまう。


なんなのこれ?

怪しい宗教的な儀式にしかみえないんだけど。



ふと、後ろを見てみると虚ろな目をした少女がステージを見ている。


きっと、隣の彼氏らしき人に無理矢理連れてこられたのだろう?


それはまるで幸せという洗脳が解けてしまったぬけがら同然の姿に感じられて、俺は勝手に共感してしまった。


きっと、俺も同じ目をしていたから‥‥



「元気ぃ〜っ、印の」

しかし、俺の気持ちなんて置き去りにして、掛け合いは続いていく。


「「「「「お転婆さ〜ん」」」」」


「しかし、中身は実は」



「「「「「おっと〜めぇ」」」」」


「その名はなんと」



「「「「「いっちごちゃ〜ん」」」」」


やっと2人分か‥‥‥

そういえば、レイヤードの現在の躍進は秋山プロデューサーの功績が大きいと凛花が言っていたがもしかしてこのヒゲ面親父。レイヤードより人気があるんじゃないか?



「レイヤードの」


「「「「「マスコット〜」」」」」


「その名はなんと」


「「「「「ゆぅ〜いぃ〜ちゃん」」」」」



その声の残響が消えてしまっても‥‥誰も何も発しなかった。どうやら、終わったのか?


静寂がどれくらい続いたのだろう?

一瞬、、それとも1時間?





しかし、また秋山プロデューサーが静寂を突き破った。



「クールなあの娘は」



「「「「「あっかねちゃ〜ん」」」」」



「あっ、朱音の紹介が短いのは本人の脅‥希望だ。次いくぞ。レイヤードの」


脅迫???



「「「「「絶対エース」」」」」



「しかし、極度の」



「「「「「人見知り」」」」」



「その名はなんと」



「「「「「ミ〜サ〜ちゃ〜ん」」」」」


「よしっ、皆んなのウォーミングアップが済んだところで、レイヤードの登場だぁ〜」

そこで、割れんばかりの歓声が会場を包んだ。



ステージにはスモークが充満して、秋山プロデューサーの姿すら見えなくなった。



そして、パァーン、という音が鳴り響いたと思ったら、レイヤードの5人が勢いよくジャンプして飛び出して来る。


それと同時に地鳴りのような大歓声が上がった。


いわゆるポップアップというやつだろう。

ステージの底、いわゆる奈落からステージへ飛び出してくる仕掛けのことだ。


あれは機械ではなく、人力で上げているというのを聞いたことがある。



それに音響、ライト、舞台の設置まで含めて色んな人が準備してこのステージを作っているかと思うと少しテンションが上がってきたが、、


俺の準備が間に合わなかったのだ。


だって、辛うじて分かるのが一曲目のSKYだけなんだよな。



気をとりなおしてステージを見つめて‥‥‥‥目があった。


秋山プロデューサーはもう舞台袖にはけていたので、あの人ではない。


センターに立っている可愛い女の子が俺を見つめている。


いや、コレはきっとファン心理で言う『あっ、今、俺のこと見た』とかいうやつなのだろう。



少なくとも、こんな輝くオーラを纏ったアイドルに知り合いは居ない。


彼女の姿をあらためて見てみる。


まぁ、顔は整っているし、可愛いと綺麗の間くらいの女の子だ。しかし、それよりも気になるのはアイドルオーラというかなんというか普通の人じゃない雰囲気が彼女を包んでいるところだ。


更に服装は淡いパステルカラーのチェックのワンピースで、胸元のリボンが可愛さを引き立てていた。



しかし、まだ俺を見ているような気がする。

き、気のせいなんだよな?


