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五十九話


「それでウチのところに相談しにきたん?」


昼休み、今日はどうしても相談したい事があったので、一人で屋上にむかったが、目的の人物はいつもの所にちゃ〜んと居た。




「俺の知り合いで一番キレる奴って考えた時に眞姫那しか居ないって思いついたんだ」


そう、お嬢様の謎の手紙を解読してもらいに来たのだ。もちろん、お礼のお弁当の準備もバッチリだ。



「ふふふんっ、とうとうシンシンもウチの魅力に気付いたんやぁ?あっ、でも、ごめんなさい、告白は間に合ってるんよっ」


なのに、何故か俺は眞姫那にフラレる羽目になってしまった。



「いや、告白なんてしてないし、自己満足のセクシーポーズも止めろ。むしろ萎えてくる」


「あれ?なんでセクシーポーズしてる事がわかったん?もしかしてみえてるんかなぁ?そのわりには反応悪いんやなぁ、ウチスタイルには自信あってんけど。」


いや、またイボガエルみたいな女の子が腰をクネクネしている映像が頭に浮かぶからやめて欲しい。


「本当かよ?まぁ、いいや。眞姫那、相談したい事があるんだよ」


「なになに?もしかして恋愛相談?」


眞姫那は声を弾ませた上に大阪のオカンにみたいに一オクターブくらい声が上がった。



「んなわけないって。この手紙をみてくれ」

俺は手紙を屋上塔の屋根に投げ入れる。



‥‥‥

‥‥‥‥‥

‥‥‥‥‥‥


永遠にも感じられる沈黙の中で、俺はある重大なことに気付いた。これって俺の女装のことも話さないといけないんじゃないのか?



「‥‥。アハハハッ、、、そういうことね?つまり、コレってハッシーのことやねんなぁ。もしかして、ハッシーって、今、悩んでる事あるんかなあ?」


と思ったが、俺宛の手紙だと眞姫那はすぐ気付いたらしい。さすが俺の知り合いの中で一番キレる女の子だけの事はある。というか女装のことを話していないのに何故わかった?



「悩みか?悩みはあるな。今仕事でどうしても必要なスキルを学べるところを探していてな。

パルクールって知ってるか?」


俺が問いかけると少しの間、沈黙が辺りを包んだ。普通、女の子との間のこういった沈黙は気まずくてたまらない。



ただ、眞姫那との沈黙はなぜだか全然嫌ではないのだから不思議なものだ。これがお互い顔を知らない効果なのだろうか?



「パルクールは日本では学べるところは殆どないんよぉっ。だから、、そんなに簡単に習うのは、、、、カッキーン、、そういう事なんやぁ?そやんね、これはアレやよ。」


なぜ思いついた時の効果音が『カッキーン』なのかひどく気にはなったが、それより話の先がきになる。



「アレってなんだよ?」

「パルクールなんよ。」


はぁ?

期待した答えと違って少しイラっときた。

なんでパルクールなのか意味がわからない。



「だからどういうことなんだ?」


「つぅ、まぁ、りぃ〜、『最高の施設が整った所』『貴方に合うのも絶対に見つけてみせる』なんてのは言い換えれば『パルクール専門の施設』『貴方に合うパルクール用の靴』の事でしょう?つまりは健気な少女は、仔猫ちゃんのお世話をしたいんちゃうん?」


そ、そういう事だったのか、、、、


いや、待てよ。俺って誰かにパルクールのこと話したっけ?



「いや、違う。。と言いたいところだけど、確かに理屈は合うな」


「やんなぁ?やっぱり仔猫ちゃんは、ウチに相談して正解やったねぇ。」


眞姫那は満足気な声をだす。

それはさながら喉をゴロゴロ鳴らす仔猫のようだった。



まぁ、答えがわかれば、早速お嬢様に連絡をとって、、、いや、、正体が知られているんだったぁ〜っ。


もう、二度と会わないでおこう。

なんにしても、相談に乗ってくれた眞姫那には感謝しかないな。



「ところで、仔猫ちゃん、って好きな女の子おらへんのん?」

‥‥なんて思ったのが間違いだった。


これからずっと『仔猫ちゃん』って呼ばれ続けるのか?



