十一話
ある日の放課後。
今日も凛花がついてきたので2人で下校する。
ほんと最近までは毎日一緒に帰るなんてレベルまでは仲良くなかった気がするんだけどな。
いや、今日は弁当の件か?
「シンシン、今日もバイトするの?」
しかし、凛花の第一声は弁当の話ではなかった。
でも、意外でもないか。
『いきなり本題から入ると、俺に警戒心を抱かせてしまうかもしれない。』
そう考えて、まずは軽い話から入っているのだろう。
これは俺が仕事で稼ぐ為に身に付けたアイスブレイクとかそういったものと同じような物。
しかし、俺とコミュ力が違うせいか、凛花はこういったことを無意識でやってのけるのだから本当に敵う気がしないな。
「あぁっ、もうすぐアプリを立ち上げるよ。あと弁当ありがとな。すごくうまかった。でも、今後はこういうのは‥」
クラスメイトに『藤宮と付き合ってるのか』なんて聞かれてしまった。そんな訳ないのに。
以前は鷺沢だったよな。
久し振りに会って苗字が変わっていてビックリした。
「ごめんなさい。(噂されるのとか)イヤだよね?」
凛花が表情を曇らせた。
「まぁ、あまり気持ちのいいものじゃないだろ?凛花は周りにいる人間の考えも気にした方がいいぞ」
女の子達の方がうわさ好きだからな。
何を言われているかわかったもんじゃない。
「そ、そうなんだ?私ってシンシンのこと何にもわかっていないんだね。気持ちも考えずにごめんなさい。」
あれ?
なにかボタンを掛け違えたような凛花の反応で、俺は凛花の真意を訪ねようとした。しかし、そのタイミングでブーッ、ブーッ、ブーッ、ブーッ、とスマホが震えてしまう。
俺はまるでパブロフの犬のように反射的にスマホの画面を見つめる。
「ぁぁ〜っ、またかぁ」
そして、ガックリとうなだれた。
「どうしたの?」
凛花が俺のスマホを覗きこもうとしたが、俺はすぐに画面を隠す。
別に凛花に意地悪したわけじゃない。
仕事には守秘義務というものがあるんだ。
「悪い。いくら凛花にでも仕事の内容だから見せるわけにはいかないんだよ。」
「ごめんね。また他の女の子のところいくの?」
凛花は迷い子のように不安そうな顔を隠そうともしない。しかし言ってることは、本当に凛花らしくない。
「いや、まるで俺が遊び人みたいな言い方は勘弁してくれ。まぁ、レイヤードのチケットくれた人だよ。お礼も言いたいし、、ちょうどよかったかもな。」
そう、お礼に品物やお金は渡せないが、頭を下げたりお礼を言うのはタダだ。プライスレス。
「そっかぁ。私の分もお礼言っておいてね。ところで、ちょっと気になったんだけど。シンシンがやっている宅配のお客さんって、依頼人が数人の女の人しかいないよね?それってランダムに依頼者がふりわけられてるんじゃなくて、指名制か何かじゃないかな?」
首を傾げた凛花はなかなかに可愛いのだが、やはりカワイイモンスターである楓さまには少し及ばない。
それより妙に気になるワードが出てきたな。
通常、スイーツを注文する側は配達員を指名出来ないはずだが‥‥そういえば今更だけど四天王以外から配達依頼がこないのも不自然だ。
もしかして、配達人を指名とか出来るのだろうか?
だとしたら指名料とかが発生するはずだが、OBER社からはそんな話は聞いていない。
【もしかして、OBERが指名料を配達員に内緒で搾取しているのでは?】
そんな疑問が頭の中をよぎったが、OBERに直接聞くのは愚の骨頂だ。自分で自分の悪事を告白する悪党は世の中にはいないからな。
ということは、まずは情報収集からだな。
美咲さまにそれとなく確認してみよう。
俺は家に帰ってすぐchamp d'amourに向かう。そして、また瀬川さんからセクハラを受けるまでがルーティーンだ。
そんなルーティーンいやっ。
「はいっ、シンヤちゃん。今回はこのマイクロSDを渡してくれって言われたわ。」
手渡される時に手をギュッと握られた。
だから、セクハラはやめろ。
ウィンクもやめろ。
まぁ、それは置いておいてスマホにマイクロSDを入れ込んだ。そしてお届け先を見て驚くこととなる。




