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二十二話

とうとうストックが切れてしまいました。



「うわぁ〜っ。ウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだぁ〜っ。」


俺は思わず力の限り叫んでいた。



それからどれくらい経っただろう?



一瞬?

それとも1分?

それとも1時間くらいか?



永遠にも感じられる時間自我を失っていた俺は急に声をかけられて我に返ると、



「あれ?まだ居たんだ?鈍臭いわよね。アシストありがと。それじゃ、バ〜ィ」

先程の女の子が甲板から海に飛び込む所だった。



もしかして、Mって今の女の子か?


なんだか聞き覚えのある声。

‥‥思い出せない。




それからどうやって家に帰ったか覚えてはいない。気付くと家の畳に横たわっていた。


台所からはトントントンと小気味の良い音がする。


俺はそれが子守唄のように感じられて、そのまま眠りに落ちそうになり、思い出す。



「あっ、夕飯当番。今日は俺じゃないか。」

気づいてガバッと起きだすと、台所を見る。


フリルのついたピンク色のエプロンを付けた弥生が夕飯を作っている。


弥生はきっと良い嫁になるだろう。


直ぐに弥生と当番を変わろうとして弥生に声をかけた。


「弥生、すまない。当番変わるな」



「お兄‥‥顔色悪いよ。寝てなよ」

しかし、弥生が首を横に振る。


顔色?

あぁっ、初夏とはいえ海で泳いだからな。

体調を崩したのかもしれない。

正直言うと身体に力が入らなかった。


「何かあったの?」

手を止めて弥生が問いかける。



「あ〜っ、、ちょっと仕事で海に入ったから、ちょっと疲れただけだ。もう大丈夫だ、変わるぞ。」



「もうっ、、そういうの、いらないから。格好つけたりしなくていいよ。」

弥生が苦笑する。


そう言われて俺は不調の原因に気付いた。


配達の失敗。

それが身体に異変が起きるほどショックだったのだろう。


それは俺が無意識に目を背けて、気づかなかった、紛れもない事実だった。


「あぁっ、、そうか?そうなんだな。弥生。お兄ちゃん、仕事で失敗しちゃった。それでショックを受けてるんだと思う。」

俺が本音を口にすると。


「そぅっ。」

とだけ言って、弥生は夕飯の準備をつづけるのだった。




夜中、、俺はリビングに布団を敷いて横になっていた。



ショックが少しマシになったと思ったら、今度は悔しさがこみ上げてきた。


Mはあの女の子だったんだよな?

なぜあの時、あの娘を介抱してしまったんだろう?



いや、人として当然のことなのだろう。

でも、結果的にそのせいで‥‥


それも違うな。

船にたどり着いた時点でもう達成した気になっていたんだろう。


武道で残心という言葉がある。

これは技が決まっても心身ともに緩めないことだ。


例えば剣道では技が決まっても相手の攻撃や反撃を瞬時に返すことができるよう構えを解かず、心身ともに身構え続けること。


それが出来なかったということは、俺が未熟だったんたろう。





考えても仕方がないのにさっきから思考がループしてしまっていて、寝れそうにない。


とりあえず目を瞑ってるだけでも少しは疲れが取れるというが、そんな感じはしないな。



その時、隣の部屋から誰かが出てきた。

足音からいって弥生のようだ。



きっと、お花を摘みにいくのだろう。


しかし、弥生は俺の前に立ち止まって、そのまま座り込んでしまった。


そして、俺の頭にそっと手を触れて、そのまま前後に動かした。あっ、ナデナデされているのか?


‥ど、どうしたらいい?



しばらく寝たふりを続けるが、どうにも落ち着かなかった。しかしそれも慣れてくると、髪の毛を触られるというのはなかなか心地良い。


だから、そのまま眠りに落ちてしまった。

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