「いや、好きとかなんとかより、俺に付き合ってくれる人が居ないからな。」


思わず、動揺して本音をブチまける。



「‥‥?そんなこと聞いてないんやけど。相手に好かれてるかどうかわからなくても人って好きになるもんちゃうんかなぁ?それとも仔猫ちゃんは自分の事好きな娘しか好きになれないん?」


ど正論の矢が俺の心臓に見事にヒットする。


もちろん、眞姫那の言う事は間違いではないんだけど、、モテる奴と違って、こちら非モテ野郎はただ好きなだけでもそれを口に出してしまったら相手に迷惑がかかるかもしれないのだ。


「俺が相手の事を好きだと聞いて、相手が嫌な思いをするのが嫌なんだよ。」

「そうなんや?優しいんやなぁ。」


眞姫那になぜか褒められた。

意味がわからん。



「ん?なんでそうなるんだ?」

「だって、、ウチに告白する人達は、絶対そんなん気にしてはらへんよ。」


眞姫那はさも当たり前のようにそんな言葉を口に出すけど、そもそも前提がおかしいんだが。



「‥?あれ?おかしくない?『ウチに告白する人達』って、、眞姫那の話?」


えーと、ドラマとかで自分の恋話を『これって友達の話なんだけど』なんて言って相談するのをよく見るが、これはそれと反対で『これって私の話なんだけど』って言いながら、友達の話をしているんだろうか?


そう言えば、可愛い娘と不細工な娘の組み合わせの友達同士つて結構見るけど、あれって不細工な方はあんまり気にならないものなのか?


俺が不細工な娘なら、可愛い娘に嫉妬して友達になんてなれない気がするけど、、、?


しかし、俺は重大な事に気付いてしまった。

性別は違うけど、俺とトモヤもそんな感じなのだろうか?いや、俺は自称フツメンだし、、、




「そうやよ。見たことも無い人達に『ずっと前から好きでした』なんて言われても怖いんよね。ほら、ウチ、人見知りやもん。」


まぁ、未だに素顔を晒せないモンスター面の眞姫那を人見知りなんて言葉で区切っていいかは甚だ疑問なのだが、まぁ、俺は眞姫那とのやりとりは嫌いではない。というか、正直に言うとかなり好きだったりする。



「人見知りはわかるんだけど、眞姫那ってそんなにもてるのか?俺なんて告白されたことないんだが。」


そうなんだよな。

告白?なにそれ?食べれるの?状態だ



「えっ??ないの?ウソ?凛花さんには告白されてないの?」

「いや、、、告白はないぞ。それに俺自身も告白なんてしたことないし。眞姫那はないのか」



「ないよぉ、だって、、はっ、恥ずかしいし」

眞姫那にしては珍しく、テレッテレの様子で動揺していた。



「ん?今まで好きな人居なかったの?めちゃくちゃモテるって言ってたろ?告ったら断るヤツなんて居ないんじゃないか?」


もちろん、これは普段からモテるなんて言っている眞姫那への皮肉だ。イボガエルがモテるわけないだろうし。



「う〜ん、好きな人‥気になる人ならおるんやけどなぁ。でも、ウチ、恋した事ないから、ただ気になってるだけなんかもぉっ」


自称モテモテのイボガエル姫ってば、本当に初恋もまだだったのか?


まぁ、恋しても報われないから無意識のうちにブレーキをかけてしまっているのかもしれない。その気持ちは痛いほどわかるが、、、



「そいつの何がそんなに気になるんだよ?それって恋とは違うのか?」

「恋?っていうか変なんよ、その人。ぜ〜ったい、変。」


確かに、恋と変は似ているが、そういうことじゃないだろ?


「へっ?気になるってそっちか?それはぜ〜ってい、、恋じゃねぇよ。ただの変だろ?」

「そうなんかなぁ?じゃぁ、好きって具体的に言ってどんなんなん?」



「そうだな。その人と会うと楽しくて、目が合うと身体が熱くなって。その人といない時もその人のことばっかり考えてしまう。まぁ、色々と他にもあるけど、そんなとこかな。」


俺がドヤ顔で解説すると、予想外のリアクションが返ってきた。



「あれ、、、?もしかして、仔猫ちゃんって、恋した事あるん?」


心底驚いたような声色だ。


いや、声色なんかよりもっと分かりやすい兆候がでている。だって、声が完璧なまでに裏返っていたんだからな。


「あるよ。あるって。だから、俺は恋に関しては眞姫那の先輩なんだからな。もっと、敬ってくれてもいいんじゃない?」


だから、俺は今日一の笑顔で微笑む。



「アハハハッ、、、そのボケ、今日一面白いわぁ。仔猫ちゃんも腕あげたんやねぇ」



しかし、人生はままならないものだ。

ギャグじゃねぇからな‥‥

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