三十一話
「シンシン、元気ないね?どうしたの?」
翌日の登校中、凛花が俺の顔を覗き込む。
そう、凛花は朝迎えにきたのだ。
正直、タイミング的には最悪だよ。
「凛花、どういうつもりだよ?そんなことするから二股疑惑なんか出てくるんだろ?」
そう、最近、凛花が付きまとって来なければ二股なんてウワサにならなかったのに。
とはいえ、凛花には本当に不名誉なウワサで申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「そっかぁ?シンシン二股してるんだ?」
「ちっ、が〜ぅ。俺は二股どころか、誰とも付き合ったことないのに、凛花と転校生と二股なんて話がでてるんだからな。」
せめて地味な美咲さまとでも付き合えれば良かったのだが、なんだか最近ちょっと距離を取られている気がするんだよな。
「ふふふっ、、そうなんだ‥‥‥?あっ、、、それなら、良い考えがあるんだけど。」
そういう凛花の意見に乗ったのが間違いだと気づくのにそう時間がかからなかった。
「おいっ、、、凛花ちゃんと手を繋いで登校したってウワサになってるけど本命はやっぱり凛花ちゃんだったんだな?お前がフラフラした奴じゃなくて良かったぜ。」
トモヤは俺に軽く肘打ちをかましてきた。
一応、祝福してくれているのだろう。
まぁ、凛花と付き合ってるなんて嘘なんだが。
そう、二股疑惑の解消の為に凛花と俺がラブラブだと見せつける作戦なんだよな。
「まぁな。凛花はいいやつだし、妹の弥生とも仲が良いし、俺にはもったいない奴だ」
俺はなんとかそう返したが、トモヤにウソだってバレていないだろうか?
「橋本くん?今の話本当なの?」
委員長が聞いていたらしく、こちらに寄ってくる。盗み聞きなんて趣味悪いな。
「あぁっ、本当だ。生まれて初めて彼女が、できちゃったよ。」
「そっかぁ、良かったじゃない。」
言いながら委員長は右肩をバンバンと叩いてくる。合わせて、無言で左肩を美咲さまにバンバン叩かれているのだが、意味がわからん。
「そうだな、ありがとう。それより、なんで2人とも叩くのをやめないんだ?正直言って痛いんだけど。」
「フフフッ、痛いのは橋本くんだけじゃないってことよ。」
委員長が笑みを浮かべているところをみると、何か冗談を言ったのだろう?
それなのに全く笑いどころがわからない。
というか笑みが怖い。
「はぁ、なんでわたし達‥‥な人‥き‥なっち‥‥‥のかな?」
案の定、委員長はため息をつきながら何やらブツクサ呟いていた。本当に何が悪いのか分からないのがタチがわるい。
「なんだか腑に落ちない。おいっ、トモヤ。別の話しよう」
「うーん。じゃあ、怖かった話しようぜ。」
トモヤはあっさり乗ってくれた。
しかし、いきなり突拍子も無い話題だな。
何を話すか?
‥‥あっ、、、アレがいいな。
「わかった。あれは確か1ヶ月くらい前のことだったな。その日は特別暑くてなぁ、身体に纏わりつくような雰囲気が寝苦しくて目を覚ましたんだ。」
俺はわざと回りくどく話を始める。
「おうっ、それからそれから?」
「ゆっくりと目を開けるとそこには闇だけが広がっていた。それでも、少しすると目がなれてくるもんなんだよな。窓の外に人影が見えたんだ。」
「ふんふんっ、それで?」
「よく目を凝らすと、窓の前で誰かが何かしている‥‥そして、、、鍵が閉まってた筈の窓が開いた。俺は怖くて目を瞑る。もちろん、寝たふりをしたんだ。目を瞑ると他の感覚が鋭くなるんだな。誰かが俺の眼前まで近づいてきたのがなんとなくわかるんだよ。俺は薄っすらを開けてしまった。俺の眼前には‥‥何が見えたと思う?」
「それはその不法侵入者じゃねぇのか?」
「そう、髪を振り乱して、白いワンピースの彼女の顔がドアップ‥5センチ位の距離にあったんだ。そして、彼女はゴソゴソ何かをとりだしたんだよ。」
「それって、、まんま貞○じゃねぇか?」
「まぁ、近過ぎてピントが合ってなくてなんとなくだけどな。彼女が何が目的なのかわからないが、『ワイー、ワイー』って謎の言葉を呟きまくってて、とにかく恐ろしかった、だから俺はそのまま目を瞑ってやり過ごした。自分の身体が1人でに震えるのがわかったが、俺は死にたくない。だから、頭を空っぽにしたんだよ。」
「おいっ、それでどうなったんだ?」
トモヤは急かせるように俺の右肩をパンパンと叩く。ホントに痛いんだってば。
「それで、、、目が覚めた。」
だから、俺はひっぱることもなくオチを話した。
「ふざけんな、夢オチか?」
トモヤが顔をひきつらせる。
「言っておくが実話だからな。」
「いや、夢の話が実話とかわけわからんぜ。」
いや、たしかにトモヤの言う通り、夢の話が実話とかわけわからないな。ただ、現実と見間違うほど鮮明に思い出せるんだよな。
まぁ、うまいこと凛花の件は誤魔化せたようだ。




