四十一話
翌日、なぜか凛花に起こされた。
目覚めると凛花のドアップ。
しかし、その柔らかそうな唇が俺を惑わすような事はなかった。だってその横に弥生が居たから。
「あぁっ凛花。こんなに早くどうしたんだ?」
「どうしたんだじゃないよ。早くに来ないとあの女狐が来ちゃうでしょ?」
たしかに莉奈と鉢合わせはマズイな。
それに今日は凛花と別れ話をしないといけないからな。彼女が居ると話がややこしくなるし。
しかし、急いで支度しても間に合わないだろう。
俺は莉奈宛に『ツクバヤマハレ』とスマホで手早くメッセージを送った。
いわゆる、作戦中止の合図だ。
そのまま凛花と登校する。
それにしても、本当に緊張するな。
普段なら心地よく俺の肌を撫でてくれるそよ風も、何だか肌寒く感じてしまう。まるでこれから起こる悲劇を予見するかのようだ。
でも、後回しにすると、どんどんクビが締まってしまいそうな気がして、奥歯を噛み締めた。
「凛花、俺たち付き合ってるフリしてるよな?」
そして、一歩踏み出す。
「フリ‥うん。」
「もう止めよう。ほら、こんなことしてても二股の噂とか全然なくならないしな」
よし、言った。言ってやったぞ。
「‥‥いや。」
「イャじゃなくて、むしろウワサが悪化するんだからやめような。ぜったい(凛花が)困るだけだし」
俺は手振り身振り必死に説明したけど、凛花の反応は俺の思惑通りには進んでくれない。
「そうだよね‥‥ごめんなさい。でも、ぜーったい、イャッ。」
そう言って走り去ってしまった。
つまりはどういう事なんだ?
凛花はウワサが悪化して困ってるのは認めてるよな?
なのにフリを止めるのは何故イャなんだ?
‥‥俺と付き合っているフリをする事で得られるメリットがあるという事か?
もちろん、周りへの見栄なら俺なんかと付き合っているフリをするメリットはないだろ?
ということは目的は別にあるということだな。
う〜ん。わからない。
というか俺自身、凛花ほど周りの目を気にしたりはしないんだよな。
仕方ない‥‥トモヤに相談するか?
「先輩、話は終わったみたいですね?」
「おいおいっ、莉奈。俺たちをつけてて、こっそり見ていたのか?まるでスト‥‥あ〜っ」
俺の頭に電流が走る。
もちろんそんなのは錯覚だが、謎は完膚なきまでに紐解かれてしまった。
「そ、そういうことか?凛花」
「あの?先輩どうしたの?」
莉奈が無警戒に俺に顔を近づける。
相変わらず距離感が近いヤツだ。
「凛花、、今まで全く気づかなかったけど、ストーカーだったんだ。」
そう。デメリットだらけの恋人ごっこの真の理由はストーカーに付きまとわれているからだったんだな。
パズルのピースが全然ハマってくれない気がしていたが、これでしっくりきた。
「先輩ってば今頃気付いたんですか?まぁ、
鈍感ですもんね。」
莉奈は澄ました顔で俺をディスる。
し、知ってたのか?
やっぱり俺は鈍感なんだな。
まぁ、鈍感だからと言ってラノベの主人公みたいにはなれないんだけどな。
だって、モテないし。
まあ、気付いたからには、俺はスルーしたりなんてしない。絶対、ゼッタイに凛花をストーカーの手から守ってみせる。
しかし、凛花のボディーガードになることは出来ない理由が俺にはあった。
「あっ、俺、怪我人だったわ。」
仕方なく誰かに助けを求めることにした。
まぁ、ここは順当にトモヤだろうな。
「しょうがないな。シンヤがあからさまに助けを求めてくるのは初めてだし手伝ってやるよ。」
トモヤはあっさり受けてくれたが、問題は凛花の説得だ。俺はあらゆる応酬話法を浮かべて凛花の所へ向かうのだった。




