九十六話
ブクマ、感想、よろしくお願いします。
尻尾を振って喜びます。
「お買い上げありがとうございました。またのお越しをお待ちしております。」
美奈さまと共謀しておれを着せ替え人形みたいな扱いで何度も着替えさせた美人店員は一仕事終えたみたいな満足げな笑顔を浮かべた。
くそっ、、マジで頭おかしい。
なんで10回以上も着替えさせるんだ。
ともあれ、なんとか終わった。あとは自分の服に着替えてから帰れば何とか被害が最小限に抑えられる。主に俺のメンタルあたりの被害がだけど。
「あれ〜、おかしいなぁ。なぜ、会計を済ませてくれたのかなぁ?」
皮肉を込めてそういうが、美奈様は笑顔で恐ろしいことを口にした。
「あっ、、安心して、今日着ていた服は自宅に送って貰うように手配しておいたわよ。」
安心‥‥出来るわけがない。
ちょっと待て、俺、こんなフリフリのスカートで家に帰るのか?弥生になんて言い訳すればいいんだ?
『にいちゃん、ちょっと新しい扉を開いちゃったみたいだ。』って言えば‥‥いや、言い訳にはなっていない。
しかし、退路は断たれている。
こ、孔明の仕業か?
俺が戸惑っていると、
「何してるの?行きましょ。」
そう言ってなぜか手を差し出してくる。
もしかして、服の代金を払えと言っているのか?
無理矢理会計を済ませておいてそれはないだろ?
自慢ではないが、俺は金がない。
「ほらぁ。よしっ、いきましょ。」
しかし、美奈様は俺の予想に反して手を握って歩き出す。あれ、服の代金を払わなくていいの?
「いや、先払いだから。」
俺の視線から察したのか彼女は一言ぽつりと答える。
「ん?先払い?」
「ん、ほら、配達の、、、」
本来ならギブアンドテイクのはずが、何故だか彼女の口調には懇願の響きが灯っていた。
「もしかして、この格好のままでか?」
俺が引き攣った笑みを浮かべると、美奈さまは満面の笑みを浮かべる。
あれ?
もしかして、ハメられた??
「あははっ、、そんな訳ないじゃん。ちゃんと、本気で配達しなきゃいけないんだよね。だから普通の格好でいいよ」
美奈さまには似つかわしくない苦笑いを浮かべる。
彼女にはどちらかというと人を小馬鹿にしたような、それでいて悪意もなさそうな、無邪気な笑みがよく似合うのだけど。
ただ、俺は女の子を笑顔にするような気の利いたトークを扱えるコミュ力はないんだよな。
だから、流されるまま受け応えする。
「美奈さま、配達なら任せてくれ。」
「プッ、、、、、なんでキメ顔?」
しかし、期せず彼女の生意気そうな笑みを引き出せたようだ。ずいぶんと狙いとは違うんだけど。
いや、、俺ってば天然か?
そんな訳ないよな。
まぁ、本当に天然な子は『ワタシってよく天然って言われるんだよね。そんなことないのに。』
なんて全力で否定するらしいけど、、、
「いや、、女の子を励ます俺、青春してるぅ〜。なんて思っていないからな。」
「えっと君はわざと、突っ込まれ待ちなのかな?」
美奈さまは呆れた顔で顔を近づける。
自然と頬に羞恥という熱が溜まっていくのを感じる。いや、俺は笑われたいんじゃなくて笑わせたいんだけどな。
そんな、とりとめもない事を考えているうちに莉奈との決戦当日を迎えることになった。
スクールの近くのカフェで張り込む事、3日。
まだ莉奈は現れない。
ちなみにそこのカフェはバスクチーズケーキに、画家出身のチーフのデコレーションがかなり受けてかなり人気の店だ。
所謂、インスタ映えとかいうやつなのか。
しかし、俺は年中金欠だから一番安いブレンドコーヒーで何時間も粘っている。
まぁ、こんな所で粘れるのもここのアルバイトに知り合いがいるからなのだけど。
「シンシン、今日も待ち人来らずなの?」
髪を後ろに束ねて、エプロン姿の凛花は控え目に行って男の理想の中の女の子みたいだ。
清潔感と可愛さを兼ね備えたその姿をチラ見する男性客も少なくないのだが、彼女は案外そういう視線に慣れているのかスルースキルが高いのか、なんとも無さそうに振る舞っていた。
「おみくじみたいな表現やめろ。そういえば中吉なのに『失せ物、見つからず』『待ち人 来たらず』みたいに絶望的なことしか書いてないおみくじって、あれ、なんなの?大吉以外ハズレで大吉が当たるまで引かせようとする新手のガチャ商法なの?」
「ふふふっ、一体なんの話なのかな?3日間の張り込みで頭が残念になっちゃったのかな?撫でてあげようか?」
凛花が無防備に顔を近づけるものだからまた気が動転する。
「いや、ハズレおみくじガチャの残骸を大量にくくりつけられて御神木が大ダメージ、とかになんないのか?」
「あっ、、しまったなぁ。シンシンのへんなスイッチ押しちゃったみたい。バイト中じゃなかったら付き合ってあげ「いたっ、、莉奈だ。」
「いや、、あれ、、探してたのって女子小学生?シンシンってストーカー?おまわりさーん。」
後ろから何やら聞こえるけどきっと幻聴だろう。
そんな事を気にしている暇はないか。
負けられない戦いがはじまるんだし。
目の前のクール系小学生はあいも変わらず俺に冷たい視線を投げかけるのだった。




