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六十二話


朝のホームルーム前。


いつもと同じ校門をくぐって、いつもと同じ廊下を歩く。そして、いつもと同じ教室はいつもとちょっとだけ違っていた。


いつもなら主人不在の席に可憐な女の子がちょこんと座っていたのだから。



「あれ?あの席に人が座ってるんだけど、あの娘、入学してから一度も来てなかった朱鷺田さん?だよね?」


ショートカットのボーイッシュな女の子が遠慮もなく朱鷺田さん?を指差す。



「あ〜っ、ホントね。確か、病気で学校に来れなかったんじゃなかった?」

ウェーブがかかったロングヘアーの女の子が髪をかきあげる。


まぁ、入学から一回も登校していなかった超レアキャラの登場が気になっているのは私だけではなかったみたい。



「へぇ〜、そうだっけ?ワタシは全然覚えてないけど本人に聞いてみたら?」


流し目が妙に色っぽい。

本当にこの娘って私と同じ年齢なの?



「いやよ。だって、あの子、本を読んでるし、人形みたいで話しかけづらいわ。」

「だよねぇ。じゃあ、まっ、いいかっ。そういえば昨日の『コイヨリ』みた?」


しかし、話しかけるまでの興味が湧かなかったのか、あっさり話題は明日のドラマに切り替わった。



そして、ホームルームが始まり一時限目終わりの休憩中、1人の猛者が朱鷺田さんに話しかけた。


「朱鷺田さん?はじめまして。ほんと可愛いね。もう、身体大丈夫なの?」

ショートボブで比較的おとなしい女の子である八幡さんが、座っている朱鷺田さんに視線を合わせる為中腰になる。


その態度が彼女の優しさを体現していた。



「‥‥ッ。」

しかし、朱鷺田さんは八幡さんと目を合わせる事すらしない。



「あれ?聞こえなかったかな。身体大丈夫?」

「‥‥んっ。」


八幡さんがもう一度朱鷺田さんに話しかけると、今度は朱鷺田さんがビクッとした。


「いや、ウチ、怖くないよ‥‥本当に‥‥怖くない‥怖くない、ほらね、怖くない。はぁ〜っ、ダメかぁ。」


八幡さんも◯ウシカ方式でなんとか近づこうとしたが、深いため息をつく。


朱鷺田さんが側から見てもガタガタ震えていた。



結局、そんな事が続いて、朱鷺田さんに話しかける人は誰もいなくなった。


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