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三十話


その日の仕事は特別ルールとかで、何故だか2人でチームを組むことになった。


「俺は橋本シンヤ。よろしくな。」

「莉奈‥‥デビュー戦でノラと組むの‥1人の方が楽だった。」


ツインテールな少女が悪態を吐く。

えっ?どう見ても高校生以上には見えない‥というか小学生にしか見えない。


それに、ノラってなにかの俗語なのだろうか?

俺にはわからない。



可愛いから、手取り足取り教えてあげようと思ったのに、想像と違いかなり生意気な口調だ。



「ん?デビュー戦なのか?デビュー戦で朱鷺田楓さまだなんて、なかなか不運だな。」

「簡単。だよ?」


莉奈は不思議そうに首を傾げた。

そこに驕りは感じられれない。

新人で子供のくせにやけに自信過剰なんだよな。



まぁ、失敗して学ぶということもあるし、先輩としてフォローしてあげるか。



「いや、赤外線スコープを見てみろよ?」

俺がスコープを渡すが、莉奈はそれを受け取ることはなかった。いやいや、いくらなんでもそれはなくないか?


「ガラ空き。‥んっ、あのビル‥?」

そう言って、全然新人らしくない自信に満ちた足取りで近くのビルに向かっていく。



相棒がいるのに、好き勝手に動いて。

‥まるで子供みたいだ。いや、見た目は完全に子供だが。


しょうがなく、俺は保護者の気分で彼女の後を追うのだった。




長い階段を走って屋上までたどり着いた。

一体、なんのつもりだろうか。

上から見たら何か警備の弱点でも見えるとか?


屋上から下を見下ろすとなんだか自分が偉くなった気すらしてくるが、俺の頰を撫で付ける夜風はなんだか生暖かくて不快だった。


大体、こんなところで時間のロスをしている場合じゃないだろう。俺はやはり先輩として彼女を窘める事に決めた。



「じゃあ、お先。」


しかし、俺の予想に反して彼女は小型のハンググライダーで宙に身を躍らせた。



ウソだろ?


しかし、俺の感想とは裏腹にハンググライダーは順調に目的地に向かっている。まるで風の谷の姫さまみたいに上手く風に乗っていた。



ヤバイ。



俺はハンググライダーなんて持ってないし、持ってたとしてもあんなに手足のように操ったりはできない。完全に出遅れてしまった。



ヤバイ、ヤバイ、ヤバイって。

さっきからヤバイしか言葉が出てこない。



俺ってば女子高生かよ?



俺は彼女のように宙を駆けることなんて叶わない。

だから、全力疾走で朱鷺田邸に戻るのだった。




「遅すぎ‥」

そして朱鷺田邸前についた時点で、莉奈はなぜか俺を蔑むような表情を浮かべて立っていた。


あれ?

なんでもう居るんだ?


「おいっ、仕事はどうした?」


「終えてきた。」

莉奈は髪をかきあげる。



「ウソだろ?楓さま、食べるの遅いはず。」


「‥‥?待つ必要なんてない。ほら、完了承認も入ってるし」


莉奈はスマホの画面を見せる。



「えっ?それで良いのか?」

「‥‥報酬が折半だなんて‥1人でやった方がずっと良かった。」


俺は今回役立たずだったので何も言い返せなかった。


それにしても、隙が殆どないと思っていた警備の隙は空にあった。なんてダレが想像つくよ?



それにハンググライダーなんて乗れないし、そんなに金がかかる乗り物は練習する気にもならないな。



「さようなら。2度と会うこともない」

ひどく冷めた口調でそう告げると、ゴールデンルーキーはさっさと帰って行ってしまった。



‥‥あれ?

おかしいな。


涙が止まらないや。。。


まさかの味方。しかも少女に打ちのめされて、俺は背中を丸めて家路に着くのだった。

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