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三十二話


そして、昼休み。

気づかぬ内に誰かが背後に回り込んでいた。

前方に跳躍して向き直り、ポケットを探る。


しまった、仕事中じゃないので、なにも有用な道具を持ち歩いていない。


‥って、凛花か?



「なにしにきたんだ?」


「えっと、、一緒に食べたいなぁって思ってきたんだけど‥‥だめ‥‥かな?」

凛花が期待と不安の入り混じった表情を浮かべている。


「いや、ダメじゃないが‥とりあえず、場所かえるか?すまない、トモヤ、今日も昼メシは別々になる。」

そう、眞姫那の件もあり、最近、あまりトモヤと一緒に食べれていない。


もしかして、1人で食べているのだろうか?

後ろ髪を引かれながらも凛花の後を追った。







「凛ちゃん。見たよ?とうとう彼と付き合えたんだ?よかったね?」


私は川内琴羽。

凛ちゃんとは高校からのお友達なの。


普段から明るくて人気者の凛ちゃんは男女問わず人気者‥‥なのに、最近までずーっと片思いしてたんだよね。



その恋がどうやら実ったらしいの。

まぁ、相手は超地味な感じの男の子。

正直に言うと凛ちゃんは全然似合わないと思うんだけど、たぶん言ったら怒ると思う。




「うん、ありがとう。」

凛ちゃんは友達の贔屓目なしに可愛い笑顔を浮かべた。


「それにしても、『シンシンが二股かけてるって噂を流してくれないかな?』なんて言うからビックリしたけど、どんな魔法つかったの?」


そう。数日前に変なことを頼まれたの。

そして、この結果。


正直言って私はこの可愛い友人が少し恐ろしくなってしまったの。少なくとも今後彼女を敵に回す事だけはやめておいた方がいいと思う。



「シッ‥‥その件はヒミツだから。」

凛ちゃんは困ったような顔を向けた。


こうして見ると第一印象と同じ、『ものすご〜っく、可愛いだけのフツーの娘』に見えるんだから本当にタチが悪いの。


綺麗な薔薇には棘があるとか言うけど、本当は『すごく可愛くて、フツーの人』なんてこの世には居ないのかもしれないね。



「そうなんだ?じゃあ、今度タピオカミルクティーおごって欲しいの。放課後は用事あるんでしょ?」


「ふふっ、ありがと。シンシンと一緒に帰るの。だって、私、、『彼女』だし」


凛ちゃんがさっきとは打って変わって、だらしのない表情を浮かべた。正直言って、凛ちゃんは男の人があまり好きではないと思っていたんだけど。


「いいなぁ。私も彼氏欲しいけど、凛ちゃんほど好きな男の子いないの。それにしても、行き過ぎた『好き』は呪いに似ているんだなっ‥ヒッ、、じょ、冗談なの。」


ゆ、友人の顔が‥‥こ、怖い。



「フフフッ、、琴羽も誰かを好きになれば分かるよ。世界が輝いて見えるんだから。」


さっきとは一転して、幸せそうに微笑んだ凛ちゃんは誰よりも可愛く見える。


その姿に私はなぜだか背中がゾクリとした。


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