九十七話
お待たせしてすみません。
ブクマ、評価ありがとう御座います。
とっても嬉しいです。
「いや、歩きにくいんだけど。」
左腕にまとわりつく莉奈に俺はウンザリと戸惑いが半々の複雑な表情を浮かべる。
「んっ?あっ、、はい。」
莉奈は身体を少し離してから小さな右手を差し出す。
手のひらを上に向けている所から推測するに雨が降ってきたかを確認しているのか?
あっ、、、。
そのタイミングで俺の頭に天啓が降ってくる。
わかったぞ、、莉奈のこれはアレか?
【お菓子をくれないとイタズラしちゃうぞ】
英語でいうとtrick or treatってやつか?
季節外れにも程があるぞ。
4月1日以外にウソをついちゃうくらいにはわかりづらいな。
しょうがなく、アメ玉を彼女の手に乗せた。
「また、【最適解】が外れ。やっぱり凄い。」
凄いとかいうワードはベッドで聞きたいワードだけど、そんな事は小学生に言うと社会的に死んでしまうので話題を展開する。
話題の展開の基本は質問だ。
まぁ、この場合は自分が気になる事を聞くのではなく、相手が話したい事をあえて聞いて盛り上げる為に使うのだけど。
「そういえば、スカイダイビングって結構やったことあるのか?」
「いえ、シュミレーションでも2桁もない。でも、最適解の通りにやっても負けるなんて」
ん?
あぁ、今回は俺が勝ったからか。
まぁ、残念ながらスカイダイビング勝負に勝ったのは結果論でしかない。完全に目測を誤り、目標地点を越えそうになったのでいつものワイヤーを目標地点に向けて射出して、それを自動巻き取りして無理やりゴールしたのだが、、、うん、、それでも莉奈とのタイム差は数秒差だったし。
なんなら、俺は着地できずに転倒する始末だ。
それで経験が二桁もないなんて、、、とても勝ったなんて言えるようなものではない。
でも、少なくとも莉奈は負けたと思っているようで、勝負の前と後ではまるで態度が違う。
なんだ?
勝負に勝ったから相手に従う?
異世界系の獣人の文化みたいだな。
まさか、嫁にしてくれとか言わないだろうな。
「ところで最適解ってなんだ?」
先ほどから気になっていたパワーワードについて聞いてみる。
ちなみに最適解というのは莉奈の名誉の為にあえてちょっと意訳している。なにしろ、本当は『アカシック‥』、、、てこれ以上は彼女の名誉の為に口が裂けても言えない。
俺の質問を耳にした莉奈の動きがピタリと止まる。
そして、顔が桜色どころか、赤色1号を入れたくらい真っ赤になる。もちろん、耳まで真っ赤だ。
そして、不自然なほどゆっくりな動作で俺の方に向き直る。そして、透き通った瞳いっぱいに俺を映してひとこと。
「声に出てた?」
いやいや、普通に喋ってたよ。
というか、クール系美少女面して実は単なる厨二病系天然ボケか?
属性が多すぎて収拾つかないぞ。
こういう時はまぁ、話を変えるか。
「ところで、あのレイヤードの結衣ちゃんと姉妹なんだってな。」
すると、なぜか頬を膨らませる。
まぁ、彼女の場合、表情が豊かではないのでそう見えたというレベルなんだけど。
「ん?あんまり触れられたくなかった。 」
地雷を踏み抜いてしまったのか、俺は慌ててフォローに入ろうとするが、なぜ不機嫌になったかわからない。
『私が今、なんで怒ったかわかる?』
なんて言う面倒くさい彼女を宥めるような気分になりながらも、俺は選択肢を思い浮かべる。
「ううん、そういうわけじゃない、、他の女の話」
上目遣いでチラッと見上げる彼女の表情は特に狙ってやっているものには見えない。
ん?
裏は別にないのか?
「いや、まぁ、結衣ちゃんは莉奈と似ているだけあって可愛いなって話なんだけど」
直接莉奈を褒めるとちょっと口リ婚みたいな感じなので迂遠な感じでほめてみるがこれはこれでかなり気持ち悪い表現なのかもしれない。
ただ、よくよく考えると、やっぱり他の女の子の話ではある。
「どっちが可愛い?」
なんて聞いてきた。
ただ、答えは決まっている。
「莉奈にきまってる。」
だって結衣ちゃんは怖いのだ。
本当に怖いのだ、本当に本当に怖いのだ。
あれ?本音が止まらない。
莉奈は俺の言葉に気を良くしたのか左腕にまとわりつく力をますます強めた。
いや、ないと言っても多少はある胸の形を感じられてなんとも言えない気分になる。いや、これが美奈さまとか凛花だったらなぁ。
猿の手は望まぬ手で願いを叶えるというが、このタイミングで俺の目の前に凛花が現れた。
そして、引き攣った笑みを浮かべる。
「ねぇ、、小学生相手になにしてるの?」
そんな物騒なワードを携えて。
「いや、違うよ、凛花が想像しているようなことは何もないよ。うん、本当。」
そう、やましい事などなにもない‥よな?
緊張のあまり、喉が渇いてカバンからペットボトルを取り出してぐいっと水を飲む。
「そう、勝負にまけたから。」
莉奈は俺に同意するようにフォローの言葉を添える。ありがとう。本当にありがとう。
「ふぅん、罰ゲームってやつなのかな?いけないんだぁ、罰ゲームを盾に小学生の女の子にエッチなことさせるなんて。」
「ブーッ」
俺は口に含んでいた水をマーライオンばりに吐き出す。なんとか顔を背けたせいで、莉奈の手に少しかかったくらいで済んだ。
「いや、違う、誤解だ。」
「どこが誤解なのかな?こんなにべったりくっつかせて。」
言いながら右腕側に凛花が絡みついてくる。
左右を美少女(年齢差はかなりあるけど)に挟まれてまともな思考を手放した俺にはこの状況に抗う術はなかった。
どれくらい経ったのか?
まだ、夢から醒めないようで、俺の両腕は拘束され続けている。
「あれ?終わったの?せっかく見学に来たのに。」
ポカンとした表情を浮かべているのは美奈さまだ。俺にとっては救世主にすら見えた。
「いや、まぁ、そうだけど、た、助けてくれ」
「ふぅ〜ん、モテモテね。いつも、『モテてぇ〜』とか『ヤリてぇ〜』とか騒いでたし、良かったんじゃない?」
「いや、そんな思春期の中学生みたいな発言はしてないよ、なんて捏造してるんだ」
莉奈はぽかんとしているが、凛花は半眼でおれを見る。
これ、このまま弥生に報告されたら俺への軽蔑が止まらなくなるんじゃないか?
そんな不安と頭を抱えて俺は立ち竦むのだった。




