五話
今回は短め
「ふぁ〜っ」
俺は大口でアクビをする。
太陽の光はまだかなり低い位置に佇んでいて、その苛烈さは鳴りを潜めていた。
そう、今は朝の9時頃で、普段の休日ならまだ寝ている時間なのだ。
それに、昨日は通風口内を変な体勢で進んだので、全身が筋肉痛だったりする。
そう、今日は凛花と弥生を連れてレイヤードのライブに来ている。
本日は二部制らしく、もらったチケットは10時から12時の部だったのだ。
「こらぁ、美少女2人に囲まれて、そんな退屈そうな顔をしないの。」
隣に居る凛花はいつもは髪の毛を下ろしているのに、今日はポニーテールだ。
服装はラフな感じでTシャツに黒のパンツにスニーカーだが、ベビーピンクのカーディガンが凛花によく似合っていた。
「フフフッ、お兄は本当に朝弱いからね。もちろん凛花ちゃんも知ってるでしょ?」
弥生はちょと普段見ないくらいに笑顔で、瞳は綺麗な孤を描いていた。
だって、弥生はレイヤードの結衣ちゃんの大ファンだったんだよ。全く知らなかった。
「‥‥そだね。シンシンってばナマクアカメレオンみたい。」
凛花が、呆れたような慈しむような顔を浮かべた。
「おいっ、凛花。動物マニアにしか分からない例えはヤメろ。」
そう。【ナマクアカメレオンは朝が弱い。】というより、変温動物だから昼くらいまで体温が上がらず動きが鈍いのだ。
だから、午前中は日なたぼっこをして体温をあげて、狩りをするのはだいたい昼くらいからなんだよな。
そういえば、俺の影響で凛花もいつのまにか動物マニアになってしまったな。
昔は俺のこういう発言はスルーされたし、ジト目で見られたものだが高校に入るといい加減、このノリに馴染んできたんだろうか。いや、俺に合わせてくれるあたり、凛花が大人になっただけかもしれないが、、、
「それにしても、よくレイヤードのチケットなんて貰えたよね?シンシンの、、、お客さんだっけ?もしかして、ほっぺにチューの人なのかな?」
また、凛花の周りにダークなオーラが発生する。
相変わらず、仕事に関しては真面目だな。
正直、凛花と一緒に仕事をしたら窮屈そうであんまりご一緒したくない。
「いや、、、その人とは違うって。お客さんがたぶんイベントの裏方さんだから、俺の働きぶりに感心してチップ代わりにくれたんだよ」
俺はダークなオーラを振り払うくらいの勢いで大袈裟に否定した。
「へぇ〜っ、他の女の子とも仲良いんだ?それにこの席、S S席の1.2.3番の並びで相当良い席だよね。」
あれ?普通に話している筈なのに凛花のダークオーラがおさまらない。
「ちょっと待て、今回は何故怒られてるのか全然分からないんだけど、、、」
俺の仕事ぶりを褒めてくれた話をしていたはずなのに、なぜ、こんなことになっているんだ?
「あぁ〜っ‥‥そんなこと言うの?」
凛花の口調はいつもと同じなのに、なぜか背筋が寒くなった。
これ以上会話を続けるとマズイ‥‥気がする。
だから、凛花の好きなブラヒリナトガリネズミの話で気をそらそうとしたところで、
「凛花ちゃんは苺ちゃんが好きなんだよね?でも、実際に見たらミサミサが凄いらしいよ」
弥生が先に凛花の気をそらしてくれた。
ほんと、弥生、マジ天使。
いや、女神ですらあるな。
「そ、そうなんだ。あっ、始まるよ」
凛花の声に促されて、ステージを見上げると
「えっ‥‥‥」
俺は絶句してしまう。
舞台袖から舞台中央に出て来た人物が俺が見たことある人物だったのだ。
そう、下着ドロこと、ヒゲ面親父だった。




