二十三話
それから一週間はアプリを開く度にビクビクしていた。しかし、それは杞憂だということがわかった。
一回で二回分依頼を達成できなかったのに、俺はファイブスターから落ちることはなかったのだ。
結局運営にも確認したから間違いない。
どうやら、2つの依頼に同時に2人の配達人がエントリーしたようで、システム上のミスでノーカウント扱いにしてくれるらしい。
「それにしても、木下さん。すっかり委員長と仲良くなったよな。」
昼休み、チラッと美咲さまを見てホッと胸を撫で下ろした。
「なになに?自分に懐いていた娘がすっかり他の人に懐いて寂しいのか?」
自分にしか懐かなかった臆病な犬が他の人に尻尾を振って甘えているような、少し寂しい気持ちにならないと言えばウソになる。
ただ、転校後、男の友達しか居ない女の子とか絶対に同性に嫌われるパターンだからな。
ここは生暖かい目で美咲さまを見てあげようと思う。
不意に美咲さまがコッチを向いた。
そして、俺に向かって手を振った。
うーん、、まだ俺への好感度は高いようだ。
まぁ、俺の場合は餌付けで好感度を上げてしまっているから、母鳥を慕う雛のような気持ちなのかもな。
それにしても、今の手の振り方、なんだか既視感があるのだが気のせいか?
「いや、別に寂しくはないな。それよりも気になるんだが、トモヤ、なんでレイヤードの美咲さまから葵ちゃんに推し変したんだ?」
俺がそう言うと、トモヤが固まった。
あまり触れられたくない話題だったかもしれない。
「おいっ、シンヤ。教室でする話じゃねぇだろ?」
トモヤは小声で言うと、この話は終わった。
昼休み
俺たちは屋上にいた。
「シンヤ。お前、本当に気づいてないのか?」
弁当を広げながらトモヤがわけのわからない事を言う。
「わるい。トモヤの言いたい事がわからないな。」
俺に行間を読めっていうのは無理な話だ、、自分で言っていて悲しくなるけど。
「マジなのか?うーん、、じゃあいいぜ。俺が推し変をしたのは、やっぱり、アイドルってのはある程度ミステリアスさが必要だからだよ。
会いに行けるアイドルって言ってもアレだってある意味余所行きの顔だろ?素の表情を見て、アイドルも普通の娘だなんて思ったらちょっと応援しにくくなるんだぜ。」
「言いたいことがますますわからないんだよな。まぁ、トモヤの自由だから別に構わないよ。なんか悪かったな。」
俺は素直に頭を下げた。
トモヤはトモヤで確固たるアイドル論があるんだから俺が口を挟む問題ではない。
ただ、数日前までミサミサ、ミサミサって言ってたのに急に推し変したからビックリしただけだし。
「それよりもさ。橋本、水下のことどう思ってるんだ?あれだけなつかれたら、悪い気はしないだろ?」
「ぁあっ、まぁ、悪い気はしないな。とはいえ、あれは恋じゃないだろう。」
そう。
弥生や凛花が言うには、俺は残念ながら全然モテないらしいからな。勘違いするところだった。
「そうか?まぁ、俺も女心がわかる訳じゃないからな。まぁ、美少女ゲームみたいにわかりやすく好感度が出てくれればいいのにな。」
トモヤはそんな事を言うが、コイツはイケメンだからモテるんだよな。
たまに告白とかされてるからな。
でも、付き合ったりはしない。
リアル女に興味はないらしい。
ちなみにアイドルは別枠なんだとか。
「好感度なんかが出たら、俺、死ぬほど凹みそうなんだが。誰の好感度もゼロとかホントに立ち直れないぞ」
いや、むしろマイナスすらあるかもしれん。
「いや、心配するなよ。俺のシンヤへの好感度はかなり高いぜ。」
トモヤは真顔でそう言う事を言うからタチが悪い。
握手を求められて、ガッチリと握り返したが、トモヤがそっちの方の趣味の人ならどうしよう?
一部の女子の妄想の対象になるのは勘弁だ。
俺の戦慄の冷や汗でキンキンに冷えた身体にハグまでしてくれるフレンドリーなトモヤは果たしてギルティなのか?それともノットギルキティーなのだろうか?
その日、俺は眠れない夜を過ごすのだった。




