三十三話
放課後、俺は凛花と一緒にいた。
「凛花?ここまでやる必要があるのか?」
「あるよ。」
凛花は人の気も知らずに無防備な笑みを浮かべていた。本当に惚れてしまったらどうしてくれるんだよ?
今、凛花と恋人繋ぎしながら歩いてるのだ。
恋人役ならそれは普通のことかもしれない。
ただし、少し問題もあった。
そう、まだ学校を出ていないのだ。
そのせいで、チラチラ周りの学生達が俺たちを見ているのはまだ我慢できる。
しかし、それだけではないのだ。
凛花の知り合いが次々と声をかけてきて、俺を品定めするような目で見てくるから居心地が悪すぎる。
だって俺と凛花は釣り合ってないからな。
「ごめんね、嫌な思いさせて。私に彼氏が出来たのが珍しいみたいで。みんなシンシンに興味津々みたいなの。」
関係のない話だが、
シンシンニキョウミシンシンって全部カタカナで書くと訳が分からなくなるな。
それに、凛花は完全にプラス思考に捉えているが、女の子が俺を見てから凛花を見る目、、、あれは完全に『この娘、男の趣味悪い』なんて思って凛花に対して優越感に浸った目だ。
割と色んなスペックの高い凛花は同性には嫉妬の対象になりやすいのだ。
それがこんな致命的な欠点があると嫉妬が緩和されるのかもしれない。
自分で冷静に分析して悲しくなる。
あれ?でもそう言えば、
「凛花って、中学1年んとき彼氏いたよな?」
確かイケメン生徒会長とウワサになっていた。
あの時は凛花とは疎遠になっていたから、いつからいつまで付き合っていたとかまでは知らない。
「あ〜っ。そういう話聞いたことある。あれ、デマだよ。一応、シンシンが初カレだし。」
で、デマなのか?
それに俺は彼氏というかニセモノの彼氏だけど。
「はぁ、俺も一応、凛花が初カノになるな。」
「だねっ。嬉しい?」
「あ〜っ、そうだな。まぁ、嫉妬やら何やら多くて、ちょっと疲れそうだよな。」
クラスでも変な立場になってしまいそうだ。
「もうっ。あっ、そう言えば、シンシンは運動会、何に出るの?」
「障害物競争だな。凛花は?」
「私は借り物競争だよ。」
「あれ?凛花ってめちゃくちゃ運動神経いいのにその種目なのか?」
リレー種目に出るのかと思っていた。
「もうっ、いつの話してるのよ。私は運動はあまりしなくなったよ。ほら、焼けちゃうし」
そう言えば今の彼女は色がかなり白くて、俺と朝から晩まで駆け回って遊んでいたあの頃とは全然違っていた。
今更ながら気付いたのだが、凛花はあの頃の凛花とは全然別人なのかもしれなかった。
「そっか?凛花ならこんがり焼けてても可愛いとおもうんだけどな。」
そう。凛花と仲が良かったあの頃、俺は凛花のことが大好きだった。
「‥‥信じらんない。」
凛花は目を細めて突き放すような声を発する。
「ちょっと待て。褒めてるんだからな。」
そう、勘違いしないでくれ。
あっ、別に俺はツンデレではない。
「ホントに?ホント?‥‥そうなんだ?話変わるけど、映画のチケット貰ったんだけど、、、日曜日一緒に行かない?」
「えっ、、本当か?スターダストシリーズの最新作見たかったんだよ。本当にいいのか?」
「勿論だよ。楽しみだね。」
「そう言えば、凛花と出かけるの久しぶりだな。」
昔はよく凛花とサッカーしたりしていた。
「だって、シンシン、中学の時とか。私のこと避けてたでしょ?」
「まぁな。」
「やっぱりそうなんだ?」
「いや、だって、凛花ってば6年生位の頃から急に女みたいになってしまって、、なにか話しかけづらくなっちゃったんだよ。」
俺が本音を打ち明けると、凛花はまるで急に尻尾を掴まれたネコのように驚いていた。
「‥ンシンの‥‥に‥わっ‥ん‥もんっ、」
少し怒気をはらませた凛花が怖い。
しかし、何言ってるのか、肝心の所はよくわからなかった。
「ごめん。」
俺は取り敢えず頭を下げてしまう。
だって、凛花の目に涙が滲んでいたから。
「ううん、過去のことだし、シンシンは寝顔は昔と変わらず可愛いままだけどね。それより日曜日はたのしもうね。」
罪悪感のせいだろうか?
無理矢理笑みを浮かべた凛花の目をまともにみることはできなかった。
でも、後になって『あの時ちゃんと凛花の言葉の意味を確認しておけばよかった。』なんて後悔することになる。
この話を読んでから三十一話を読むと‥‥
気づきましたか?