俺の戸惑いを余所にライブは続いていく。


センターに立っている彼女の圧巻のパフォーマンスを見て、俺はなんだか圧倒されてしまった。






ラストの曲が終わりそうでなかなか終わらない。そして、何故だか最後のメロディーというか最後の音階が10秒近く鳴り響いてとまった。

妙に歪な終わり方だ。


「お疲れ様〜っ、私達のライブの思い出をオカズにお昼ご飯楽しんでね。また会おうね。」


そう言ってレイヤードは舞台にはけていった。


今気づいたけど、ちょうど12時を狙って終わらせたかったんだろう。


ジルベスターコンサートのカウントダウンのパクリだと今更気づいて俺は苦笑いした。




「終わったねぇ。私、苺ちゃんが大、大、大好きだけど、ミサミサちゃんのライブパフォーマンスは別格だよねー。」

凛花は興奮しているのか手振り身振りを交えて話している。


しかし、混雑しているとはいえ、凛花がガンガン俺に当たってくるので色んな所が俺に触れて、ちょっと困ってしまう。



「結衣ちゃん、可愛かったぁ。」

弥生は幸せそうな顔で頰に手を当てる。

連れてきてよかったぁ。



その後、弥生と凛花がレイヤード話で盛り上がっていたのだが、パシャっといきなり俺と凛花2人の写真を撮る。


「あっ、明日家に行くから予定空けといてね。」

そして、凛花が思い出したようにこっちに向き直してそんなことを言った。



「明日に回してくれたのか?ありがとう。」

そう、もともと今日に弥生の勉強見てくれる&遊んでくれる日だったからな。



「でも、俺は明日は稼ぎたかったんだけどな。」

本音がポロッと出てしまう。



「ごめんね。あっ、よかったらバイト掛け持ちしたらどう?私がバイトしてるカフェなら皆んな仲が良いし、楽しいよ。」

凛花がニコニコ笑顔でバイトに誘ってくれるが、、、カフェなんてリア充の巣窟じゃねぇか?



どうせ根暗扱いされてイジられるだけだろう。

正直に言うとやっていける気がしない。




「いや、気持ちだけ受け取っとくよ。俺にカフェのバイトがつとまるとは思えない」

俺はやんわりとお断りすることにした。



「そうっ。シンシンって本当につれないよね」

凛花は俺の反応が予想外だったのか、首を傾げた後に残念そうにつぶやいた。



「いやいや、凛花と仕事したら、笑顔でニッコリとコキ使われそうだからな。」


「私、、そんなことしないもんっ。ベーっ。」

怒ったというより、ただ2人で戯れているようなこの感じは実は結構気に入っているのだけど、凛花はどうなんだろうな?


彼女は皆んなと仲が良いからその辺は正直よくわからない。



「話変わるけど。ライブの始まりの時、ミサミサが私の方をジッとみてたからビックリしたんだよね。あれ、なんだったんだろ?」

そう言われて俺はドキリとした。


やっぱり、ミサミサが見ていたのは俺ではなかったようだ。なんだか自意識過剰なヤツみたいで、恥ずかしくなってきた。



「そりゃあ、アレじゃないか?ほら、、凛花が可愛いから見惚れてたんだろ。」

、、、、俺は恥ずかしさから適当にごまかすことにした。だって、早く話題を変えたい。



「可愛い‥‥。ありがと‥じゃなくて、普段、可愛いとか一回も言ってくれたことないよね?急になんでそんなこと言い出したの?」

しかし、俺なんかの見え透いた誤魔化しに騙される凛花ではなかったようだ。


しょうがなく、俺も自分が見られてると勘違いした事を白状する事になった。



すると、、、


「うーん、まぁ、シンシンだし、、、しょうがないなぁ。」

凛花は呆れたような顔を俺に向けるのだ。



凛花にまで‥

『〜君みたいな幼馴染みが欲しいな。』

なんて言われそうで少し悲しくなる。


俺だってそれなりに真面目に生きているし、友達や幼馴染、妹は大切にしているつもりだけど‥‥俺は相手を呆れさせる天才なのかもしれない‥‥



俺は悔しさからチケットを取り出し、会場のゴミ箱に投げ込んだ。まぁ、そんなことで気が晴れるわけがない。



俺は肩を落として会場を後にするのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