十二.五話 〜M-side〜
Mは美咲のMです。
「ミサキ様。お待たせいたしました。今日もchamp d'amourのイチゴのパンケーキをお持ちしました。」
彼はライブ後に控え室にいかなかったことなど、何も気にしていないような態度でした。
私はただのお客さん。
‥‥だもんね。
今日は寮の私の部屋に呼び寄せてしまいました。男の子を部屋に上げたの初めて。
「橋本さん、いつもありがとう。」
「いえっ、お仕事ですから。美咲さまもお仕事頑張ってライブを成功させてましたね。私はこの仕事しかしたことはないのですが、美咲さまの仕事ってやっぱりやり甲斐がある仕事なんですか?」
お仕事‥‥だもんね‥‥
「うん。ファンの皆さんが喜んでくれますし。ところで、ライブ後になぜ控え室に来てくれなかったんですか?」
私は橋本さんを責めるつもりではなかったのに、不満が口を突いて出てしまいました。
「ちょっと待って下さい。ライブ後だとレイヤードの皆さんが居るし、そんな所まで一般客が入れないと思いますよ。」
そんなことは分かっているからちゃんと根回ししておいたんだけど、、、説明不足だったのかな?
「私が警備の人に話を通してたのに。」
憎まれ口のように口を尖らせてしまう。
「そりゃあ、勿体無いことをしました。結衣ちゃんに会えたかもしれないのに。」
橋本くんは悔しそうに下唇を噛んだ。
えっ、結衣ちゃんのファンなの?
よりにもよって5人の中で結衣ちゃんなの?
「ゆ、、、結衣ちゃん、、が好きなんですか?」
もしかして、橋本さんも◻︎リコンなの?
結衣ちゃんファンの半分くらいがそうなので、私は疑いの眼差しで橋本さんを見つめました。
「ああっ、もし出会えたら、俺を見直して毎朝起こしてくれるかもしれなかったのに。」
橋本さんは夢見心地の表情で妄想のような話を続ける。
‥‥◻︎リコンとかそんなレベルじゃない、変態さんだった。結衣ちゃんと会えたら誘拐でもするつもりだったのかも‥‥
「えっ、あっ、そうなんですか?あっ、パンケーキ美味しい。」
私はわざとらしく話題を変えてしまった。
正直言うとこのまま彼の話を聞き続けても、悪い予感しかしなかったんだよね。
「えっと‥‥結衣ちゃんのサイン‥‥申し訳ございません。今のは忘れて下さい。」
彼は仕事中だと思い出したのか、サインの催促を諦めました。でも、やっぱり、結衣ちゃんの大ファンだったんだ。
「フフフッ、橋本さんって本当に仕事の時は真面目ですよね。そういうところ、私は好きです。」
私がそう言っても橋本さんは照れるどころか明後日の方向を見つめていた。
「‥あの、、、タンスの1番下、、、開けっ放しなのですが、、、」
橋本さんの視線の先を追ってみると、、、タンスの1番下、、下着が入っている段が開けっ放しで丸見えでした。
「あっ、嘘っ‥‥。」
「紫‥‥意外と派手な色も「違うんです。誕生日プレゼントに葵ちゃんから貰った‥‥えっと、、あの‥‥‥その‥‥‥何見てるんですか?」
外でつけるのは恥ずかしくて、結局オフの日にしか着けたことないんだけど。
「なんだ、着けたことないんですか?困りますよね?こういう使えないもの送られても。」
橋本さんもそういう経験があるのか、まるでニンジンを食べた子供のような苦々しげな顔を浮かべていました。でも、着けたことはあるんだけど。
「あの、、、その、、、」
「どうしました?」
橋本さんはいつものゼロ円スマイルを浮かべている。
「えーっと、オフの日は着けたりするかな。」
私はなるべくさり気なさを装って答えたけど、、やっぱり恥ずかしくて、頰が熱を持つ。
「えっと、、、何をですか?」
しかし、鈍感な橋本さんは気付いてはくれなかった。
「だからコレをですよ。」
私は思わずタンスから紫のショーツとブラのセットを取り出して説明してしまい、、、顔が溶けるほど熱くなる。
「あぁっ、なにかすみませんでした。それでは片付けさせていただきます。」
いつもの橋本さんなら全く涼しい顔をしてお仕事をするのですが、今日に限っては、頰が桃のようにほんのり染まっていてなんだか可愛く見えた。




