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十八話

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よろしくです。


昼休み。


俺とトモヤは前後で机をくっつけたが、美咲さまも隣で机をくっつけたまま弁当を広げた。


それを見て思わずツッコんでしまう。



「み、水下さん。それ、仕出し弁当?」

そう、パッケージの素材が紙だ。

それに、正面にデカデカと草書で【ぎんべえ】と書いてある。


「うん。そうだよ。昨日このお弁当が出てきたんだけど、食欲がなくて食べれなかったの」


そう言って小さく舌を出した美咲さまを俺は殴りたくなった。




だって美咲さまってば、昨日夜パンケーキ食ってたからな。どこが食欲がないんだよ。



昨日お届けした時間を考えると、この弁当が出たのは昼メシ時なのだろう。



それにしてもうまそうだ。


銀ダラの西京漬。

卵焼き。

マカロニサラダ。

などなど合計6種の和食の真髄が詰められたお弁当だ。



口内から唾液が自然と溢れてくるのも仕方がないだろう。



「ん?食べたいの?あ〜〜ん。」

それを見ていた美咲さまがあろうことかあーんを強要してきた。



「いや、水下さん。もう、そんなのにつられて口開けたりしないよ。」


美咲さまがお客さんで、部屋の中であればサービス精神で口を開けていたかもしれない。



しかし、今はクラスメイトが沢山いる教室だ。

あ〜ん、なんてすればどんなウワサが立つかわかったもんじゃない。




「そう。それじゃ、あ〜ん。」

美咲さまがまたあ〜んを強要する。

‥‥というか人の話聞いてないよね、この娘?


「なぁ、シンヤ。もしかして、お前ら、付き合ってる?」

トモヤが不機嫌そうな表情を浮かべる。


「付き合ってる?そんな訳ないだろ?ほら、水下さんも何とか言ってくれ。」

俺は美咲さまに助けを求めるが、、


「あ〜〜ん。」

美咲さまは箸で銀ダラを掴んで、俺の口に運ぼうとしている。あまりにマイペース過ぎる。


「いや、もうそれはいいから。」

俺は首を横に振るが、、、


「好きなんでしょ?」

美咲さまに耳元でそう囁かれてドキッとした。


「お、お前ら、マジか?」

トモヤが身を乗り出すが、誤解にも程がある。



「いや、違う。ほらなんとか言ってくれ。美咲さ‥アガッ」

俺が話している途中で、無理矢理口の中に何かを突っ込まれてしまう。



「う、、うまい。」

こ、こ、これは銀ダラの西京漬だった。


そう、見た目でも相当美味しそうだったが、想像を遥かに超えるうまさだ。


西京味噌の味が染みているのはもちろんのこと、魚の脂、旨味のバランスが絶妙で、まるで味の黄金比のよう。


それが口の中でホロッと解けると、思わず涙が出てきそうだ。



「ど、どうかな?」


美咲さまは、まるで手作りのお弁当の感想を聞くような、不安と期待と照れ臭さの混じった表情を浮かべる。



しかし、これは明らかにプロの仕業だ。

それに、本人も仕出し弁当だと認めていただろ?



「いや、初めて食べたけど、美味しいな。」

正直食べ足りないが、一口食べさせてくれただけでもありがたかった。


「良かった。」

ホッと胸を撫で下ろした美咲様を見ていると、本当に手作りと錯覚してしまうからやめてほしい。



「はいはい。付き合ってるなら、隠さず話して欲しかったぜ。はぁ、帰りに藁人形買って帰るか。」

トモヤが怖いことを口走るが、完全に誤解だ。



「あの、、まだ、、、付き合ってない。」

美咲さまは誤解を訂正してくれたつもりなのだろうが、なぜ【まだ】をつけてしまうのか?


ワザとではないと信じたい。



「いや、水下さん、それって誤解を生む表現って気づいてないのか?」


「どうしたの?」

美咲さまは首を傾げた。



ダ‥‥ダメだ‥

この人、、ド天然だぁ〜っ‥‥



「いや、まぁ、いいや。それよりクラスの女子と一緒に食べた方がいいんじゃないかな?」

こうなったら有耶無耶にするしかない。

だから、俺は早速話を変えた。



「でも、私、嫌われたみたいだから。」

しかし、美咲さまが俯き加減に答える。



「いや、まだ大丈夫だろ?それよりちゃんと他の人とも話した方がいいと思うぞ。」


あれ?期待した反応と全然違うが、やっぱり、人付き合いは苦手かぁ、人に合わせる気とかなさそうだもんな。



「だって‥‥私、、人見知り。」

「ちょっ〜と、ストップ。この話は後でしようか。」

俺がそう遮ったが、もう遅かった。


人見知りの美咲さまと俺が普通に喋れているということは‥‥



「やっぱり、シンヤ達、知り合いだったんじゃねぇか?どういう事なんだよ?」

トモヤが気づいてしまった。



「いや、まぁ、たまたま少し話したことがあるだけで、俺は彼女の趣味嗜好、家族構成、友達のこととかなにも知らないんだぞ」


これは事実だ。ウソじゃない。



「私も知らない。この学校に通っていることと、宅配のバイトをしていることと、可愛い妹さんと幼馴染さんがいる事位しか。」


いやいや、美咲さま。人間、なんでも素直に話せばいいってもんじゃないからな。



「いや、シンヤについてやけに詳しいじゃないか。それにしてもどこかで見たような。」


「トモヤ、ナンパでもしてんのか?」


そう、『知り合いに似てて』なんて古典的なナンパ手法だ。トモヤの場合、なまじイケメンなだけに成功してしまいそうで怖いけど。



「するか?俺はミサミサ一筋だ。」


トモヤは譲れない部分だったのか、壊れたスピーカーのような大音量で主張した。なんなら若干ビブラートがかかっていた。



「ありがと。」

それに反応したのが、意外にも美咲さまだった。

はっきり言って意味がわからない。


いや、美咲さまの言動は大抵は『意味わからない』で出来ているって言っても過言じゃないけど。



「はぁ?あっ、、、」

トモヤは奇妙なリアクションをした後にだまりこんでしまった。


「委員長。悪いけど、転校生の面倒お願いできないか?」

なんだか空気が重くなってしまったので、美咲さまをサッサと手放すことにした。



「えっ、あっ。しょうがないわね。貸し一つだからね。」


「あ〜っ、悪いな。」


「本当に悪いと思ってるなら、体育祭の準備手伝ってあげてよ。」


委員長は半分冗談、半分本気のテンションでそう返してくるが。



「善処する。」


とだけ答えると委員長は深いため息をついた。

口先だけなのがバレたのかもしれない。



それからは気楽にトモヤと昼飯を食ったが、トモヤの様子が変なのにはさすがに気づいた。



頻りに美咲さまをチラ見するのだ。

もしかして、惚れてしまったのか?

そうか、トモヤってば眼鏡萌えだったのか。



「とうとうトモヤにも春がきたか?」



「あっ、何か言ったか?」

トモヤは怪訝そうな顔で俺を見るが、よく考えると教室でする話じゃないな。



結局、今日は授業の殆どを美咲さまと密着して受けた為、全然身が入らず放課後となった。

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