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四十二話


「私と帰りたいの?シンシンが?それは素直に嬉しいけど、、、」


凛花は首を傾げる。



「あっ、莉奈なら一緒じゃないぞ。それで、トモヤに荷物持ちしてもらうんだ。ほら、重い荷物を女の子に持たせるわけにはいかないし。」


俺は手振り身振り言い訳をしているが、必死になって言い訳するほどなんだか胡散臭くなってしまうのは何故だろう?



「フフフッ、私は女の子なんだ。」

凛花ははにかむように笑っているが、言葉の意味を考えるとなんとも言えなくなる。


きっと、莉奈との対抗意識のせいなのだろう。

まぁ、莉奈には荷物を持たせてたからな。

あんな子供に対抗意識を燃やす必要は全くないのだけど。。



「おいっ、藤宮ってあんな性格してたっけ?」


トモヤは顎が外れそうなほど口を開けていた。まるで、驚いたリアクションの見本のようだ。



「俺もわからん、普段はこんなんじゃないんだけどな。」



「ところでこの邪魔者はなんでいるのかな?」


凛花は虫ケラでも見るような無機質な瞳でトモヤを一瞥した後、口角を上げて俺を見る。


表情だけを言葉で表すと、笑顔?のハズなのだが、目が笑っていない。怖いって。



「いや、だからカバンはちゃんとトモヤが持ってくれるって。」

「カバンくらい私が持つよ。」


凛花は足音も立てずにトモヤに近づいていく。



「いや、それは困る。離してくれ。というか、指はそんな方向には曲が‥イタタタタタッ、や、やめろぉ〜」


俺のカバンを持つトモヤの指があらぬ方向に、って凛花、やり過ぎだろ。


慌てて俺のカバンを離してしまったトモヤに代わり、凛花がカバンを手にしてニンマリと笑った。


いやいや、別にカバンの中に金塊も札束も入ってないからな。一体、なんなんだよ。



「カバン一つ満足に持てないなんて、きっと疲れてるのよ。ウチに帰って休んだ方がいいわ」


凛花は丁寧に、慈愛に満ち満ちた表情でそう言っているのだが、残念ながら俺の耳には



『ボウヤ、ウチに帰ってママのオッパイでもしゃぶってな。』

と言っているようにしか聞こえない。



おかしい、、、凛花がそんなこと言う訳ないよな?

いや、きっと俺ってば疲れているんだ。

そうだよな、俺たちの戦いはこれから‥ゲフンゲフンッ。


ハッ、、あれ?


ズッと考え事をしていたからだろうか?

振り返ると俺と凛花しかいない。


トモヤはどこに行った?


「あれ?トモヤは?」

「誰?そんな人ここには居なかったよ」


凛花はさも不思議そうに首を傾げる。

えっ?



待てよ。トモヤは?

あれ?まさか夢だった?

ホラーみたいだ。


「って、ウソだろ?トモヤをどこにやったんだ?」


ピロリンッ。


スマホが鳴き声を上げる。


慌ててポケットからスマホを取り出すと、トモヤからメッセージが入っていた。



『すまない、急用が出来た。探さないで下さい。』


これが、面倒くさいタイプの女の子なら探してくれということなのだろうけど、トモヤはマジで用事が出来たのだろう。決して失踪する時の書置きなんかではない‥‥‥と信じたいものだ。



「ああっ、きっとかみかくしだねぇ。こわいこわいねぇ」

凛花が何故か棒読みだ。



「ところで、凛花、一つ聞きたいことがあるんだけど。」

「あれ?もしかして私に興味出てきたの?いいよ。何でも答えてあげる。それこそスリーサイズでもね。」


凛花は得意げな表情を浮かべる。

そんなにスタイルに自信があるのか?



「ん。スリーサイズはともかく、ストーカーについて聞きたいんだが。」

「‥ッ。ごめん、よくわからないや」


凛花は一瞬声を詰まらせたあと、早口で答えた。



つまりは、図星なのだろう。


困ったな。

確信があったとはいえ、本当だったとは。



「大丈夫。こういうのは凛花が悪いわけじゃないから謝らなくてもいいよ。」

俺は安心させるように笑顔を向けた。


そう、今一番途方に暮れているのは俺ではなく、ストーカーに悩まされている凛花に違いないから。



それに、ストーカーをする人は悪いかも知れないが、『される人にも責任がある』なんて身勝手な理由でネットが炎上する場合があるけど、そんな意見なんて当事者じゃないから言えるものだと思っている。


だって、、謝ったんだぞ。


ストーカーされている方が謝って、尚且つ隠そうとさえしたのだ。


普通に考えるとおかしいが、きっと普通じゃなくなるくらい辛い思いをしているのだろう。



絶対にストーカーをなんとかしてやる。



俺は初めて『家族を養う』と決めたあの時と同じくらいの覚悟でその言葉を呟くのだった。


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